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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』264

 文字が小さくて1ページにみっしりと文字が書かれた日記をゆっくり読む。内容に違和感があるかもしれないから、注意深く読み解く。


「……あれ? ここって、間違いじゃないですか?」


 書かれている文字の一部が、間違っている。名詞部分が、言うなれば「ねこ」を「ぬこ」というような書かれ方で、スラングの可能性もあるけど間違いではある。


「間違いだけど――ちょっとまってて」


 萌黄先輩は本を持ち上げてパラパラとめくる。その間、集中して本に目を向けている。


「間違いと同じ単語を4か所見つけたけど、こっちは普通に書かれてるね」


 複数のページを開いて単語の部分を教えてくれる。該当の単語は別のページではそれぞれ正しい単語で書かれている。そうなると、さっきの間違いはスラングではなく訂正されるべき単語だ。


 とはいえ、これだけでは何のことはさっぱり。この文字が訂正されないことで、何があるのか。


「この文字、同じページにこの文字へと訂正されたのが3か所あるね」


 萌黄先輩が訂正の文字をさす。たしかに、訂正の文字と一緒だ。さっきの例だと、「ぬこ」の間違っている部分「ぬ」が、他の訂正部分に現れている。例えば、「沼」と書くべき部分の1文字目が黒く塗りつぶされて、「ぬ」と訂正している。それが3か所。ちょっと多い。


「訂正された部分の文字を拾い上げませんか?」


「やってみようか」


 訂正箇所は、多いといってもそれほど数が無いので萌黄先輩はさっとメモに書き込んだ。拾い上げられた文字を確認する。このままだとわかりにくいから、もう一工夫必要かもしれない。

 ――同じ文字被りって、ちょっと邪魔な気がする。消す方法とかあるのかな……あぁ、あれかも。


「訂正するべき文字を訂正していない。つまり間違ってる状態ですよね。となると、同じ文字は拾い上げた文字の中で間違いってことでしょうか」


 暗号ゲームの「たぬき」みたいなもので、文字列から「た」を「抜く」暗号が有名だけど、それの別バージョン。この場合、「ぬ」が間違いなのに訂正されていないので、「ぬ」は「間違ってる」から、拾い上げた文字の集まりから「ぬ」を除外する。


「それじゃあ、残った文字が本命かな。多分、アナグラムだよね」


 残された文字数はさほど多くないので、組み替えれば1つの単語になりそう。専門用語だと厳しいけど、数も少ないし簡単な単語になりそうな気がする。


「数字になりますね」


「なるね。8って意味の文字になる」


 数字の暗号を解いたら数字が出てくる。暗号に暗号を重ねている? それだとかなりややこしいことになりそう。


「これが正解かわからないし、他のページも見てみようか」


 頭を撫でられて耳まわりを重点的に撫でられる。これはいい撫でだ。次のページを調べる活力になる。


 この作業で一番面倒なのは、訂正されていない間違いを探すこと。適当に流し読みをしたら脳が勝手に言葉を補完して読めてしまうから、それを防ぐために集中して読まなければならない。


「見つけた。これだよね」


 萌黄先輩が訂正されていない間違いを発見する。発見をしたのはいいけど、このページの誤字の数がかなり多い。


「文字が多すぎるよね。どんな単語も作れるよ」


「並べ替えるのは飛ばして、次に行きますか?」


「そうだね。並べるのは後でもできるから」


 暗号の紙に書かれていたページを開いて、同じ作業を続ける。その中でこれまでの方法とは当てはまらないページが出てくる。具体的には、曜日が訂正箇所の部分だ。最初に見つけた場所だけじゃなくて、他にも同じように曜日が間違っているページが存在する。そのページだけは、訂正部分と文字が被らない。


 今はどうにもならないので、飛ばして他のページの調査を進める。途中、この建物を探索してるメンバーから修理の依頼が来るので、修理をこなしつつ空いた時間は訂正箇所の抽出に集中する。


 途中で建物の探索を終えた茶子が合流して、既に訂正箇所をまとめたメモを見てもらっている。


「文字数が少ないのを並べたけど~、こっちも数字に変わったよ~」


 最初のページと同じように、数字に並べ替えられたみたい。暗号の方針としては間違ってないようだ。

 文字数が多いものも同じように変化するのなら、あと気になるのは曜日が変わっている箇所だね。今のままでは抽出されたのが正解かどうか不明なので並び替えることもできない。メモを見ても、曜日をどう扱えばいいのかわからない。


「曜日のページ、ぜんぶ細かくみてみようか?」


「そうですね。何かあるかもしれないです」


 これまで、各ページに誤字が未訂正のままになっている箇所は1か所しかなかった。そのため、手順としては曜日に怪しいところが無いかを確認して、それが無かった場合に本文を注意深く確認していた。曜日が間違っていたら、これまでと同じように間違いの1か所とカウントしたので、本文はそこまで注意して見ていない。


 曜日が未訂正の場所じゃないとしたら……あった!


「ここ、文字が違ってます」


 曜日が訂正されたページには、他にも本文の記述に間違えた箇所が発見できた。そのまま注意深くページを確認したけれど、この文字以外に間違いはなかった。

 メモに新たに書き足す。消すべき文字と訂正箇所を拾い上げた文字で被っているのが複数ある。これで多分正解だ。


「ほんとだね。他のところも探そうか」


 曜日が訂正されている箇所は、今回を含めて5か所ある。それぞれもう一度調べなおして、メモに書き足していく。この作業の途中で、拾い上げた文字数が多いページも間違いが複数あるんじゃないかと思い再度調べなおしたが、曜日の箇所以外には複数の間違いは見つからなかった。


「このメモ、多分16じゃないかな~?」


 文字を並べ替えていた茶子が、少し多めに文字が残ったメモを解読していた。茶子が書いた文字と元の文字を見直すと、16に並べ替えることができていた。


「ここにあるのは全部数字に置き換えれるのかな?」


「それだと、かなり限定できそうです」


 数字限定なら、文字の並び順も簡単に予想できる。桁数が多いと、どの数字がどの位かわからなくなるから困るけど、正解に近寄ることはできると思う。


「結局、曜日の間違いって何だろうね」


「どのメモが曜日違いだっけ」


「これとこれと……」


 曜日が違うメモをピックアップする。他と混ざらないように、萌黄先輩に正しい曜日と間違えている曜日の両方をメモに書いてもらった。

 あとは、文字を解読すれば曜日の違いの意味がわかるかもしれない。

 3人でそれぞれ30枚あるメモを分担して解読してく。


 しばらくメモとにらみっこして、ある程度の数字は全部わかった。ある程度、となっているのは、27と72のような、ふたつの数字が並ぶような前後の区別がつかなかった場合のみだ。なお、3桁の数字はなかった。


「曜日が重なってる数字だけど、1桁が多くない?」


「はい。1、2、5、8ですね。残りは10だけど、数としては近いです」


「5が4だったら足し算かもしれなかったのにね~」


 茶子が言う4だったらと言うのは、1、2、4、8なら足し算をするだけで1~9を全て表せるってことだね。5が紛れ込んでいるから、引き算も必要になってくる。

 計算するならどこかに計算記号があるはずだけど、日記の曜日が違っているページに計算記号は書いてない。曜日そのものが計算記号なら、他にヒントが無い限りお手上げだ。


 うんうんとうなっていると、萌黄先輩がメモに新たに書き込んでいるのが見えた。各ページの、間違えを訂正していない日記部分の日付と曜日だった。


「数字や曜日が解く鍵なら、他の部分も関係あるかもしれないからね」


 情報は少しでも多いほうがいい。

 萌黄先輩によって新たに書き込まれたメモを、茶子といっしょに暗号に書かれた数字の順番通りに机に並べる。きっとこの順番も意味があるのかもしれない。


 並べながら新たに書き込まれた情報を検討してみたけど、月日に規則性はないし、曜日にも規則性はない。バラバラに並んでいる。しいて言うなら、3月だけ数が多いような気がするってくらいかな。

 昔の、紙が貴重な時に書かれるような、1ページにみっしりと文字が書かれている手紙や手帳などをイメージしています。博物館などで見かけるたびに、よくこれだけ細かく書けるなと思います。

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