『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』258
~~~チャコ~~~
「初期時代から方針を変えたはず。プレイヤーが流入したから、異世界を認識できたかと」
「あ~、プレイヤーは転生場所のこと知ってるからね~」
修理されて積み重なった本の上に座って話を聞く。みんなみたいにちょうどいい椅子がないから、この高さがちょうどいいんだよね~。
「それって、プレイヤーから話を聞いて異世界を認識したことになるんじゃないかしら? 杖からの情報で異世界を知った話と、少し違う気がするのですが」
「予想ですが、記憶が混線したんじゃないかと思います」
そう話す蒼奈は、アイテムボックスから本を取り出す。何回か見たことあるけど、詳細は知らない本だ~。
「これは、アカネが持ってきた魔法の本です。試したことはないですが、おそらく魔石を除去する呪文が書かれています」
魔法の本を、私が座っている本の横に並べる。今座っている本は、商業ギルドの記録用だから表紙の作りが雑というか簡素なんだけど、取り出した魔法の本は革表紙の丁寧に作られた本だよ~。
「アカネがこの魔法をかけられた先で入手した能力、ソウルリンクは、機能的にはテキストによる文字情報の伝達です。アカネがそれを実現した方法は私たちの名前が書かれた光っている何かを接触させる方法でした。名称で考えれば、その何かとはソウル――魂ですよね。魂同士を直接接することで伝えられるものが、文字情報だけとは思えません」
現実の私たちの魂がそこにあるわけじゃないから、ここで茜が見た魂は、キャラクターのデータの一部だよね~。
「この過程で文字以外の情報が相手に伝わる可能性。例えばキャラクター作成の街が、映像によって相手に伝わる可能性もあるかもしれません。アカネは僕らの魂を繋げましたが、NPCとは繋いでいません。プレイヤーがNPCと接続した場合、文字以外の情報が伝わっても不思議ではありません」
「だから初期時代以降に異世界を認識したってことね。杖はどう関係するのかしら?」
「アカネに謎の空間を観測してもらったのですが、地上より下にある場所でした。龍が地下から魔力を引き上げる行動と、地下にある魂の保管場所。恐らく何らかの関係があると思います。王笏が地下にある魂の保管場所から魔力を引き上げたとしたら、プレイヤーとNPCの間に魂の混線が起こり情報が流れる可能性が出てくるかと」
プルトさんの魂にプレイヤーの魂がくっついて情報が流れてきたのか~。それなら、異世界を見たって思ってもおかしくないのかも~?
「なるほどねー。あと、少し気になったんだけどいいかな? ネプチュン王国でプルトさんが封印地に攻撃したよね? 龍の魔玉が地下から引き上げる要なのに、なんで攻撃したのかな?」
そういえば、地下の魔力を引き上げるのに龍の魔玉を使ってるんだった。壊したら意味がないよね~?
「攻撃の意図が何かによるっすね。魔玉を破壊するのが目的だとわからないっすが、魔玉まで穴を貫通させて、魔玉そのものを手に入れるのなら理解できるっす。戦争時代の龍は会話ができなくなるほど狂ってるっすから、精神の抵抗も少なく魔玉の権限を奪い取るのも容易じゃないっすかね。膨大な魔力が手に入るのなら、龍が狂ってるタイミングが一番いいっすよ」
人から魔石を抜きとる魔法が完成していて、さらに転生する魔法も完成している。あとは、転生先の場所が確定できれば、元の世界に戻る準備はできていたんだよね~。
転生魔法に必要な魔力が自由に使えるように、龍の魔玉を手に入れたかったのかもしれないな~。
「帰りたい気持ちはわからなくもないけど、誘拐や略奪は賛同できないよ」
修理する本をぱしぱし叩きながら、茜がつぶやく。それはそうだよね~。
「戦争もそうだよね~。なんか、物騒な街だよ~」
戦争時代と廃墟時代の300年の間に、プルト王国が戦争で各国と争う。王都と比べたら小さなこの街が、どうやって7つの国と戦うのかわからないけど、最終的に勝っちゃうんだよね~。
戦争時代で行われている戦争は、魔力病を解消するのが主目的のようで、ある意味で人を死なせないための戦争なんだけど~、この街が引き起こした戦争って、何が目的なんだろ~?
「そろそろ、別の場所に移動しましょうか。アカネさんの言っていた兵士が出入りしていた建物や、商業ギルド裏の大きな家も探索したほうがよろしいのでは?」
「そうだな。商取引以外の資料が見つかれば、それだけ考察も進むからな」
移動準備のため、ここにある資料は全部蒼奈がアイテムボックスに入れて持ち運ぶから、本から降りて邪魔をしないようにする。
商業ギルドの隣にある兵士たちの建物に移動して、それぞれ探索開始~。
あたしは資料探しの前に、最初に妖精眼を使って空間の歪みがないかどうかをチェックがお仕事だよ~。これは、あたしにしかできないから頑張らないと~。
この家は、高さ3階の建物で、木造だけど全体的には白に塗られた土壁が目立つかな~。
1階を最初に探索。机、椅子、棚、木箱などは見かけるけれど、飾り気が無さそうだから生活空間じゃなさそうだね~。長椅子が多めだし、待機する場所かも~。
入り口から入ってすぐの部屋は広めで、ここに兵士が沢山いたんじゃないかな~?
奥にある扉をくぐると右に向けて廊下が伸びていて、上へあがる階段が扉の正面から右上に登るようにある。階段を上らずに廊下を右にすすむと、壁沿いに木箱が並んでいる広めの部屋があった。
木箱の傷の具合から、武器とかが入っていたのかな? 割とざっくりとした管理していたんだね~。地面には革の破片みたいなのもあるから、防具もありそう。保管庫か更衣室かな~?
2階に移動。ここには紙の資料がいくつかあるようで、みんなが探索している最中だよ~。棚の上とか部屋の隅とかを妖精眼で確認しても、おかしな場所はなさそう~。
他にも部屋があるから、それぞれ確認したけど異常はなかった~。
3階に移動。2階が仕事部屋だとすると、ここは生活空間? 壊れたベッドが幾つも並んでる。泊りで仕事してた人がいるのかもね~。テーブルの上には埃をかぶったボードゲームがある。駒の形状がチェスっぽいな~。この世界独自のボードゲームもあるけど、現実にあるボードゲームを普通に取り入れているから、プレイヤーも遊びやすいし、NPCとも対戦しやすいんだよね~。あたしはチェスのルール知らないけど~。
ぐるぐる見て回って、特に妖精眼に反応するような変化はなかった。探索を終了してみんなと合流しようかな~ってところで、冷たい風を感じた~。
どこから風が吹いているんだろうと飛び回っていると、天井に隙間があるのを確認した。屋根裏からか~。商業ギルドでも屋根裏は探索したけれど、物置に使われていた痕跡があるだけで、特に何もなかったな~。
屋根への入り口は、押し入れや倉庫部屋の天井に隠されていて、普通に暮らしている場所からは見えないようになっていることが多い。そういった場所を中心に天井を念入りに探してみたれど、それらしい入り口はなかった。隙間がある場所に戻って押し上げてみたけど、動く雰囲気はない。
……外からなら見えるかな~? 屋根裏を換気するための換気口があるかもしれない。窓から外に出て、屋根裏に該当する場所を飛んで見渡す。木製で作られた四角い換気口が屋根のすぐ下にあった~。
近寄ると20センチくらいの正方形の換気口で、何枚かの横長の板が、斜め下に向けて折り重なるよう縦積みに並んでいる。このままじゃ中が見えないから、ちょっと壊すか~。
「[妖精の手伝い]」
見えない手を使い、換気口を壊していく。筋力は一般的な人と変わらないけど、古くなった木材くらいなら、素手で行けるんじゃないかな~?
ミシミシと木が抵抗している音が聞えた後で、バキンと大きな音が鳴って換気口が開く。完全に開いたわけじゃないけど、あたしが入る程度には隙間が開いた。さっそく入ってみよ~。
今のところ何も問題はないのですが、Windows updateでパソコンが起動しなくなったというニュースを聞くたびに怖く感じます。選択できるならアップデートしないのですが、勝手に入るとどうしようもないですね。




