『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』296
宿屋の部屋に引きこもるには早い時間だったので、外に出て軽く街の見学をする。宿屋でも食事は出るけから、その前にちょっとしたおやつを買って食べながら街を歩いた。
人通りは多いけど、住人と言うより旅人が多い感じだ。服装が普段着に見えないし、重い荷物を背負ってる人をよく見かける!
しばらくすると日も暮れて、宿屋の呼び込みの人たちが通りからいなくなっていた。呼び込みは、夕暮れギリギリのあの時間だけ行われていたみたい。人通りも減少して、ギンガたちみたいに軽装の人をよく見かけるようになった!
「乗合馬車の運行時間も関係してるんじゃないかな」
昼間と違って夜遅くに走る乗合馬車の数は少ないから、移動する人と残る人がはっきり分かれてるのか。その境目の時間が今なのかも! それに、従業員ひとりが呼び込みを夜遅くまで粘るより、夜の食事の準備ために宿屋の中で仕事をするほうが宿としても助かるんだと思う!
「開いてる店も減ってきたし、うちらも宿に戻るんよ」
どれだけ活気にあふれていても、夜遅くまで店を営業しているところは少ない。あったとしても、宿屋や酒場くらいなんだよね。ギンガが見たいアクセサリのお店はもう閉まっちゃっている。
宿屋に戻って、食堂で食事をいただいて、部屋に戻ったらログアウト!
シープでゲームばっかりやってると、水分や栄養の補給を忘れがちになる。現実の方でもちょっとエネルギーを補給してこよう!
ログイン! ドーナツがあったから、ミルクと一緒に食べてきた! ドーナツは薄切りアーモンドがまぶしてあっておいしかった!
宿屋の部屋は、まだギンガ以外戻ってきてなかったから、細工をしてふたりを待つことにしよう!
3人が揃ったら、宿屋を出てダンジョンへ向かう。宿屋を出るときに予約しておいたサンドイッチを受け取ったので、食べるのが楽しみ!
ダンジョン前は早朝だからか人の列が長かったけど、進みが早いのですぐにギンガたちの番になった。
いつもと同じ手順でダンジョンを抜けたら、初期時代に到着! そのまま乗合馬車から王都に向けて出発になる。
ここでも人が多いから、人が活動を始める朝はやっぱりあわただしいんだなって実感したよ!
馬車に乗りながらサンドイッチをいただいた。パンは食パンタイプじゃなくて、丸く細長いパンに野菜とチーズが挟まれていた。パンは少し噛み応えがあるけど、バターが塗られているおかげでほんのりした塩分と独特の甘みのある香りや味がしておいしい! 良い宿屋に泊まれて良かった!
王都のネプラスに到着して、最初に向かうのは猫カフェ! この猫カフェも、コディアリと同様に茜が行きたいって熱望していた場所!
タイミングが合わなくて、どちらも茜は猫に会いに行けてない。落ち着いたら案内してあげたいな!
ギンガが先頭で猫カフェまで案内する。猫の絵が看板になっているお店に到着したので、入り口から中を覗くとお店は開店しているみたい!
「こんにちわ」
猫を驚かせないように、そっと扉を開けて声をかける。入り口のすぐそばに店員さんが居たので目が合う。
「いらっしゃいませ――あ、お城のときの。オーナーに用でしょうか?」
「はい、お願いできますか?」
「お待ちください」
店員さんは直接お話したことはない人だったけど、ギンガたちが前にお城に向かうためにお願いをしていたのを覚えていたみたい!
店員さんが前に入ったことのあるバックヤードまで下がり、しばらくするとオーナーのイロリさんが現れた。
「こんにちは、コガネさん、ギンガさん。あとは……」
「ミクと言うんよ、よろしくお願いします」
前回はここにきていない未黒先輩が自己紹介をして、そのまま案内されるままにバックヤードへと移動した。当然、手洗いにうがい、靴は貸し出しスリッパに履き替えて中へと入る。今回は猫と触れ合うのがメインじゃないので、貸し出し衣装は借りていない。
「それで、思ってたよりは早かったけど、王子様が納得するものは見つかったのですね」
「はい。つきましては、前回と同じように猫の貸し出しをお願いしたいと思います」
王城に入り、王族と直接会話が出来るようにするには、猫と龍の組み合わせが必要になる。龍の方はマーレさんにお願いすればいいけど、猫の方はアカネが居ない今、猫カフェのイロリさんにお願いするのが一番手っ取り早い。それに、前にも約束をしたからね!
「はい。今回は白黒の猫じゃなくても大丈夫そうなので、物怖じしない別の子を連れて行きましょう」
イロリさんとしては、王族に猫カフェの良さをさらに知ってもらういい機会なので、前回の猫とは違う子を見せてアピールをしたいんだって!
「獣人が多いから、他国と比べて動物を保護してる国に思えるんよ。それでも猫カフェの認知は低いんよ?」
「個人で保護している人は多いのですが、動物と触れ合うためだけの施設は少ないんですよ」
動物園のような施設は存在しないらしい。もちろん、他国でもそういった施設は見かけないけど、獣人の多いこの国には動物好きが集まっているため、気軽に動物と触れ合いたいと思ってる人は多いらしい。
それでも、動物を商用利用した猫カフェに若干の忌避感があるのか、興味はあるけど二の足を踏む人が多いみたいだと、利用するお客さんから聞いているんだって!
その忌避感を取り除くために、王族に紹介して店を利用してもらうことで、安全や健康に注意して店を開いていることを知ってもらいたいそうだ!
「今回はこの子を連れて行きます」
ギンガたちがイロリさんと話をしている間に、店員さんがバッグに入った猫を連れてきた。今回は茶トラの猫さんだ!
「おとなしくて人懐っこいので、紹介するにはピッタリな子でしょう」
すらりとした体躯の可愛い猫が、バッグに張り付けられた薄い布の網から顔を覗かせていた。おとなしく座ってて可愛い!
「かわいいね! お名前は?」
「ナキナ君です。5歳のオスで、人にくっつくのが好きな子ですね。このネズミのおもちゃがお気に入りです」
イロリさんが手に持った布製のネズミのおもちゃを見ると、鞄の中から片手を伸ばしているのが見えた。もちろん、届かないから鞄の内側を触っているだけになる。
鞄の口を少し開けて、ネズミのおもちゃを中に入れれると、そのまま抱きかかえて横になっていた。可愛い!
イロリさんの準備が終わったようなので、このまま王宮へ直行することにした。店舗側に移動すると前に会ったロラスさんが居たので、軽く頭を下げてから外に出る。
未黒先輩とイロリさんを先頭に王宮へと向かう。猫カフェへの思いや、前回の謁見から増えたお客さんの話など、猫の話題をしながら歩いて10分、兵士が守っている門の前に到着した。
門の横に待合室のような場所があったのを思い出したから、そっちに移動して取次をお願いした!
前回待機していた待合室とは違うところに案内された。前は個室だったけど、今回は大部屋だった。テーブルとイスのセットがいくつもあって、そこにはギンガたちより前に待っている人たちがすでに座っていた。
ギンガたちもその人たちと同じように座って待っていたら、後から入室した人が先に呼ばれて案内されていることもあった。
「あらかじめ予約してたのかなー?」
「当日にお願いして、いきなり会える人のが珍しいと思いますよ」
なんとなくつぶやいた言葉を、イロリさんが拾って説明をしてくれた。王宮に居る人に会うためには、あらかじめ約束をしておいてからくるのが一般的なんだって! そういわれてみれば、普通のお店でも予約が必要なところもあるし、王様だったら予約して数週間後とかも当たり前にありそう!
それと、王族への謁見だけではなくて大臣に用があるなど目的によって会う人が違うため、待合室で待っている人が来た順番に呼ばれるってことはないらしい。
「だから、今日ここに来てお願いをして、待合室で待っているように言われるってだけでも凄いことなんです」
ということは、猫と龍のセットがそれだけ凄いってことなんだ!
シープの設定上は、水分不足や栄養不足、外気温の変化や設定した人物以外の接近など、安全ではない状況に反応して強制的に目覚めるなどの機能はあるのですが、話の中には出てくることのない要素です。




