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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』291

 蒼奈の言葉を考えてみる。治療する目的で行われる手術に関して言えば、戦争時代以降はやる意味がなさそうだね~。帰還石を使えば欠損すら治療可能だから、体にメスを入れる必要がなさそう~。


 それ以前の時代だと必要な気がするんだけど、そもそもこの国の住人が必要とするかどうかだよね~。茜の見た通りなら、怪我や病気の治療はリバ石復帰が主流って言ってたから~、多分もっと前の時代でもリバ石で復帰する治療をしてたんじゃないかな~?


「復帰で治療できそうだよね~」


「記憶の情報で言えば、星暦100年では既にリバ石のような復活地点が認知されていた。そころはリバ石復帰をするヒトとそうじゃないヒトが一緒に暮らしていたようだけど、この施設の汚れや破損具合は1000年以上昔に使われた施設とは思えない。茶子の見た記憶も合わせて考えると、ここの目的は治療ではなく解剖だろう」


 地下を掘りぬいてまで不必要な施設を作る必要はないから~、この場所は隠す必要のある重要な場所なんだろうね~。本の内容からすると解剖、それも非合法な手段に使ってたのが近いのかも~。でも、ちょっと気にかかることがあるんだよね~。


「この世界の生物って、解剖できるの~? 倒れたら魔石に変化するんでしょ~?」


 このゲームは現実と違って、肉体が残らない。その代わりドロップアイテムに変化しているので、解剖って手段には移れないんじゃないかな~?


「前に、茜がこの地下の人たちを助けたことがあったよね?」


「うん。かなりの人が帰還石で飛ばされて大変だった~」


「あの時の話で、茜が助ける直前に死亡した女性が居たんだけど、その女性、魔石に変わることなく肉体が残ったらしいんだよね」


 そういえば、話を色々聞いている中にそんなことがあったな~。と言うよりは、魔石に変わることが無いまま死亡するから、助けた人たちはかなり恐がってたように思えた。


「[マスイサー]の失敗で肉体が残ったそうだけど、それを聞いて受け取ったマスイサーの本を色々確認した。確実かは不明だけど、魔玉を消滅させる部分だけに魔力を注ぎ込んで、外殻の魔石を肉体に残すように魔法を使えば、残された魔石が消費されるまでの期間は肉体が残るような記述が読み取れた。解剖までの猶予がどれだけあるかはわからないけど、意図的に肉体を残すことはできるみたい」


「HPが残ったまま魂が消えるってことかな~? 解体した時点でダメージが入ったことになって消えたりしないのかな~?」


「そうなるかもしれないし、植物と同様に残り続けるかもしれない。どこかにその実験方法が書かれていればいいんだけどね」


 蒼奈が本のページをペラペラとめくっている。同じようにあたしも見るけど、割と詳しく生物の臓器のイラストがカラーで描かれているから、ちょっと気分は良くないな~。


「この部屋も見終わったから~、下の階に行こうか~?」


「うん、お願い」


 本を読むのは蒼奈に任せて、あたしは探索に集中したほうがいいよね~。壁の裏に隠された下への通路を進む。下り坂を飛んで移動して、地下に到着~。暗いから、ストレージから[コンティニュアルライト]の点いた棒を取り出して周囲を照らす。


 目につくのは、ピザ窯のような丈夫な箱。近寄ってよく見ると、窯の入り口はピザ窯くらいの大きさだけど、中は大きな入れ物のように広く作られている。あんまり取り出すことを考えてない造りっぽいね~。


 中を覗き込んでいると、入り口側から人の声が色々聞こえてきた。上に居たみんなが降りてきたみたい~。


「これが焼却炉か」


 隣に蜜柑先輩がやってきて、あたしと同じように中を覗き込む。ピザ窯じゃなくて焼却炉か~。


「ピザ窯とはかなり違うね~」


「こっちは火で直接燃やすんだろうな。燃焼させやすいように空気の入り口がそこら中に空いてるぞ」


 蜜柑先輩が焼却炉の側面に指をさす。上の方だけじゃなくて、下の方にも穴が開いていて、そこから空気を取り込めるようになっている。


「実際に取り込むのは魔力のようなものだろうけどな。たしか、この世界に空気は無いはずだから」


 ゲームだから当然だけど、世界の構成そのものが現実とは違うんだよね~。それでも、仕組みとしては空気みたいなものだから、燃やすのに十分な魔力が必要なんだろうな~。


 焼却炉の中に入って、【探索】スキルを発動。燃え残った灰に何か重要なものが無いか確認をする。ふと上を見ると煙突のような穴があって、少し覗き込んでみたけど汚れているから進むのをやめた。煙を外に出す仕組みくらいは、当然あるよね~。

 改めてスキルを発動しながら、棒を灰に突き刺してゆっくりと中身をかき回す。何か探知にかかるといいな~。


 しばらくかき混ぜたけど、何も反応が無かったから焼却炉から出る。少し灰が舞ってきたので、さっさと出たかったのもあるけどね~。


「このあたりに牢屋があったんだよ」


 何もない空間を指して、茜が戦争時代の話をしている。使われなくなったから整理されているんだろうな。この空間には何もなさそう~。


「あっ! また忘れるところだった~」


 茜を眺めていたら思い出した。本の修理だ~! 焼却炉から萌黄先輩と茜が居る場所に移動する。


「アカネ~、修理して欲しい本があるんだけど~、地面に置いていい~?」


 茜は萌黄先輩に抱えられている。その状態でボロボロの本を取り出しても、渡す場所も置く場所も無いんだよね~。茜は「いいよー」と返事をして、萌黄先輩に地面に降ろしてもらっている。


 あたしも下に降りて、地面に手をかざしストレージから本を選択する。出来るだけ衝撃を与えないように丁寧に取り出した~。その本へ茜が右手を乗せて、魔法を唱える。


「[リペア]」


 紙切れと違って本になっているため、修復の時間はややかかるんだよね~。それでも茜が魔法を使うことに慣れてきているのか、本1冊に使う魔法の時間がかなり短縮されるようになってるよ~。


 ボロボロで薄汚れていた本は、白い表紙の本へと変化した。真っ白なところが、教会の本っぽいね~。表紙には文字や模様が一切ないから、表紙カバーでもあったんじゃないかな~と思うけど、そのあたりはわからないな~。


 茜の修理が終わると、萌黄先輩はしゃがんで、本から手を離した茜を再び抱きかかえる。それを横目で見ながら、地面に置いた本の表紙をめくる。あたしも何が書いてあるか気になるからね~。


「チャコちゃん、私がめくろうか?」


「おねがいしま~す」


 萌黄先輩は本を手に取ると立ち上がって、茜を抱えたまま器用に表紙をめくる。あたしはその先輩の肩に座って、本が読める位置につく。

 本の最初数ページは白いページが続いたけど、しばらくすると文字が現れた。それを読むと、割と後ろ向きな内容が延々と続いている。


「名前や地名のような詳細は書いてないですけど、懺悔か告解って感じだね」


「そういった話をまとめた本でも無さそうです」


 抱きかかえられながら本を読んでいる茜の言う通り、この謝罪しているような言葉の羅列は、同じ人物の言葉に見える。この本の筆者は、よくもまぁ具体的な例を出すことなく謝罪や悲観的な言葉を続けられるものだなぁと感心するよ~。


 しばらくそんな言葉が続くから、読んでて変な気分になるためページをスキップするように流し見を続けると、間に挟まれた紙が出てきた~。開いて見てみたら雰囲気は地図っぽいね~。


「何だろうね、これ。地図に見えるけど?」


「ゲームでよく見る、上からみた世界地図みたいですね」


 メルカトル図法みたいな、世界全体を上から見たような地図の描かれかただね~。


「この世界って~、丸い島のような世界しかないよね~?」


「他に人が住めそうな土地は聞いたことないから、多分これは向こうの世界かもね」

 焼却炉の煙突に煙を吸い込む仕組みがあるため、側面の穴から出る煙の量は少なくなっています。それでも地下で物を燃やすのは苦労しそうです。

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