『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』269
『あれ、アオナちゃんここにいるの?』
突然、黄里先輩の声が普通に聞こえた。微妙に声の聞こえ方が違うのはこの空間のせいだろう。
『はい、光に到着しました。黄里先輩もいますか?』
『私も来たばかりだけど、そうか、この姿は自分だけしか認識できないのか』
集まっている光の数を数えたら6つ。僕の分を合わせて7つだから、この時代に来ている全員の光が集まっていることになる。
となると、この光の中のどれかが黄里先輩だ。
『よく考えたら輪郭だけとはいえほとんど裸だからね。異性とも遭遇する可能性を考えると自分にしか見えないのは適切だね』
手足や胴体を見る。半透明の輪郭とはいえ、よく見れば細かい表現がされているから他の人には見せられない。ゲームだから配慮してくれているんだろう。
――と言うことは、ここにプレイヤーが来ることも想定しているのか。条件として【時空探索者】が必要だけど、恐らくそれ以外のルートも存在するだろう。
『アオナちゃんは、影に触れた? 私は触れたけど、動物に乗り移った感じだったよ』
『僕も触れました。動物もありましたが、ヒトの意識に入り込むのもありました』
お互いに起こった出来事について情報交換する。黄里先輩はヒト族の固有能力【覚醒】が【能力解放】に変化したらしい。本来のヒト族の進化は、見た目も種族も変化しないけど固有能力に【進化】が追加されるらしいので、今回の変化は進化ではなかった。進化条件をまだ満たしていないのかもしれない。
『それにしてもガイアか。私の方は【ガイア】といった称号は入らなかったな。アチーブはたった今入ったけど、【ガイアと知ったもの】だから微妙に違うよ』
名称を知るだけでは称号を獲得にならないのか。よく考えたら当然か。
ふらりと動いた光が見えたので手をかざすと、キリと表示された。こうして相手を判断するのか。他の光に手を触れて、誰がどの光なのかを確かめる。これが茜の光か。
『リスポーン確認した? 私のは初期地点とマーキュラスと中央の街が選択肢に出たよ』
『あ、チェックします……同じですね。当時のアカネに初期地点がなかったのはスタートした時代が違うからだとして、あの街へのリスポーンはデフォルトでついているのかもしれません』
あるいは、そうなるように魔法を作り出したか。
中央の街にリバ石が無くても飛べるのはなぜだろう。理由があるのかもしれない。
『あの街に戻れるのなら、他のメンバーも来てもらうのもありかな?』
『はい。あ、いえ。ここに来れる回数に制限があるかもしれません。呼んだ後に二度と来れないのであれば、後で調べたいことがあっても確かめられなくなります。それに、リスポーン地点が複数あるからこそ、エラーのような形でここに入れたのだと思います』
黄里先輩と僕は、リスポーン地点が複数あるからここに飛ばされたのかもしれない。そうなると、他の場所で登録していない人を呼び込んだら、唯一のリスポーン地点である中央の街へと自動的に飛ばされるかもしれない。
『もし試すのであれば、最初はアカネに飛んできてもらうのが良いかと。アカネが来れるのであれば、複数回ここに来れることになります』
既にこの空間を経験している茜が入ることができたなら、この空間に入る回数は1度きりではないことになる。
『影を捕まえる人が増えれば良いと思ったけど、今すぐは難しいか』
『一度アカネに聞いてみますか? ついでに、現状を全員と共有したいです』
『そうだね。じゃあ、相談してみようか』
黄里先輩がソウルリンクでグループを作成し、指定したメンバーを入れた。他の時代にいる人はさすがに指定できない。
【ソウルリンク 廃墟時代グループ】
[キリ]中に無事入れました。その件で、少し相談があるけどいいかな?
黄里先輩が、ここの現状と話し合ったことを説明する。
[アオナ]アカネのセーブの問題の完全な解決にはならないけど、リバ石ならどこでも選択できた。再度この空間に入れるのなら、戦争時代でこの魔法をかければ好きなところへ行けるはず。当然、中央の街も。
むしろ、この魔法さえあれば移動先に困ることがなくなる。行き先はリバ石限定なので街だけになるが、それでも移動時間を大幅に短縮できる。もし帰還石が使えない初期時代で使えたら非常に便利だ。
プルトさんたちもこの移動方法をしているのかとも考えたが、アカネが飛ばされたとき同じように切られたエリスさんが一緒についてきてないので、[マスイサー]による移動はできないのだろう。
[アカネ]今すぐに戦争時代のリバ石に飛ぶ理由もないし、アオナが実験したいのなら試してみてもいいよ。でも、誰が魔法使うの? 回数制限の心配があるからアオナは戻らないよね?
[アオナ]モエギ先輩。先輩なら出来るんじゃないでしょうか? 進化して【聖女】が扱える魔法の種類も広がったはずです。
[モエギ]どうかな、まだ他の魔法は試したことが無いんだよね。アカネちゃん、本貸してくれる?
[アカネ]はい。
小聖女から聖女に進化した萌黄先輩は、魔法の適正が格段に上昇している。おそらく[マスイサー]も扱えるだろう。
[モエギ]発動しそうな気配はあるけど、MPが厳しいかな。アカネちゃんを送った後は回復に時間がかかるよ。
[アオナ]可能ならお願いします。この空間に何度も来れるか確かめたいので。
[モエギ]はーい。ちょっと本を読み込むからしばらくまっててね。
モエギ先輩が本を読んでいる間に、この空間で見えたことを他のメンバーと共有しあう。
話し合ってる最中に影が地上にいる仲間の光へ重なるように通過したのを見たが、あちらでは何も感じ取れていないらしい。他者の意識へ重なるようになるのは、意識がこちらにある場合限定のようだ。
[シホ]ガイアって、ギリシャ神話の女神よね。最初にキャラクターを作った時点で出会った女神はガイアってことかしら?
[チャコ]優しそうだったのに、●●●になって地上の生物消してるんだよね~? 同じ神さまだったら、性格かなり変わったよね~。
[ミカン]女神ガイアは基本的に優しいんだが、怒らせるとやばいって性格だったな。豹変して地上の生物を消すのもあり得るぞ。
[アカネ]怒るってことは、きっかけがあったんだよね。
[アオナ]神話のガイアが怒るときって、自分の子どもが理不尽にあったときかな。怒る対象も自分の子どもだけど。
[チャコ]龍に関することで怒ってるんだから、龍がガイアさんの子どもに何かしたってことかな~?
[ミカン]子どもといっても、神の子どもは神なんだから、該当するのが龍くらいしかいないんだよな。どこかの龍が別の龍を攻撃したから、それに怒ったくらいしか理由がなさそうだ。
[アカネ]あのときギンガが連絡をしたのがアクアちゃんだから、怒られる対象はアクアちゃんでいいのかな?
[キリ]ガイアの怒りに触れていない龍が存在するかもしれないけど、確かめるには残り6龍に連絡する必要があるんだよね。後でやってみる?
[シホ]あと6回も世界を真っ黒に染めるのは大事よね。わずかに残ってる生物がすべて消えるかもしれないわよ。
[ミカン]キリは無茶な提案するよなぁ。
[キリ]いや、全部確かめるにはそれしか無いんじゃない?
2年の先輩は僕らと話すときは大人って感じの対応することが多いけど、仲間内で話すときの雰囲気はいつもと違った感じだ。
[ミカン]それでだ、実際のところは龍がどう関係するか不明な状態だ。龍の名前はうちらがつけたんだし、王都の名前は惑星から来てるけど、それがそのまま龍の本質と同じかは不明。龍には本当の名前があるかもしれんからな。
[シホ]ギリシャ神話由来だと、アクアさんの名前はヘルメスになるわね。伝令神として生まれて、知恵の神ともいわれるそうね。
[チャコ]未来の情報を他の龍に伝えたってことならそうだけど~、実際に移動したのはあたしたちだよね~。
[アオナ]ギリシャ神話の役割がそのままでは無いはず。同じ役割だとアルルさんがゼウスになるからね。
さすがに役割に差がありすぎるから、要素だけを抜き取ったのではないか。あるいは、龍本人にギリシャ神話の名称を尋ねたら答えが返ってくるかもしれない。この時代では試せないから、別の時代に行ってからになるけど。
萌黄の特殊能力が小聖女から聖女に変化したことで、「防御系の魔法限定で条件緩和」が「すべての魔法の条件緩和」に変化しています。




