『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』294
「どうやって見つけたの~?」
探し始めてから、かなり早い段階で地下への入り口を発見してるんだよね~。地下を探しているときは何も目印らしいものが無かったから、どうやって探したのか不思議だよ~。
「アカネちゃんが、暖炉を壊そうって提案して、それで出てきたんだよ」
茜が座っている瓦礫は、暖炉が崩れたものらしい。その近くに下へ続く穴が開いていて、それを見ると壊れた梯子が見えるね~。
「この1階部分って、それぞれの部屋が広いから隠れて降りるのは向かないんじゃないかなって思ったんだよね」
茜は、隠し部屋に向かうには1階にあるそれぞれの部屋が広すぎて隠れて降りるところが無いんじゃないかと思ったらしい。それで、これまで見てきた地下への入り口がほとんど梯子だったから、今回もそれじゃないかと予想。そうなると入り口は1階じゃなくても良いことになる。
そのうえで、上の階から下の階まで繋がっている部分で、誰が見ても不自然には思わないのは暖炉の裏側なんじゃないかって思ったらしい~。
「この暖炉、都合よく別々の部屋同士で背中を向き合って暖炉が作られてたから」
別々の部屋にある暖炉が、暖炉部分だけ見ると背中を向き合うように設置されている。暖炉がある場所も地下空間があるかもしれない位置の上にあるので、周辺の瓦礫と一緒に暖炉を物質魔法によって切断したところ、予想通りに地下への入り口が見つかったとか~。
先輩たちは茜の頭や背中を撫でて、一通り褒めてから地下への探索に乗り出す。いつもなら黄里先輩が先頭で向かうけど、かなり狭いため何かあっても満足に戦えるとは思えないから、ここは小回りが利くあたしが降りることに~。
先端に明かりが灯った小枝を持って、地下への入り口をゆっくりとおりる。途中で見かけた壁にくっついている金属の梯子を引っ張ってみたら、古いけれど頑丈そうなので、これを使って降りることはできそう~。
慎重に下を見ながら進むと、さほど深く降りることなく床と横道が現れた。階は倉庫と同じ位置だと思う。聞き耳を立ててみるけど、怪しそうな音はなにも聞こえないので、他の生物が紛れ込んでいることはないっぽい~。
「降りても大丈夫そうだよ~」
上で待機している先輩たちに声をかける。黄里先輩と萌黄先輩(と抱えられた茜)が降りてきた時点で狭くなったので、通路の奥を見て安全を確認してから少しだけ奥に進んでもらった。通路の横幅はふたり分もないから、下でふたりが待機しているだけでも圧迫感を感じるほどだよ~。
最後に紫帆先輩が降りてから通路を進む。隠し通路とはいえ、城の中に作られているため壁や床の石材はレンガのように長方形へと丁寧に削り整えられている。岩を荒く削った武骨な通路をイメージしてたよ~。
狭い通路を黄里先輩が警戒しつつ、あたしは探索を使いながら進むと、途中で見かけた石レンガの一部に、気になる箇所を発見した~。天井付近にある石レンガのひとつなんだけど、高い位置を飛びながら進んでたから見つけたのかも~。
「この石レンガ、動くんじゃないかな~?」
この石レンガだけ、他の石レンガと違って角の部分が削れたり、少しだけ傷の付き方が多い。これって頻繁に触ってる気がするよ~。
石レンガを間近で確認すると下側に小さな穴があったので、そこから覗き込んで状態を確認する。穴の下側には細いひっかき傷が幾つもあった。【開錠】スキルと【罠解除】スキルを意識して見ていると、おおよその構造はわかったかな~。
「[妖精の手伝い]」
見えない手を発動する妖精魔法なんだけど~、大きさは自由に調整できるから、穴の中に入るサイズに変えたよ~。穴に見えない手を通して、石レンガに引っかかりが無いかを確認する。
……見つけた。石レンガの穴に見えない手を差し込んで手前に引っ張り出すと、石レンガが外に取り出せた~。
取り外した石レンガを床に置いて、外した穴を覗き込むと、奥にボタンがあって、側面に上下に動かすタイプのレバーがあった。
多分、石レンガを押し込むとボタンに触れて、罠が発動したんじゃないかな~? 正解は側面のレバーだと思うから、見えない手でレバーをつかんで上にあげる。
ゴゴゴって低く小さな音が響く。音が聞えた方はここから少し離れた位置だね~。
「元の道を戻るようね」
音の聞こえた方向が入り口側だったので、元来た道を戻っていった。何か変化が無いか確認しながら進んだけど、見つからないまま梯子のあった場所まで戻ったよ~。
その梯子があった場所の一番奥。『コ』の字になっている行き止まりの通路の奥側にある壁が、奥へずれて小さな入り口ができていた。
中をそっと覗くと戸棚が並んでいる部屋になっていた。
「罠とかはなさそうだね~」
部屋の広さは全員入れそうだけど、入り口が狭いため、あたしと茜以外は体を横にして中に入ることになった~。
全員が部屋の中に入ったら、それぞれ手分けをして探索を開始~。本も何冊かあるけど、どちらかと言うとサイズの小さな宝飾品の方が多いかも~。
「宝物庫って感じじゃないよね」
「ここにあるのは国の宝物ではなくて、個人所有の宝物かもしれないですね」
戸棚をパカパカと開く萌黄先輩の隣で、黄里先輩が魔法の本を開きながら答える。黄里先輩の読んでいる本の表紙を見ると、動物魔法と書かれている。紫帆先輩が覚えている植物魔法と対になるような魔法かもね~。
お金になりそうな宝石を持ち出すため、保管するのに良さそうなジュエリーケースを見つけたからそこに貴金属をまとめて入れておく。こうすればアイテムとしては1つ扱いでストーレージや妖精魔法の[妖精の宝箱]の空き容量の節約にもなる。
動物魔法以外の魔法の本も見つかったので、まとめて持っていくことにする。数が多いと大変だけど、それほど冊数も無いし、ストレージに入れるまでもなく袋に入れて抱えて持っていけば良さそう。あとで蒼奈に渡せばいいからね~。
「チャコー、これ開けられる?」
部屋の床を探していた茜から声がかかる。下に降りて茜の近くまで移動すると、戸棚の下段の扉を開けた所に、鍵がかかった箱が見つかったっぽいね~。重そうな金属素材の入れ物に入っていて、厳重そうに見えるよ~。
仮にここで開けられなくても、箱ごとストレージに入れて持ち帰れば、あとは開けるのなんてどうにでもなる。でも、ここで開けたくなるよね~。
箱に向かって【開錠】を試してみる。あんまり機会がないからレベルは低いけど、急いで開ける必要は無いし、小さな鍵穴なら妖精サイズだと直接中が見やすくてスキル補正が入るから、開けられる気がするんだよね~。
妖精魔法を駆使して、箱の鍵の仕組みを調べる。念入りに調べて鍵の仕組みを解読した結果、何とか箱の鍵を開くことに成功した~。
罠もなさそうなので、開くのを黄里先輩に任せる。蓋を開いた中身には、小さく折りたたまれた紙が一枚入っていた。
「……ボロボロではないね」
今までの探索で、こういった紙は触っただけで崩れることが多いため、茜に修理をしてもらって、それから読めるようになることが多いんだけど、この紙はそのまま手に取ることが出来そうだね~。
その紙を手に取って、みんなに見せるように広げる黄里先輩。それぞれが覗き込み、何が書かれているかを眺めた。
「これって、王笏の杖の絵だね」
「横にあるのは、恐らく王都マールスの地図でしょうね。王笏の杖から矢印が示されているということは……」
「聖女エリスから受け取った、王笏の保管場所の説明じゃないかしら?」
聖女が各王都を訪れて、王笏を刺した杖をそれぞれの王都へ渡したと聞いている。その王笏の杖がわかりやすい場所に保管されているのであれば、多くの人が見ることが出来ただろうけど、そういった話は聞かないんだよね~。ほとんどが、当時それを見た人のスケッチでしか確認はできないっぽい。
そんなわけで、王笏の杖は各国のどこかに隠されているのは間違いない。この紙がその場所を教えてくれるのかも~。
開錠スキルは難易度の高いスキルで、高レベルにするにはかなりの時間を要します。城の宝物庫を狙わない限り、高レベルは不要です。




