↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あちーぶ!  作者: キル
345/422

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』275

 意識して見ることができるのなら――猫の街コディアリが見たい! いや、自分で行くべきか? 味覚が無いなら猫を触った感触も無いに違いないし、なにより視覚が限定されるなら猫を見続けることも難しいかも。


 うーん、他に見たいものか……とりあえずは過去の自分の意識に入れるかな? 自分、自分、自分……


◆+◆+◆


 若い兵士さんのつぶやきが聞こえた。私が100年近く受付嬢してるのは知らないのかな? 褒めてくれるのは素直にうれしいですね。


「おはようございます、ヴァス先輩! あれ、兵士さんがいるんだ」


 リィサさんが兵士さんを見ながらギルドに入ってきた。普段見かけない兵士さんが居たら戸惑うよね。


「おはようございます。昨夜は警報が鳴ったらしくてね。何もなかったようだけど、兵士さんが一晩中警備してくれたようです」


「そうでしたか。兵士さん、ありがとうございます」


 素直にぺこりと頭を下げるリィサさん。うん、素直な彼女は今の年齢で更新したほうがかわいらしくて良いかもね。仕事を覚えるのも早いから、将来は色々任せられそう。

 リィサさんは兵士さんから離れると、昨日連れてきた猫の所まで移動して、ご飯の準備をしている。


「いい子にしてた? 不審者とか見てないかな?」


 右手で猫を撫でながら左手でご飯の準備と、器用なことを続けるリィサさん。

 不審者――昨日ギルドに居続けた不審者といえば猫だけど、普通の猫に見えるから違うよね。昨日からずっと柵に入ったままですし。

 今わかる範囲で不審者に盗まれたものはなく金銭も減っていない。恐らくはネズミなどの動物がギルド長室に入り込んだだろうと考えられている。

 地下に侵入者がいたかもしれない話がタイミングよく……悪く? あったけど、階段の踏み板は動かされた形跡がなかったため、うちとは関係がないだろう。


 カウンター内に入ると、地図の上に小銭が出しっぱなしになっていた。誰か知らないけど後で全体に指導ですね。不審者のこともあるし、気を引き締めるにはちょうどいいかも。


「リィサさん、猫のご飯あげたらなら開く準備を忘れないようにね」


 一心不乱にご飯を食べている猫をじっと眺めたまま動かないのも困るので、仕事を促す。職場に動物がいるとストレスが軽減されると昔の職場で話題になってたけど、あれは犬だったかな。だからといって、あれだけ構って仕事が進まないのは困る。


◆-◆-◆


 猫がいる職場に就職したいです。

 それはそれとして、自分自身の記憶には入れなかった。対象が自分だったから入れないのかな。仮に蒼奈だったら――やめとこう。さすがに蒼奈が怒る。


 記憶が見える条件が何なのかわからないけど、自分に入れない可能性は高い。自分の心に自分で入り込むという状況がよくわからないからね。


 あとは、生物であれば何でも対象だということ。ちょっと前に見た記憶は、草や植物になっていた。対象の知能の高さには左右されないことになる。

 植物なら定点観測にちょうどよさそうだし、人の記憶を覗き見る罪悪感は無いんだけど、得られる情報も少ないのが欠点。

 見るのなら誰かの記憶が良いんだろうけど、誰がいいかな……。


◆+◆+◆


「それにしても、よく見つかりましたね」


 貴重な本なので、丁寧にページをめくる。


「草原に住む住人が書き留めた記録らしいからな。必要な物品の数はわからないでも、儀式の全体像は詳細に書かれているぞ」


 原本のままでは使えないので、別の紙に全てを書き写す。日記形式のため必要ない部分が多いため、自分たちで使う箇所だけに絞って丸ごと写し取る。それが終わった後は、儀式の復活のために誰が見てもわかるように内容を整えなければならない。


 同じ仕事を任された先輩は、この本と一緒に回収されたものを取り出して整理している。


「あと3か月しかないんですよね。星暦400年記念の儀式に間に合うんですか?」


「間に合わせろって話だよ。幸い、衣装は王城の宝物庫に保管してあったから、同じようなものを急いで作らせている最中だ。あとは、これだな」


 手袋をしている先輩が、1本の棒を持ち上げる。今回発見した本と同様に貴重なものだ。


「この杖が儀式の要らしいからな、見つかってよかったよ。このあと専門家に修復してもらうが、かなり丈夫だからこのままでも使えそうだぞ」


(アカネ:あ、ちょっと前の記憶で見た杖だ! 前の方でぐるぐると回してたやつ)


 先輩はどうにもあの杖が気に入ったのか、さっきから何度もじっくり眺めている。僕の場合はあの不思議な文字は気になるものの、そこまで興味は引かないかな。

 本を写し取る作業に戻ると、研究室の扉が開いた。


「おまたせしました。待望の資料が見つかりましたよ」


 声が聞えた瞬間、バッと顔を上げる。美貌の高位文官プルトさん! 今回の儀式復活のために最も貢献をした方だ! この方が草原の家にある書類や杖を発見したからこそ、今の研究があるというもの。


(アカネ:プルトさん!? わ、可愛い。顔つきは変わってないけど、衣装や表情のせいか、ずいぶん違って見える!)


「おお、まさか場所が?」


 先輩がプルトさんに近寄るので、僕も席を立ってプルトさんの場所まで移動する。先輩は妻帯者でしょうが。


「ええ、儀式が行われた場所の予想地点に、何らかの石で作られた祭壇があることを示す資料がありました。丘の上に祭壇あるのも一致しています」


 先輩が資料を受け取る。その資料を見つつ、プルトさんの前に立つ。


「プルト様、資料を見つけていただき感謝いたします」


 頭を下げて礼をする。一介の研究者と国政を担っている高位文官では立場が違うため、よそよそしいけれど丁寧な言葉で話さなければならない。先輩は爵位持ちだから、普通に話せるのがうらやましい。


「お役に立ててなりよりです。皆様の方がこれから資料整理など忙しいですし、これくらいはさせていただかないと」


「いやいや、土地の詳細な情報は限られた文官の方々しか見れない資料ですからね。プルトさんにやってもらわなければ現地に行くしかなかったのです。場所といい、これら資料といい、儀式の復活にプルトさんの功績は非常に大きいです。本をまとめたら、共同研究者として名前を書かせてもらいます」


◆-◆-◆


 プルトさんだった。

 話し方が穏やかで、表情も柔らかく笑顔で優しそうだから、戦争時代のプルトさんと比べたらかなり幼く感じた。たぶん化粧を変えれば私が知っているプルトさんと同じ見た目になりそう。


 少し前に見た記憶と時代が繋がっているのかはわからないけど、杖が共通しているのと、丘の上で儀式をするっぽいので国は同じはず。妖精の多い草原の国と言ったらサアターンだろう。

 前に聞いた話では、サアターンの龍の封印地で行われていた儀式は、一時的に中断されていたらしい。それが後から復活したそうで、そのときに儀式の場所がずれてしまったのだとか。

 もし儀式の場所がずれたのが意図的だとしたら、かなり怪しいよね。私の知ってるプルトさんで間違いないのだから、龍に関してなにか工作をしてもおかしくない。


[アオナ]アカネ、聞こえる?

[アカネ]うん、聞こえるよ! アオナもこっちに来れた?

[アオナ]わからない。モエギ先輩が魔法を使ったら、影に入ったときと同じ空間で固定されたみたい。今は他人の記憶の連続が続くようになって抜け出せない。

[アカネ]あ、アオナもそうなんだ。私も移動中にいきなり変化したから、大きな影に巻き込まれたと思ってたんだけど、そっちの影響があるかも?

[アオナ]そうかも。パーティー機能やソウルリンクの送信は使えなかったけど、個人宛は通じるみたい。

[アカネ]さすがにこの状況で合流はできないよね。

[アオナ]僕があの空間に入ったかもわからないから、おそら――。

 茜が地下に侵入したときは、階段の踏み板を動かしていません。踏み板と床をふさぐ縦板を動かして隙間に入りました。猫だから出来る方法ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。