『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』286
~~~アカネ~~~
視界が、宙に浮いたあの空間に戻った。ぐるりと周りを見渡してみると、戦争時代に多かった光がほとんどない。地上方向は――光がそこそこあるなぁ。地下に人が居るのか、地下の魔物なのか。どちらにせよ戦争時代と比べると1割にも満たない。
[アカネ]アオナ、いまどうなってる?
[アオナ]暗闇の空間に出た。とりあえず集合かな。
[アカネ]はーい。
細く伸びる糸は見えるので、これに沿って進めば問題なく合流できる。前に泳いだ時と同じように、【低重力遊泳】を使用する。相変わらず周辺との距離感がつかめないから、早く移動しているかどうかはわからない。それでも、じたばたと泳いでいた時と比べると体の動きがスムーズになっているため、遅くはないだろう。
気分だけはスイスイと泳ぎ続けると、糸が固まっているような場所に到着した。その場所からは複数の糸があちらこちらに伸びている。
「1、2……あ、これパーティーメンバーだ」
前はパーティーで固まっていたんだけど、廃墟時代のメンバーが全員この空間に来ている影響か、位置がバラバラになったんだろう。そのため、糸の根元だけここに残って、他の光はどこか遠くに行ってるんだと思う。
ここで待っていれば人が集まってくるだろうから待機かな。
……。
……暇。
【ソウルリンク 1年】
[アカネ]ひまー。
[アオナ]そろそろ誰かが近寄ってこない?
[アカネ]まだ見えないかな。
[チャコ]移動してるからまってて~。
[アオナ]前に進むだけで、かなり難しい。
暇に任せて全員に連絡をしたら、この時代に来ている7人全員と連絡が取れた。それぞれが糸を頼りに移動している最中らしいので、集合するのを待っている状態。
近寄ってくる光が誰なのか判別できれば、【低重力遊泳】を持っているから迎えに行けるんだけど、どれが仲間なのかを判別するのは非常に難しい。
一度だけ蒼奈が上下左右に移動してアピールしてくれたんだけど、まったくわからなかった。遠くに光がある場合は、多少動いたところで他の光と区別つかないみたい。
【ソウルリンク 廃墟時代グループ】
[シホ]移動だけでは時間がもったいないから、相談しませんか?
[アオナ]はい。どこから話しましょうか?
[ミカン]見た景色の共有からだな。
それぞれが見た光景の話をする。私と蒼奈みたいに、一緒に同じ光景を見た人はいないみたい。というより、意図して見たいものを選ぶことはできなかったそうだ。
[モエギ]ふたりだけ見たいものが選べたのも不思議だよね。
[アカネ]ふたりというか、選べたのはアオナだけだと思います。私は引っ張られただけなので。
ソウルリンクの入力欄を利用して同じ光景を見ただけだからね。私の方はなにもしていなかった。出来ることと言えば邪魔しないように何も考えないことかな。
[キリ]私の方でも見たいものが選べられるか試してみたけど、特にそういった法則性はなかったね。
[チャコ]アオナが選べたのはなんでかな~?
[ミカン]称号の違いじゃないか? 【救世主】や【ガイア】みたいな、うちらとは違った称号をもってるからな。
[アオナ]ガイアの名前開示も救世主があったおかげなので、そうかもしれません。
蒼奈が【救世主】を手に入れたときって、この廃墟時代から締め出されるときに手に入れたんだよね。蒼奈が救った対象が先輩たちじゃなくて廃墟時代の世界そのものなら、称号の効果ってかなり大きい気がする。
[キリ]今回みんなが見た光景――恐らく誰かの記憶だろうけど、生物であれば何でも見えるってことでいいんだよね?
[ミカン]そうだな。うちが魔物の記憶も見たんで、制限はないと思っていい。
[モエギ]アカネちゃんは、アオナちゃんの記憶を見たんだよね? プレイヤーも見えるってちょっと恐いよね。
[アオナ]後で聞いたところ、僕がリアルタイムで考えていたことが流れていたようです。過去の記憶が見えるかどうかはわかりません。
[シホ]誰かの過去を見る条件はありそうね。一番考えられるのは亡くなってることかしら?
[アカネ]ログアウトは、亡くなってるに入るのかな? プロキマって先生がログアウトしてたけど、その人の記憶は見てるからね。
[キリ]プレイヤーとNPCのログアウトの仕様が違うのかも。私たちみたいに体が現実にあるか、ゲーム内の存在として内部に体があるかの違いはあるだろうね。
[ミカン]NPCのログアウトってのがわからんけど、100年ごとのログアウトは開発者側に向けたアナウンスだろうな。プルトたちは巻き込まれた感があるが。
[チャコ]ログアウトって、体に戻るんでしょ~? NPCの体ってどこかな~?
[アオナ]僕らも現実へ戻る前にシープのシステムを挟むから、最初のログアウトで直接肉体には戻らないことを考えると、どこかにデータとしてあるのかも。
VRシステムのログインは、体へ機器を身に着ける、あるいはカプセルに入って電源を入れると、シープタウン内で前回ログアウトした場所、あるいは自分のホームでログインをする。その場所からゲームを選んでそれぞれのゲームに入る。そこからはゲームの仕様によって手順が違う。
このゲームの場合は、ログイン直後はゲーム内にある別の空間に出る。私たちの場合は、部活で作った集合場所のような空間があるから、会議をするときはそこで話し合うんだけど、フレンドだけの空間とか、クランの空間もあるらしく、そのあたりはプレイヤーが好きに設定できる。会話しかできないので、アイテムの受け渡しも他人への接触も不可能だけど、相談には便利。
ゲームにお金を払えば空間の規模や装飾が豪華になるらしいけど、部活の集まりだけの空間なので、デフォルトの状態。それでも無料のスキンがあるので殺風景じゃない。
[シホ]どこに出ることをログアウトと判定してるかだね。シープのタウンまでだと、追跡はできなさそう。
[ミカン]そうっすね。逆に、ゲーム内の空間なら接触できる可能性はありそうっす。
[シホ]フレンドにさえなれば、そこで会うことはできるのよね。
[キリ]NPCとフレンドになれるかどうかから調べないと。
[モエギ]具体的な行動の前に、目標設定の共有からかな?
[シホ]あ、そうですね。私たち全体の目標は、プルトさんらの龍への攻撃を中断させたい。これは変わってないわね? そのうえで目標は、プロキマさんやキャロンさんなど、ログアウトしたNPCと合流でいいかしら? プルトさんたちの龍へ攻撃する一端がそれに該当していそうなので、交渉できるとは思うのよ。
当初から目的は変わらず、戦争時代の苦しそうな龍を助けたい。この廃墟時代の龍がどうなってるのかはわからないけど、戦争時代だけでもどうにかできたら良いと思ってる。
ソウルリンクでの会話なので、お互い表情は見えないけど、蒼奈も茶子も「それで良いです」「いいんじゃないかな~」と返事をしているので、シホ先輩の案に賛成みたい。もちろん、私も賛成だ。あんなお別れの記憶を見てしまったら助けてあげたい。
[アカネ]プロキマさんたちって、どうやって探す予定ですか?
[キリ]ログアウト先の空間で探すのは難しいから、ゲームの中だろうね。魂を探すしかない。
[チャコ]魂って残るものなの~? この周りに見える光って、アカネが見た時より少ないみたいだから~、死んだら光が消えるんじゃない~?
[ミカン]死亡で消えるかどうかは調べてないからわからないが、前にアカネが調べた情報から推測するに、残っている可能性は十分にある。
茜の母のようにシープ内にある職場へ向かう人も、1回はシープタウンかホームにログインをして、それから自分の職場を選択してログインする形になります。シープタウン内のショップで働いている人も、それぞれの店でログイン状態を維持しつつ接客をしています。




