『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』292
ゲームで見かけるような大きな土地や小さな土地、細かな島が各地に配置された、いかにも地図っぽい雰囲気の絵だから、地図で間違いないと思う~。
細かい山脈とか川とかが描かれているから、どこが地面でどこが海なのかはわかりやすい。縮尺がどうなのかはわからないけど、山の雰囲気からするとずいぶん広い土地に思えるな~。
「地図の幾つかに文字が書き込まれてるけど、どれも読めませんね」
茜が地図上にある文字のひとつを手で押さえている。押さえた文字だけでなく、文字が全て読むことが出来ないな~。
「神聖語じゃなさそうだし、アオナちゃんに見せようか。古代語かもね」
神聖語が読める萌黄先輩が読めないのなら、残るは古代語。本と地図を片手に、萌黄先輩が移動するので、肩から空中に浮かんでついていくよ~。
蒼奈はまだ本を読んでいたので、萌黄先輩が声をかけて地図を見せていた。その蒼奈が地図を見て文字を確認したら、「読めない」という答えが返ってきた~。
「アオナちゃんも読めないのなら、解読を持ってるコガネならわかるかな?」
「解読は文章全体から内容を推測するので、この地図のように単語だけしか書かれていないのは難易度が高くなりますね」
解読スキルは、文章の書かれ方・文法・頻出単語から現代語と照らし合わせて言葉を推測するスキルだから、単語だけ書かれたものは難しいんだって~。
逆に文章が多ければ多いほどスキルの補正がかかりやすくなって、知らない単語も読めるようになるみたい~。
「チャコがホツナルさんの書斎で読んだ本は、こんな文字をしてなかった?」
蒼奈にそういわれて、注意して地図の文字を眺める。はっきりと断言はできないけれど、近い気がするな~。
「う~ん、はっきりと覚えてないけど、似てるかもね~」
「それなら、ホツナルさんの本をコガネ先輩が解読した後にこの地図を見てもらいましょう」
「NPCも解読してると思うけど、わからなかった本だよ~?」
「プレイヤーだから、解読できるんじゃないかな?」
解読スキルを使った未知の言語の解読は、取得している言語の数が多ければ多いほど有利に働くんだって~。だから蒼奈が言うには、「ゲームの言語だけじゃなくて現実の言語も使える僕らの方がNPCよりかなり有利」とのこと。
授業では色々な言語を勉強するから、ありえなくもないかな~?
「そもそも、こういったゲームの言語って、現実の言語を置き換えたパターンが多いからね。新しい言語を作ってゲームに組み込む人もいるから、絶対じゃないけど」
そう言って蒼奈は萌黄先輩から白い本を受け取り開いて読む。最初の数ページで目を細めて、ページをペラペラと素早くめくる。やっぱり読みにくいよね~。
「この本の、どのページに地図が入ってたの?」
「あ、ごめんね。わからないかも。ふたりは?」
萌黄先輩の言葉に、あたしと茜は首を振る。どのページにあったかは覚えてないな~。
「わかりました。これも暗号かもしれないかと思っただけです。それに、もし地図が関係するならどこかに目印があるはずですから、後からわかるはずです」
本を綴じて、どこに保管するのか相談したところ、いつも通り蒼奈のアイテムボックスに保管することになった~。
とりあえず、この地下での探し物も新たな発見はなかったから、みんな揃って地上へ移動~。地下で帰還石を使って他の街へ移動してもいいんだけど、気分的に外の方がいい気がしたからね~。
「それでは、他にやり残しがある方はいますか?」
「情報が足りなくてわからないってのはあるけどな。地下の遺跡とか」
「そうだね。でも、後からまた来たらいいよ。この時代なら思ったより簡単に来れそうだからね」
黄里先輩の言葉に頷く。あの魔法さえ使えば、街を選択して飛んでこれるからね~。
最終確認の後は、マアズ行きの帰還石を取り出して、全員が移動した。
問題なくマアズに到着。マアズの広場は、ボロボロの状態だった。あちらこちらの建物が崩れていて、こちらも戦争の跡が激しく残っている感じだった。
「すごく寒いね」
「戦争時代よりも、さらに寒さが厳しいよ」
マアズは寒い地域だとは思ってたけど、この時代のマアズは想像以上に寒かった。それぞれストレージから防寒具を着て温まる。萌黄先輩は毛布を取り出して、茜を包み込んで抱きかかえた。
「何か、このあたりだけ綺麗になってるね~」
広場の一部が、瓦礫などが撤去されて不自然に綺麗になっている。その広場に面した建物のひとつは、屋根も壁も補修されていた。軽く中を見ても誰かがいるわけじゃないけど、明らかに人の手が加わった感じだ。
「初期地点がマアズの廃墟時代のプレイヤーかもね。マーキュリでも人が集まりやすい広場はある程度綺麗に整えられてたよ」
黄里先輩の言葉に納得する。そういえば、少しの間だけプレイヤーがこの時代に居たんだよね~。集まって全員で探索チームを作ろうとかしてたみたいだけど、今から考えるとこの時代を探索しても、ゲームとしての面白さは半減かもね~。
「それじゃ、土魔法を持ってるうちとアオナでダンジョンの裏側を掘ってくる。完成したら連絡するからな」
「了解、それまで探索でもしておくよ」
蜜柑先輩と蒼奈が、マアズの王都付近にあるダンジョンへ移動する。ダンジョン裏の妖精の国への入り口が開通したら、あたしたちの拠点への入り口まで一気に近づけるんだよね~。
「私たちも、予定通り王城跡地へ向かいましょうか」
「はーい」
当初の予定通りに、マアズの王城跡地へ向かう。他の時代でもマアズの王城に寄る理由はなかったから、遠くから眺めているだけだったんだ~。マーキュラスの王城と違って庭が解放されているわけでもないから、近寄っても周辺を眺めるだけの観光にしかなってないんだよね~。
その観光も、お店が近くにあれば観光地になってたんだけど、王城の周りはすべて貴族の館になっていて、近寄って眺める以外にすることがないんだ~。
黄里先輩が戦争時代のマアズの地図を広げて、王城へむかう道を進む。あたしも地図が見える位置に飛んで照らし合わせながら周辺を確認するんだけど、主要な目印である貴族の館は、ほとんどボロボロに崩れちゃってるから地図を見てもわかりにくいんだよね~。
「この崩れた館も、魔法の影響かしら?」
「屋根まで崩れるような壊し方は、魔法か巨大な魔物じゃないかな?」
紫帆先輩の疑問に萌黄先輩が答える。マーキュラスにはメテオストライクの跡が沢山あったらしいけど、今のところは地面がめくれあがったり陥没したような跡は少ない。主に屋根や建物の上の階の部分が崩れ落ちているので、普通の兵士が手持ちの武器で壊しまわったようには見えないよね~。
貴族街を越えて広めの広場に到着。広場の先にある道路を挟んだ向こう側にお城の残骸が見えた。元はドワーフが建造した頑丈なお城で、石材だけでなく鉄などの金属を利用して作られた守りの城だったって聞いてるんだよね~。それが、目の前のお城は頑丈な壁だけじゃなくて、中の住居部分もボロボロに砕けて中がスカスカになっちゃってるよ~。
「城壁に加えて堀があるんですね」
「ずいぶんな深さだね。空堀なのかな」
水が消えたのか元々なかったのか、掘の中には水が無かった。よく写真で見るお城の堀って、水が引き込まれているから普通に水があるものだと思ってたよ~。
「この地域に水堀を作っても、凍って意味がないのではなくて?」
「寒いからね~。そういえば、雪って降ってないよね~」
「川や海が凍ってるんだと思うよ。水蒸気が無いと雪も降らないからね」
堀の周辺を歩いて、こちらとあちらにロープを渡すちょうどいい場所を探した。堀を渡る橋が壊れているため、空を飛べない人のためにお城の中へ移動できるようにロープを渡すんだよ~。
堀の外側にある建物の残骸にロープを結び付けて、堀の内側へあたしがロープを持って飛び、頑丈そうな残骸にロープを巻き付けて、再度みんなの所へ戻る。
「それじゃあ、移動しようか」
黄里先輩はそう言うと、ストレージから見覚えのないアイテムを取り出した。
貴族街と普通に出てきていますが、この話の中で目立った貴族は王族しかだしていません。主な理由は細かい設定を考えていないからです。それほど広い国土もなく、王国が長期にわたって続いているため併合された民族国家が強く影響を残しているわけでもないので、貴族の数は多くないでしょう。




