『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』288
~~~アオナ~~~
[チャコ]コンピューターだ~!
[ミカン]研究所に7台しかないんだから、記憶の世界では貴重品なんだろうし、特別な存在に変化、というか転生したんだろうな。
今の僕らの世界では情報端末なんてどこにでもあるし、研究所に7台しかないなんてことはない。数が少ないのであれば、その世界では貴重な品で間違いない。
[シホ]龍とは見かけがかなり違ってるように見えますけど、機械が生物になるのかしら。コンピューター内のAIが生物として反映されたのかしらね?
[ミカン]うちらの歴史と照らし合わせた場合、記憶世界のコンピューターに自律的なAIはないんじゃないかな。
[シホ]それでは、龍が意思を持っているのはどうしてかしら?
[アオナ]生物の誕生に、元となる物質が生きているかどうかは関係ないのかもしれません。チャコが見た記憶に蘇生の話がありましたよね?
人以外の生物を蘇生させている場面の記憶を、茶子が見たと言っていた。植物を蘇生させるには、その植物が落とすドロップ品を使う必要がある。
ドロップ品は、他のドロップ品と同じように魔石が含まれていないため生物とは言い難い。そのドロップ品を魔石と共に魔法の対象にすることで、生物として蘇生する様子を見たそうだ。
生物が先か、ドロップ品が先か。どちらが先に存在したのかわからないけれど、見方によっては物質から生物を生み出したと言えなくもない。
その視点で見れば、コンピューターに魔石を組み合わせることで、生物が生まれるのではないだろうか。コンピューターには様々な言語が入っているだろうから、そこから知識を汲み上げて会話が出来るようになったのかもしれない。
[アカネ]蘇生魔法をコンピューターに使ったってこと?
[ミカン]直接は使ってないはずだ。こっちに移動するときにその効果が発生したってことだろう。もし蘇生魔法を使ってわざわざ龍を蘇生したのなら、1回目の蘇生で巨大な龍が誕生し、研究所は壊れて他の6台も消滅するだろうからな。
[チャコ]龍の蘇生が事故の原因じゃなかったのか~。
[アオナ]遠因かもしれないけどね。龍の立ち位置がこの世界では特別だし、事故とまったく無関係とは思えない。それでも昔のコンピューターだから、事故に関係があるといっても人災じゃないかな。
AIの入ってない機械が勝手に動作するとは思えないから、単なる操作ミスで事故を起こすことはあるだろう。とはいえ、事故の原因を知るのは目的ではないので率先して調べることでもない。
視界にふわふわと近寄ってくる光が見えた。近寄ってから手をかざすと、萌黄先輩と表示された。
[モエギ]到着ー。ここって飛行スキルは関係ないんだね。
[チャコ]そうなんだよね~。翼がないからかな~?
[アカネ]移動スキルが低重力遊泳だから、水泳系のスキルなら代用できそう。
[シホ]水泳、苦手なのよね。
[モエギ]泳ぐ機会がめったにないからね。
茜と萌黄先輩の光を見つめてから、周囲を見渡して今の状況を確認。近寄るように見える光もあるけど、あれが仲間とは限らないし、いつここに全員が到着するのかもわからない。正直なところ、ここで集まっても何か進展するとは思えない。
[アオナ]思ったのですが、これ以上この空間に居る必要は無いかと。集まっても影を捕まえるくらいしかやることなさそうですし。
[ミカン]考えられるのは、他人の光を目指すくらいか。あれも恐らく、前にこの時代にいたプレイヤーのうち、ログアウトした人だろうしな。
地上が暗闇で覆われるときに、ログアウトして場所を選んだプレイヤーが残したデータ。あの移動する影に捕まって消えたデータもあると思うけど、偶然ぶつからずに残ってる光もあるだろう。もちろん、地下暮らしをしている魔石のないNPCの光の可能性も十分あるけど、それを確かめに光へ向かったとしても、その光とソウルリンクしない限り、地上でその人を探せるとは思えない。見知らぬ人と意味もなく繋がる気はない。
[キリ]それじゃあ、中央の街に戻る? 合流するなら、その方が手っ取り早いし。
[シホ]そうしましょうか。それでは、あちらで集合いたしましょう。
[アカネ]はーい。
[チャコ]は~い。
リスポーンの選択画面を開いて、中央の街を選択する。一瞬だけ視界が暗くなり、気が付いたら中央の街の広場に居た。
「夜だ」
暗闇でも見通せる目でも、昼と夜の違いは問題なく区別がつけられる。空に太陽はなかった。
「ええ。もう何人かログアウトしてるわ」
数メートル離れた位置に明かりを持った紫帆先輩が明かりを持って立っていた。先に来ていたメンバーと話し合って、ログアウトする方針になったらしい。紫帆先輩は全員が来るまで待っているようだ。
「一緒に待ちましょうか?」
「大丈夫よ、いつも通り蜜柑がすぐ戻ってくるから。休んでらっしゃい」
そういうことならと、軽く断りを入れてからログアウトする。
~~~
休憩後にログイン。既に何人も戻ってきていた。あとは黄里先輩と茶子だけだ。
「モエギ先輩の魔法は、あれで正常なのかしら?」
待っている間の話題は神聖魔法だ。よくわからない魔法には誰もが興味を持っている。
「うーん。前に使った時とは反応が違ったから、正常な発動じゃないと思うんだけど、世界そのものの環境が違うから、どっちとも言えないね」
神の声を聞くような効果の魔法だったのが、ダメージを受けて見知らぬ空間に飛ばされることになった。あれが正常動作だとしたら、影――というよりも、ガイアと交信する魔法なのかもしれない。
「今度、初期時代と戦争時代で比較してもらっていいでしょうか? 影が発生した理由が掴めるかもしれません」
「うん。今のままだと使い方がわからないから、一緒に確かめてくれると助かるよ」
茜を抱えた萌黄先輩は、僕の頭を撫でながら返事をする。僕自身の興味から出た提案だけど、萌黄先輩からしたら自身の魔法を調べてくれるからという理由で撫でているんだと思う。
そうして話をしていると、全員が集まった。
「それじゃあ、今からどうしよう。妖精の国を通って拠点に戻る?」
「時間があるなら~、他の国も見てみたいかな~」
「あぁ、それは良いかもしれんな。状況を軽く見て回るだけでも新たな情報が手に入るだろうし、何らかのアイテムがあればさらにいいよな」
僕のように魔法の本や貴重品を入手できたら、色々と助かる。既に住んでいる人がおらず、戻ってくる望みもほとんどない場所からなら、泥棒とはいえない。戦後何十年も経過しているし、所有権もないだろう。
「帰還石で移動できるのよね?」
「出来るけど、拠点に戻る手段は考えるべきだよ。王都でリバ石触ると、帰還が難しくなるかもね」
黄里先輩のいう通り、無計画に帰還石で飛んで戻れなくなったら困る。この時代は交通機関が壊滅状態なので、移動手段としては[ウォーターボート]しかない。
今はこの街の中央がリバ石の帰還地点になっている。ここへ戻ることが出来れば妖精の国経由で拠点へ向かうことは可能。けれど、妖精の国へ入ることが出来ればどこからでも帰れるから、他の手段を模索しても良さそうだ。
「帰還石で一番最寄りのダンジョンは、マアズ王国の王都すぐそばにあるダンジョンでしょうか」
「そこから戦争時代に戻るわけにはいかないの~?」
「ダンジョン内にあれだけ職員の人たちがいる前で、不用意に戻ると騒ぎになりそうだな。出口で渡す札が無い状態で外に出たら、取り調べでも受けるんじゃないか?」
「ダンジョンの外にも、内部の時代移動直前の階段前にも、職員さんは待機してたよね」
マアズのダンジョンから時代移動は、整備されすぎているため現実的ではない。それでも、ダンジョンであれば別の手段がある。
「マアズのダンジョンの裏側を削りましょう。過去には影響ないので、使いやすいように整備するのがいいかと」
「土魔法が使えるのは、うちとアオナだけか。ま、何とかなるかもしれんな。アオナならダンジョンに入れば魔力の回復も可能だろうし」
ダンジョン内部が危険じゃなければ、魔力の回復も容易だ。今まで見た限り、どの時代でもダンジョンの傾向は似ている。初期時代で難易度が高いダンジョンは、戦争時代でも高いし、その逆もある。その理屈で言えば、マアズのダンジョンは職員が常駐出来るほど難易度が低いため、この時代でも魔力の回復が不都合ない程度には難易度が低いはず。
「それでは、最初にマアズへ飛びましょう。リバ石を触らずにダンジョンまで移動して、後ろを削れるか試しましょうか」
そうして方針が決定したときに、萌黄先輩に抱えられた茜が片手をあげた。
現実の方でもコロナ以降は学校の水泳授業が減っているので、茜たちみたいに泳げない人が普通になってくるのでしょう。茜たちの時代では水泳用のVR授業が出来そうですが、実施されていないか選択授業なのかもしれません。
※色々修正しました。そもそも『~~~アオナ~~~』がありませんでした。それと、戻ってきたときに夜の設定に変更して、ログアウトで1日時間を進めました。




