『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』259
壊れた換気口から中に入ると、目につくのは埃っぽい地面。今着ている服は飛ぶことを前提に選んだからスカートの裾が長い。スカートの裾が地面をすらないように片手で抱えて中に入る。すぐ飛ぶから良いんだけど、汚れるのはいやだな~。そういえば、放棄された古い家なのに、蜘蛛の巣って張ってないかも~。
埃と木くずを払いながら屋根裏に入る。屋根や床の隙間から光が漏れて入ってきているけれど、かなり暗いな~。ストレージから魔法の光がかけられた木の枝を取り出す。
「お~、あたりだ~!」
屋根裏には古くなった敷物と、その上に小さな机。小さな棚、小さな箱が置いてある。ひとり用の隠れ家って感じだ~。
机の上は何も乗っていない綺麗な状態で~、棚には本や書類がいくつか入ってたよ~。
小さな箱を開くと、筆記用具のペンが数本と本が入っていた。紙が崩れるかもしれないから、動かすのはちょっとこわいな~。
この家主さんはどこから出入りしていたんだろう? そこからみんなを呼べれば良いよね~。
屋根裏の床がどこか開かないか調べたけど、特に開くような感じじゃない。さっき下から見えた風が差し込むところを見つけたけど、床板の上に頑丈な木の梁が打たれていて開く雰囲気じゃないんだよね~。
「う~ん。どこだろ~?」
部屋を見回して考えてみる。屋根裏って、もし人が出入りする前提なら梯子とかかけて使いやすくするよね~? 下の階を調べた時に、どこにも屋根裏へ上がれそうな場所が無かったから、この屋根裏部屋は日常では使わないような、隠された場所なのは間違いがない。
机は人がひとりで使うだけで限界の小さなサイズだし、他に机や椅子もないから、利用している人は特定の個人っぽいよね~。
使ってる人が個人なら、利用していることを誰にも知られたくないんじゃないかな~? そうなると、下の階は兵士が寝泊まりしている生活空間だから、こっそり出入りするのは難しそう。じゃあ出入り口は下とはつながっていない、壁とか屋根になりそう~。
最初は壁を確認。換気口らしき部分は他にもあって、そこから覗くと外の中央広場が見えるようになっている。監視場所かな~? 反対側の壁から見ると、裏にある大きな建物の庭が見える。これはどうなんだろう? あの庭も見るべき場所なのか、単に左右対称に作っただけなのか、さすがにわからないな~。
壁の確認をしたところ、出入りはできなさそうだったので、屋根の確認。裏側からゆっくり移動しながら構造を見る。
……ここかな? 屋根の骨組みの一部に、切り込みが入っている。デザインのようにも見えるけど、人を招き入れない屋根裏で、それほどこだわることはないんじゃないかな~?
妖精魔法を使って押し上げる――開いた~。古いからかギギギと音を鳴らしつつ扉が開く。そのまま外へ出ると、隣の商業ギルドの屋根がすぐそばに見えた。商業ギルドの屋根裏は荷物置き場になっていて、換気をするための窓がついていたんだよね~。
屋根裏から完全に出て、商業ギルドの屋根の上まで移動すると、中央広場とは逆の裏手側に商業ギルドの屋根裏の窓をはっけん~。お互いの建物間の距離もさほどなく、多少身軽なら気軽に移動できそうだ。よく見ると、商業ギルド側の扉には外に小さな釘が刺さっている。これを持って開けば、外からでも扉を簡単に開くことができそう~。
そのまま商業ギルドの屋根を移動して、その先を見る。そちらも兵士の詰所や商業ギルドと同じ高さの建物があるから、この建物の屋根からも移動できるかも~。こっちは屋根裏に入れそうな扉はないけれど、すぐ下に小さなベランダがあるから、ベランダから屋根に登れるのかもしれないな~。
3軒目の家から先を見ても、まだ屋根が続いている。似たような高さの屋根が続いているから、どの家からでも兵士の建物の屋根裏にはたどり着けそうだね~。
こうしてみると、商業ギルドは屋根裏部屋への出入口と言うより、侵入口かもしれないな~。他の家から屋根を伝って、商業ギルドや兵士の詰所に忍び込んでるのかも~。
屋根を見るのはここまでにして、屋根裏について報告をするために戻ろ~。
みんなが居る場所に戻って屋根裏の話をしたら、萌黄先輩が茜と一緒に屋根裏へ飛んで行って回収することになった。萌黄先輩は空を飛べるし、茜はその場で崩れそうなものだけ修理をすればいいからね~。
「ここだよ~」
屋根裏の入り口前まで案内して、妖精魔法で屋根の隠し扉を開く。あたしはあんまり意識してなかったけど、扉の大きさは人がギリギリ入るような大きさだから、萌黄先輩が入るのはちょっと大変そう~。
先に入った茜は、少し歩いてから足の裏を見てる。埃っぽいから、猫の足跡が点々とついてるのが目立つよ~。
「待ってて、入る前に着替えるから」
萌黄先輩は装備を変更して、汚れても良い服に着替えた~。ゲーム上の服だから汚れてもすぐに綺麗になるんだけど、気持ち的な問題だからね~。あたしも汚れるのは嫌だからよくわかるよ~。
作業用とまではいかないけど、安くて分厚い作業用の服を着た萌黄先輩が屋根裏に入る。萌黄先輩は平均的な身長だと思うけど、狭そうな感じで屈みながら入り込んだよ~。
机や棚に案内するまでもなく、既に茜が魔法で修理を開始している。萌黄先輩は、棚にある小物をストレージに収納しているから、あたしもそっちをお手伝い~。妖精専用のストレージ[妖精の宝箱]も活用して、どんどんいれていくよ~。
全部入れ終わって下に戻ろうって段階で、床に敷いてある敷物が気になった。ここだけ敷物が不自然に使い込まれている気がする。
敷物をぺらりとめくったら、1枚だけ何か紙が入っていた。ボロボロだから拾い上げられないな~。
「アカネ~、これ修理して~」
「はーい」
既に外の屋根の上に出ていた茜を呼び戻して、紙を修理してもらう。修理中に敷物全体をめくってみたけど、他に隠されてるものはなかった~。
「おわったよー。数字が並んでるだけだね」
修理した紙をアカネが猫の手で差し出す。ペラペラの小さな紙で、そこには数字だけが何個も並んでいるだけで、他にはなにもなさそう~。
「ありがと~。とりあえず持っていこう~」
この紙もストレージに収納して、外に出る。屋根では萌黄先輩が茜を待っていて、外に出た茜を拾い上げたら、地上へ滑空で降りていった。
あたしも下に降りて萌黄先輩に追いつき、並んで兵士の詰所に入る。2階が作業の中心になっているので、そのまま階段をくぐって上に移動した。
「これ、上にあったやつだよ~」
2階の書類置き場に使っている机とはとは別の机に、屋根裏で見つけたものを並べていく。階段を登ってきた萌黄先輩や茜も、あたしが並べている場所に同じようにストレージから出している。
「何か気になるものはありました?」
並べている萌黄先輩に、黄里先輩が他の書類を読みつつ話しかける。
「最後に出てきたのは気になるかな。ね、チャコちゃん?」
「この紙だけ隠されてたんだよ~」
数字だけが書かれた紙を机から拾い上げて黄里先輩に見せる。このゲームで重要なものって、だいたい7つなんだけど、もっとたくさん数字が書かれているんだよね~。
黄里先輩はあたしから紙を受け取って、しばらく眺めたあと机に戻す。
「なんだろう、暗号のキーワードかな?」
「それっぽいよね。もしかしたら、持ってきた資料に謎があるのかも?」
萌黄先輩は本や資料の束を拾い上げて眺める。
「しっかり見るのなら、持ってきた資料を全部先に修理しますね」
机に茜が飛び上がって、資料に手を置く。移動させたらバラバラになりそうな物だけ屋根裏で修理したから、形だけ整って残っている本は修理せずにそのまま持ってきた。現状だと表紙を開いたとたんに壊れそうなんだよね~。
「お願いできるかな?」
「はーい」
本に乗せた片手を挙げて茜が返事をする。その本には、埃で汚れた肉球がしっかり足跡をつけている。これも修理したら消えるのかな~?
猫は足の裏が汚れたらぺろぺろと舐めて綺麗にします。茜も知っていますが、それをするかどうか悩んでいます。猫の真似をしたいが、埃で汚れた足の裏を舐めるのに抵抗があって葛藤しています。




