『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』265
「日付や曜日の集計とってみませんか?」
なんとなく3月の多さが気になったので、各月のばらつき加減を知りたくなり、文字を書いてくれる萌黄先輩にお願いをする。萌黄先輩は、別のメモに1~12の数字と、各曜日を書いて、それらの横ににチェックを入れて数を数える。
「曜日が変わってるのはどうしようか?」
「正しいほうの曜日を括弧で囲んで、両方書いてもらえますか?」
「はーい」
30枚なのですぐに集計が終わる。3月が多い気がしたのは間違いないけど、それよりも別のところが気になった。
「曜日のところ、数が揃ってるね~」
曜日の部分を訂正前と訂正後、それぞれ別として2つとして数えると、曜日のチェック数が各曜日に対して5回登場している。偶然並んだにしては、ちょっと出来すぎている。
「この曜日って、間違えたんじゃなくて両方使うってことでしょうか」
「だから塗りつぶして訂正してなかったのかもね」
間違えていること、訂正をしていないことに意味があったのかも。となると、あとはこの曜日をヒントにすればいいのか。
「曜日ごとに数字を拾い上げましょう」
メモの紙を並び替えて、曜日ごとに分ける。曜日が被っているメモは、萌黄先輩が新たに追加で作ってくれた。
「これ、順番って関係あるのかな~?」
「あー、あるかも? 暗号に出てきた順に並べていこうか」
35枚の紙を曜日別に分けて、それをページの順番に並べた。数字がずらっと並んだのは良いけど、あとはこれが何なのかだよね。
「月曜と日曜はわからないけど、他は龍と対応してるよね~」
残っているものと言えば天龍と海龍。印象で考えるなら、天龍が日で海龍が月って予想はつくけど、最初はわかりやすい残り5つの曜日を見ていこう。
「それぞれの曜日に5枚使われてるのって、意味があるのでしょうか?」
「1桁と2桁が混ざってるから、桁を合わせてるわけじゃないよね」
「2桁のメモも、数字の並べ順がまだわからないよ~」
茶子の言う通り、並んでいるメモは完全に解読された数じゃない。暫定で数字が書かれているだけで、25が52になる可能性もある。
火曜から順に数字をじっくり眺めていく。龍に関係することで、数字か……。
――木曜日になんとなく見覚えがある気がしたので、自分用のメモを取り出して比較する。
「これだ! この数字、龍の座標だよ!」
木龍の座標を控えているので、その座標をふたりに見せる。若干数字の順序は違っているけれど、使われている数字はひとつ残らず座標を示した数字に変わりがない。
「数字は全部一緒だね! じゃあ、これって龍の座標の数字なんだ」
「でも~、順序はちょっとちがうよね~」
使われている数字は、並べ替えれば座標と同じになるけれど、順序が違う。完全に違うのではなくて、ごく一部の2桁の数字を入れ替えればピッタリそろうようになっていた。
「暗号に書かれた順序で並べるのは間違いなさそうだね。あとは数字の桁の順序の法則がわかれば解読が終わりそう」
「他の座標は持ってないの~?」
「えっと――あ、アオナが調べたのをメモしたはず」
火龍の座標を蒼奈が調べてたらしくて、ヴァンパイアの村を探す途中の雑談で教えてもらっていた。メモを探して取り出し、火曜日と数字を比較する。
「うん。数字は一緒で、順序が違うだけだった」
「じゃあ、あとは桁の法則だけか~」
桁の順序の正解をメモに記入してもらう。偶然順序があってるだけの数字あるので、火龍と木龍のメモに全て書き込んでもらった。
「あ、わかったかも」
「あたしもわかったかも~」
メモに書き込んだ瞬間にわかった。というより、これは茶子の数字の並べ方がよかったんだと思う。
「ふたりともわかったんだ? どんな風だったの?」
「3月です。数が一番多い月。これのある数字だけ他と法則が違うんです。チャコが上手く並べてくれたからすぐわかりました」
3月に該当するメモに肉球を置く。
「チャコは2桁の数字を並べるとき、小さい数字を10の位にして、大きな数字を1の位に置いてくれたんです。どちらで並べたらいいかわからないから、統一してくれたんですね。それで3月ですが、これだけ10の位のが大きい数字を置くんです」
3月だけ、数字の配置を逆にする。たったそれだけで、座標の数字が正解となるように導かれた。
「全部の月を見たわけじゃないから、他にもあるかもだけど~、3月を反転させるのは確定だよ~」
火曜と木曜のメモだけでは、まだ7つの月しか使われていないため、他のところもあるかもしれないけど、特定の月で反転させるのは間違いないんじゃないかな。
「天龍と水龍を調べれば、他の月は全部カバーできそうじゃない?」
そのふたつを調べたら、12か月の確認がすべて終わりそうだ。これ以外では1つの月が余ったりするため、3か所調べることになる。
「そうだね~。天龍が何の曜日かもわかるし、ちょうどいいかも~」
そういえば、曜日問題もあった。少なくとも火曜日は火龍で、木曜には木龍の座標だったから、他の曜日も龍の名称に対応しているはず。天龍を調べれば、わからない部分が解決するのは効率が良いよね。
解読が終わったところで萌黄先輩と茶子とハイタッチをしてから周囲を見渡すと、修理待ちの書類や本がいくつもあった。慌てて修理にとりかかる。本来のお仕事はこっちだからね。
萌黄先輩に魔力をもらいながら修理を進めていると、探索メンバーが集まってきた。この建物の探索が終わったみたい。
「暗号がわかったよ~」
修理をしている間に、茶子が暗号の解読結果を他の人に教えている。反応を見る限り納得してもらってるようで一安心。
「地下の遺跡は、この座標を使って起動させたのかもしれないね」
「遺跡の起動を妨害するのなら、日記か暗号を細工すれば行けるのかしら?」
「戦争時代に、この日記があればな。日記には年代が書かれないから、いつに書かれたのかわからん」
2年の先輩が、解読された暗号をどう活用するか話し合っている。そういう使い方もあるのか。私の場合は、座標を調べるために全部回らなくてもよくなったなとしか思ってなかった。
「地下遺跡以外に座標の使い方はあるのでしょうか」
「元々は、この町が大陸の縮図だろうからって理由で座標を調べてたんだよな」
「はい。結果的に地下への入り口が龍の座標に該当していたので、調べてた意味は意味はあったのですが、今は全ての位置が判明したので、その目的で調べる理由はなくなりました」
各ギルドにある地下に続く穴。それが、龍の封印されていた座標とほとんど同じだったため、この町が大陸の縮図であることは決定したし、座標を使って調べる予定だったこともやらなくてよくなった。この街において王都がある場所は、龍の座標から位置を割り出せるため、蒼奈が地図で調べたけど気になるような施設は見当たらなかった。
私と萌黄先輩が修理をしている最中に、2年の先輩がこれからの探索方針を決めていた。
「私とミカンとアオナさんは、学校へ移動。キリとチャコさんは商業ギルドの反対にある建物を探索してから、各ギルドを見て回ること。モエギ先輩は今までと同じくアカネさんと一緒に修理作業をお願いいたしますわ」
「うん、アカネちゃんとのんびり修理を続けるよ。場所はどこがいい?」
両手が塞がってる私の尻尾を手にして軽く振ってる気配がするな。
「学校に移動してくれると助かります。あちらの書籍の保存状態がわかりませんから」
ボロボロの本ばっかりだと運ぶのも大変だから、私たちがすぐそばにいるほうが都合がよさそう。
黄里先輩と茶子が向かう建物は、座標上では王都がある場所に該当する。念のため調べてみて、何もなければ王都の座標に意味がないのがわかる。
その後は、ギルドに何か情報が無いかを調べに向かうんだけど、これは学校の図書館の調査が終わったら他のメンバーもギルドの調査に参加する。
それが終わったら、蒼奈のやりたかった方法を試すことにするんだって。調査もあと少し、頑張ろう!
尻尾を触られると嫌がられる問題に関して、猫ごとに反応が違うため賛否が分かれるところですが、茜に関しては部活のメンバーなら問題ない認識です。チェリルさん一家など、好意的に見ている人たちも問題ないでしょう。




