『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』298
イロリさんは、ネプトクカ王子から言葉をもらって退室した。また機会があれば猫を連れて王宮に来れるようになったみたい!
その後は、ギンガたちの順番! 伝えることはすでに伝えているので、今はオリハルコンとミスリルの鑑定をしてもらっている最中。
鑑定している人は5人いる。ミスリルの鑑定は早々に終わったので、次のオリハルコンを囲むようにして眺めている。王子がオリハルコンを見るのを遮らないように場所を開けて鑑定しているため、窮屈そうに鑑定している。
その鑑定している人たちが、小声でお互いに相談をしている。内容はなんとなく聞こえるけど、本物なのかどうかを結論付けられないような感じだった。ミスリルの鑑定はすぐに終わったのに、オリハルコンの鑑定はなかなか終わらない。
「これを……君たちはこれをどこで手に入れたのだ?」
その鑑定をしている人のひとりが、振り返ってギンガたちに質問をしてきた。なんとなく答えにくい質問だけど、どうしよう?
「オイーム」
王子がひとこと話すと、ギンガたちに質問してきた人は振り返って王子の方へ向き直る。
「申し訳ありません」
「許す」
深々と頭を下げるオイームさん?
何かよくわからないけど、何だろう?
『謁見での役割の違いですよぉ。鑑定を任された人は、謁見の場では鑑定しかしてはいけないんですよねぇ。日常ならともかく、謁見の場で勝手なことをすると、最悪死罪になるんですよぉ。あ、謁見を申し込んだ人の場合は、余計なことをしなければ多少の失言は大丈夫ですよぉ』
そういうことなのか。マーレさんから聞いた情報を、こっそりと黄金音ちゃんと未黒先輩に連絡する。ふたりとも疑問に思ってそうだからね!
『ちなみに、謁見は始まる前から流れが決定してるから、王子ですら勝手なことはできないんですよぉ。オイームさんは首がつながってよかったですよねぇ』
思ってた以上に怖い場所だった! 単なる面会じゃなくて儀式的な意味合いもあるようだから、謁見の場で余計なことをするとかなり重い罪になるらしい。
マーレさんの話では、過去に王子が王様との謁見の場で「父上に対して無礼な!」と叫んだ結果、王子の地位を失ったとか。身内にもかなり厳しいルールみたい。
鑑定していた人のひとりが、紙を差し出してその場に片膝をつく。王子の隣にいた使用人の男性が、黒いトレーを持ってその紙を受け取りに鑑定した人へと向かい、その紙をトレーに乗せて王子に差し出す。
王子はその紙を受け取って読む。
「オリハルコン、ミスリル、どちらも本物と確認が取れた。後日、陛下へ献上をするための場を設ける。献上品、およびその所有者を1等級とする」
その言葉を最後に、謁見が終了した。詳しいことはまた部屋で教えてくれるし、質問があったら後でお願いして聞いてくれるのも前と同じだ。
「緊張したー!」
待機していた部屋に戻って、ソファーに座ってようやく落ち着いた。
「いや、謁見って思ってた以上に厳しいんよな」
「前回はここまで厳しいと思わなかったけどね。今回はミスした人が居たからかな?」
『あれで少し緊張感が増しましたよねぇ。これでも陛下との謁見よりかなり緩いんですけどねぇ』
「あれでそうなの!?」
『オイームさんのお咎め無しですからねぇ。陛下との謁見ではすぐに別室へ連れていかれるんじゃないでしょうかぁ』
先に部屋へ戻ってナキナ君を撫でていたイロリさんは、「何かあったの?」と聞いてきたので、オリハルコンの名前を出さずに謁見で起こったことを話した。
「やっぱり怖い場所なんですね」
『普通の人まで貴族レベルの礼儀作法は求めないから大丈夫ですよぉ』
謁見での感想を一通り話し終わった後、この後どうするかをマーレさんが説明してくれる。
『イロリさんはここまででしょうかぁ。冒険者でもないですし、余計なことを聞いてもよくないですからねぇ』
マーレさんが扉を開けて、廊下に居るメイドさんを部屋に呼ぶ。イロリさんを外まで案内してくれるみたい。
「それでは皆さん、また何か用がありましたらいつでもお呼びください」
「こちらこそ、助かりました。お店に興味のある仲間もいますから、また伺わせてもらいますね」
また猫カフェに遊びに行く約束をして、イロリさんが部屋から出るのを見送った。茜が行きたいそうにしていたし、ギンガも猫と遊びたいからみんなで行きたい!
目の前で閉じた部屋のドアを少し眺めてから、部屋のソファーまで戻る。
『それでは、先ほどの謁見について質問を受け付けます』
前回の謁見と同じように、わからないことを直接聞いてくれるみたい。この形式のが緊張もしないし気軽で良いね!
「それじゃあ。王様との謁見っていつになるか聞いてほしんよ。あと、1等級ってなんよ?」
「献上品の出所や入手方法を聞かれるかも気になるかな。できれば秘密でお願いしたい」
ふたりが質問したいことを伝える。うーん、ギンガも何か質問したいことあるかな?
「謁見までどこで過ごせばいいかも知りたいんよな。街の宿屋で良いんよ?」
「他のメンバーが増えてもいいのかな。今いる3人以外が合流した場合とか」
んー。なんか、全部言われて良さそうな質問が無い。
『ギンガさんは、質問しなくて良かったですか?』
顔をあげると、マーレさんや、黄金音ちゃんと未黒先輩がギンガを見ている。何かひとつでも質問したほうが良いのかな?
「あんまり思い浮かばないんだけど――なんでもいいのなら、猫カフェに行くのかどうか教えてほしい! イロリさんも準備できるかもだし!」
ギンガたちの謁見に関しては、黄金音ちゃんたちが気にしてくれると思うんだけど、イロリさんも手伝ってくれたし、何か情報があると良いかも!
『わかりました、必ず聞いてきますね』
マーレさんは笑顔でギンガの質問を受け付けた。
それ以外に質問がなかったから、『このまま、しばらくお待ちください』と言って部屋を退室していった。
それと入れ替わるように、別のメイドさんがクッキーと飲み物を持ってきた。飲み物は何種類かの中から選べたから、ミルクティーを貰った。砂糖もたっぷりいれておいしい!
空いた時間に細工をしていいかメイドさんに聞いたら、作業用のテーブルを持ってきてくれるんだって! さすがに、目の前にある高級そうなテーブルで生産活動して、誤って傷をつけるのはまずいからね。
持ってきてもらったテーブルも、よく見るようなボロボロの作業台じゃなくてかなり綺麗なテーブルだった。それでも、この城で使われるテーブルの中では傷がついてしまっても良いテーブルらしい。
持ってきてくれたメイドさんにお礼を言ってテーブルに道具を広げる。黄金音ちゃんも未黒先輩も、それぞれ好きなことをして過ごすのを確認してから作業に入る。黄金音ちゃんは、最近蒼奈から受け取った魔法の本を読んでるから、今回もきっとその本を読んでるんだと思う。
『お待たせしました』
作業に没頭していると、マーレさんがいつの間にか部屋に戻ってきていた。質問の答えをもらってきたらしいから、作業用テーブルからソファーへと移動する。黄金音ちゃんの横に座って、手を膝の上において姿勢を正す。
『謁見は2日後から7日後の範囲で、皆様でお決めください。謁見が可能な人数は、猫と龍を除いて5人までとさせていただきます。また、代表はコガネさまでお願いします』
黄金音ちゃんは最初からずっと代表として行動してくれてたからね! 向こうとしても信頼があるんだと思う!
『陛下との謁見において、献上品の出所を聞かれることはありません』
よかった! もし聞かれたら答えた方がいいかどうかすごく迷う。時代移動について王様に言っていいかどうか判断がつかないからね!
コガネ:合法、違法に関わらず、王国は関与しないってことだね。
ミク:知らなかったで通すんよな。
ギンガ:そういうのって出来るの?
ミク:国家として独立してるから、どうとでもなるんよ。何か言われても交渉の手札にすると思うんよ。
国がどんな判断をして出所を聞かない決定をしたのかわからないけど、聞かないってだけでも色々できるんだね。
『当日までこちらで宿泊も可能です。宮殿にて部屋を用意させていただきます。外で宿泊するのも自由ですので、相談の後にご希望を伝えてください』
ご飯とかお風呂の準備もあるみたい! 宮殿って豪華だし、こっちのが良いのかな?
「宿泊に人数制限はありますか?」
『多すぎる場合はお断りすることがあります。10名であれば問題ありません』
マーレさんは、ギンガたちの人数を把握しているから話が通じやすくていいね! ギンガたちが欲しい回答をあらかじめ調べてきてくれる感じだ!
『これらの、謁見人数や当日までの宿泊の質の扱いが、1等級となります』
貴族と一般人が受ける1等級にも違いはあるらしいけど、主に謁見人数が違うらしい。貴族だと謁見も家族単位が多いため、人数もそれほど多くならないけど、一般人だと際限なく増えるかもしれないから、制限をかけているんだって!
『最後に、猫カフェについてです。ギンガ様に問われて検討した結果、皆様の謁見が終わった後に改めて日程を決めて向かうよう調節するそうです』
わっ、イロリさん大変だ!
鑑定そのものは、謁見の前に終わらせてあります。謁見に出ない技術者による鑑定です。この場で鑑定しているオイームさんたちは、地位のある鑑定士です。実力はあるので通常は鑑定を難なくこなしますが、オリハルコンはその場で道具も無しに鑑定するのは難しかったのでしょう。衝撃的過ぎて、つい謁見で質問をするミスを犯してしまいます。




