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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』262

 ティスメスの商業ギルドで依頼品を納入して、ついでにネルイまでの運搬依頼があるのか掲示板を見たけれど、それらしい依頼はひとつも無かった。


「あそこに、ネルイ依頼の注意書きがあるんよ」


 掲示板の横に張り紙がしてある。それを読むと、ネルイ行きの依頼は人気があるらしくて、掲示してもすぐになくなるため、掲示して依頼を募集するのではなく専用の受付で募集をかけているんだって!

 その募集している受付を見た所、けっこうな人が並んでいた。


「どうする?」


「長そうだし、やめておくんよ」


 依頼を何も受けずに、乗合馬車まで移動する。急ぐ移動じゃないけれど、のんびりしすぎる気もない!


 乗合馬車もずいぶんな人の列が並んでいるけれど、これは仕方がない。馬車の本数と乗れる人の数には限界があるからね。

 待っている間に焼き魚を売り歩いてる人が並んでいる列の人の周りを歩いていた。何人か買っていて、おいしそうだったからギンガたちも食べることにした!

 串に突き刺されたお魚を紙で包んで手渡された。魔法で保温してたのかわからないけど、手渡されたお魚はアツアツだ!

 背中部分からパクリと食べると、塩味がきいているのがわかる。中の身も柔らかくほろほろと崩れるけど、他の部分が崩れるんじゃなくて、食べた場所だけ柔らかく崩れる。おいしいお魚だ!


 ぺろりと食べて、ごみは3人ぶんをまとめて、黄金音ちゃんがストレージからゴミ袋を取り出したので、そこに入れて後で廃棄。水魔法で手洗いをしている内に、馬車の順番がやってきた。

 馬車に乗り込み、3人並んで長椅子に座る。他の場所に座ったお客さんたちは、見た目からプレイヤーの気がした。

 短い馬車旅の中では他のプレイヤーと話をすることなく、ネルイに到着した。御者さんにお礼を言って馬車を降りる。

 他のプレイヤーたちと同じく、ギンガたちもダンジョンへ移動。ここでも入る順番の列はあるけれど、馬車のように長く待たされることなくすぐに入ることができた。


「ジュピトリスだよね!」


「うん。そこから川を下ってコディアリ経由だね」


 戦争時代に移動したから、帰還石を使って王都から移動ができるようになった!

 猫の街コディアリ経由のルートをたどってきたから、今回もコディアリを経由して転送装置まで移動する。

 どこで帰還石を使っても変わらないけど、習慣的に人目のない所へ移動して使用した。


 ジュピトリスに移動完了! 川まで移動して、今度は黄金音ちゃんの[ウォーターボート]でコディアリに近い下流まで移動した。

 海岸が見えたところで上陸して、コディアリ方面へ歩く。街道はないけれど、海岸にそって進めば到着するはず!


 国境の境目ははっきりしないけれど、周囲に木々が少なくなってきたことでウラーヌス王国に入ったとわかる。ジュピィタ王国は木々に囲まれた国だけど、ウラーヌス王国の森林は割と少な目だ。エルさんが居る封印地は大きな森だけど、それ以外は規模の小さな森しかない。

 しばらく平原が続いて、周辺に畑が見えだした頃にコディアリの街が見えた。進む方向を変えたら街道も発見した!


 街が見えてからすぐにコディアリに到着! この時代でも、相変わらず猫が多いね! 初期時代と比べてどっちが多いのかわからないけど、歩くたびに猫を見かけるから癒される!


「犬の街ってあるのかな?」


「犬の放し飼いは怖いから、ないんじゃないかな?」


「マアズとか犬ぞりがあるかもしれないんよ」


 犬と言えば、ペットのイメージもあるけど、働く犬もいるからね! 雪の中を犬がそりを引いたり、犬が犯人を捕まえる姿は動画とかで見たことがある。放し飼いではなく、人と一緒に過ごしているのが犬って感じ!

 この世界でも犬を飼っている人はよく見かけるけれど、犬がたくさん集まってる様子は見たことが無い。きっとどこかで飼い主が集まって自慢のわんこを見せあってるに違いない!


「このまま先へ進むでよかったんよ?」


「まだ日暮れには時間あるからね。転送装置まで行けるんじゃないかな」


 猫を眺めてる間に、コディアリの門を越えてしまった。門を出ると猫の姿が激減するのは、外よりも街中のが安全だと分かってるんだよね。賢い猫さんたちだ。


 何も無い平原を進むのと違って、整備されている街道は歩くのも負担が少なくて進みやすい。足元が石だらけだったり、草が沢山生えていると、足元ばかり見て周りの景色を楽しむ余裕もないからね!


「地形の変化はないっていってたよね」


 街道を進みながら、遠くに見える山岳の稜線を見つめる黄金音ちゃん。転送装置に向かうにはどこかで街道を離れる必要があるんだけど、その位置を方位磁針と遠くに見える山の位置から推測しようとしている。


「歩いてきた時間としては、そろそろなんよな」


 未黒先輩は移動時間を元に転送装置の場所を考えている。

 時代が300年経っているから、あんまり変化のないものを基準にして探さないと難しいからね!

 ギンガも場所はよくわからないから、とりあえずふたりについて歩いている。


「多分このあたりだと思うんだけどね。ギンガちゃん、どっちの方に転送装置あると思う?」


 あんまり考えずに歩いていたら、黄金音ちゃんから急に質問が来た! うーん、どうだろ。


「えっと、多分だけど、あっち?」


 黄金音ちゃんも未黒先輩も、このあたりで街道を曲がる予定らしいから、転送装置があるのは今の場所から右手の方だと思う。あとは細かな方向だけど、正直わからないから勘で指をさす。


「うん。このまま街道を進んでもらちが明かないし、ギンガちゃんの指す方向にすすんでみようか」


 街道を北へ進んでいたのを、東に方向を変える。到着するかどうかは別として、転送装置が近くにあれば、多分アクアが教えてくれると思う。エルさんは転送装置に接触さえすれば会話はできるけど、それ以外の場所では自由に連絡できないから、細かいところはアクア頼みだ!


 街道を離れると、整備されていない背の高い雑草がいくつも目につく。避けながら進むと、たまに雑草の影から小型の魔物が襲ってきたけれど、3人いれば問題なく倒せる強さだった!


「雑草の背が高いけど、この国は生い茂ってる場所が少ないから助かるんよ」


「砂漠とはいかなくても、割と乾燥している地域だからね。一面が雑草だらけだったら、不意打ちがかなり厳しかったかも」


 乾燥している地域だから、昔は食料危機があったようで、それをエルさんがいる森にある土を肥料に使ったって話が残っている。こうして乾燥した地面を歩いていると、そういった逸話が残されているのも納得! 街の周りは畑や果樹園が沢山あるから、昔は食料がなかったって言われてもピンとこなかったんだよね。


「エルさんの森はすごいよね!」


「本当に。ここから見える森の深さは他にはない景色だよね」


 エルさんが封印されている森は、背の高い木で覆われた深い森になっている。初期時代よりも木が育ってるんじゃないかな?


「他の封印地でもそうなんよな。龍がいる場所の地形は環境が突出して変わるんよ」


「エルさんは天竜。属性はおそらく光だから、木々が生い茂って光の届かない森ってことなんでしょうね」


 龍が封印されている場所は、本人の属性と違う場所。ギンガは暗視を持っているから感じないけど、森の中は暗いのが普通。場所によっては、1日中ずっと光が届かないような森があるらしい。エルさんの森は背の高い木が沢山あるんだけど、所々で光が差し込んでいる場所があるから真っ暗闇にはなっていない。それでも、外と比べるとかなり暗いんだよね。


 エルさんが封印されている森に近寄りながらも、転送装置の場所を探す。アクアにも手伝ってもらってるんだけど、まだ感知範囲外だって!


「うーん」


 周りを見渡す。地形もだけど、自然環境も大きく変わらないって話だから、この範囲だよね。地形が崩れることなく安定した場所だって言ってたし、平らな場所かな?

 森から一定の距離を取りつつ、平らな地面をぐるぐると歩き回る。


『見つけたぞ』


 アクアの感知範囲内に入ったみたい! 「ありがとう!」ってお礼を言って、指示された場所まで移動する。

 分厚かった石の転送装置は、地面にすっかり埋まっていたけれど、表面は露出している。300年経っているから掘り起こさなければ使えないかもと思ってたけど、すぐに使えるようになってるのは嬉しい!

 あとは、この上に乗って転送してもらうだけ!

 森の光が届かないレベルで言えば、初期時代よりも戦争時代の方が光が届きにくくなっています。光が届かない上に地面に埋められているので、天とは真逆の位置に封印されています。

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