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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』281

~~~チャコ~~~


 謎の空間に入ると、システムメッセージが届くらしいんだけど、今のところそういった様子はなさそう~。手足が表示されてないみたいだけど、半透明の体になるって話だったよね~。


 ログアウトも表示されないって、噂にあるような、ゲームに閉じ込められた感じかも~!


◆+◆+◆


 病室でベッドに横になっている人の手を取る。魔力が不足して腕が細くなり、いまにも死にそうな姿をしているが、動けない以外は健康上問題ないという矛盾を孕んだ状態だ。顔色を見たり心音を聞くなどしつつ、患者に問診をして診察を終える。


「食事を十分にとってゆっくり休んでくださいね」


 笑顔で声をかけてから立ち上がる。8人部屋の病室で、今のが最後の診察相手だったので病室を出る。ちょうど別の病室から同僚が出てきたので、目を合わせ頷いた後、少し離れた診察室へ共に入る。診察室は個室のため、相談をするにはちょうどいい場所だ。


「動けないだけで病気ではない。病気を治す魔法が何も効果が無いからな」


 患者の病状を共有すると、同じように診察していた仲間も同じ結論になったようだ。予想とは違う結果に、これ以上続けるかどうか迷うところだ。

 病名は魔力病。患者の症状は、体内から魔力がどんどん奪われてしまっていることで、体内に魔力を巡らせることができずに、動くことができなくなっているようだ。


 この世界では、魔力が無ければ生きることが出来ないと考えられていた。実際に魔力病で入院している人たちは、魔力が不足して動けない状態になり病院で治療を受けている。

 それにもかかわらず、意識がはっきりしており、痛みはどこにもなく、単純に体に力が入らなくなって動けない。腕や足は細くなっているが、胴体の筋力はあまり低下しておらず、咀嚼や嚥下に影響がないため食欲も旺盛だ。そのため、起き上がれない以外はいたって健康だ。


「体内の魔石は、一定レベルまで削られたらそれ以上は減らないのだろう」


「魔石には外殻と核があるという予想とも一致しているな。どれだけ削っても、魔力不足による死亡は起きない可能性がある」


 そうなると計画の方向性を変更しなければならない。魔石の魔力を無くしても生物を殺すことが出来ないのであれば予定を大きく変える必要が出てきた。


「テッツでの実験は終了としよう。プルト様に連絡して魔力回復してもらい、街を放棄するぞ」


「龍の王笏が外れないからな。それしか手段があるまい」


 生物から魔力を極限まで絞り取っても死ぬことはない。人は生き続けているし、植物はしおれただけで終わっている。農作物の芽が新たに芽吹かないようなので、誕生することは防げるようだがそれだけだ。狙っていた効果とは程遠い。


◆-◆-◆


 ん~? テッツって、茜とギンガが行ったところだよね。病気が流行ってたけど、金龍によって助けられた村だったかな~? お墓に王笏の壊れたパーツを入れて、土地の魔力を人為的に排出してたそうだけど、これってその犯人たちの目線っぽいね~。


 ということは~、ここって蒼奈が言ってたあの空間の中なのか~。たしか、影に触れると記憶が見えるって話だったからね~。

 ……ログアウト不可ってことは、強制イベントムービーみたいなものかな~?


◆+◆+◆


「マー君は気にしすぎじゃないかな? プーちゃんの言う通り、気にしない方がいいよ」


 エリスが気の抜けたような声音で反論するが、ここにいる誰も気を緩めるようなことはしない。マケマケが周辺に気配があると言えば、高確率で誰かが潜んでいる率が高い。


 私たちは適当に雑談をして、既に興味を失ったふりをしつつ、マケマケが周辺の探索を続けている。恐らく、痕跡くらいは見つけるだろう。


「んー、すまぬ。どうにもわからんでござるな」


 頭をカリカリと掻いて戻ってくるその姿に、私を含めた4人が驚いた表情をする。そんなことがあるのかと。


「プレイヤーと言われる人たちなら、その場で消えることもあるけど、それでも痕跡は消せないはずでござる。それが、今回は気配のあった一帯に足跡などの痕跡は一切ないでござるよ。全く見当違いの方向になら足跡はあるものの、とらえた気配とは違うでござるな」


「空を飛ぶプレイヤーもいるんじゃない?」


「魔法を使っている気配はなかったでござる。翼人であれば、翼の羽ばたきで雪が何らかの痕跡を残すが、それもござらん」


「あとは、ピクシーか? 魔法で鳥に変身したのなら魔力の痕跡も残るだろうからな」


「ピクシーの確率は低いでござる。受け取った情報にはプレイヤーの種族は限定的と聞いていて、その中にピクシーの情報は無かったでござる。それに、旅をするピクシーの行動原理はプレイヤーと変わらないのが厄介でござるから、プレイヤーのピクシーがいる裏が取れないでござる」


 旅をするピクシーは、閉鎖的な妖精の国から飛び出してしまうような、行動力と好奇心と破天荒の塊でしかない。最近見かけるプレイヤーも同じような行動しかしないため、ピクシーとは相性が良いだろう。つまり、プレイヤーとピクシーが共に行動をしていたとしても、そのピクシーがプレイヤーだとは限らないということだ。


「しばらく調査した後、封印の解除でも試みましょう。龍が手に負えなければ撤退します。無理な手段よりは、時間をかけても手堅いほうがいいですから」


「あの規模の肉体は、倒すのが無理じゃないかな?」


「そんなに大きいの? 私は地下を見てないから知らないんだけど」


「城より大きいでござるな。城に向けて武器を振るうほど無駄なことはないでござる」


 最終目的の障害に龍が存在するため、どうにかして排除する必要がある。とはいえ、生半可な方法では討伐不可能なため、からめ手を使って倒すのが現実的ではある。


「あの村はどうするんです? 封印解除した後にどうなるかわかりませんが」


「そうですね……決行時に、マケマケはエリスを連れて村に潜入し、住人を外に誘導してください。エリスの魔法で好感度を上げれば誘導可能でしょう」


「承知でござる」


「はーい。なんとかしまーす」


 何気なく言っているが、エリスの魔法は正直恐ろしい。好感度上昇と言えば聞こえはいいが、人を思い通りに誘導・操作しているのと大きく変わらない。自由に人を操るほど使い勝手がいいものでないのは知っているが、常に味方を作り続けられるのは何物にも代えがたい能力だ。行動制限は対象の持つ常識に捕らわれるが、例えば――


「それでは、一度準備に戻りましょう。問題ないと思いますが、マケマケが感知した人がまだ監視していないとは限りません」


「そうでござるな。拙者よりも優れた使い手だとしたら、一度引いて様子を見るのが一番でござる」


 マケマケより優れた斥候がいるとは思えないが、いないと断言できる根拠はない。現に、痕跡を残さずにマケマケから逃れた者を見たのは今までなかったことだ。慎重に事に当たるとしよう。


◆-◆-◆


 うわ、これマアズの雪の村の出来事だ~。隠れ家に入ってログアウトしたんだよね~。あのまま外に出てたら危なかったかも~。体のサイズが小さいのと、隠れ家っていう特殊能力のおかげだね~。そうじゃなければすぐ見つかってたよ~。

 あと、ピクシーのプレイヤー情報が少ないのは納得だね~。なんか、あたしだけのような気がしてくるレベルで会わないからね~。便利なのに~。


 名前を聞いたことあるメンバーだけど、色々と命令していた女性ってプルトさんだよね~? プルトさんはプーちゃんって呼ばれてたから、間違いないと思うし、名前の出てたエリスさんとマケマケさんもわかる。ハウメアさんとケレスさんは名前が出なかったな~。自己紹介してくれればいいんだけど、さすがに人の記憶に文句はつけられないよね~。

 ピクシーに人気が無いわけではありませんが、遊ぶ人は長続きはしません。新たに生まれては、別のキャラに作り替えるような儚い感じになっています。

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