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あちーぶ!  作者: キル
322/423

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』252

~~~アカネ~~~


 蜜柑先輩に続いて教会に入ると、祭壇前に萌黄先輩、紫帆先輩、茶子が集まっていた。なんでここに居るの?


「シホ、どうやって来たんだよ? あー、いや。あれか、この街にもダンジョンがあったのか?」


 ダンジョンがあれば妖精の国から移動もあり得る。


「ダンジョンはないわね。むしろ、どうやって繋がったのかわからない点が多いわ」


 私たちも祭壇まで移動する。途中で私を拾い上げた蒼奈と一緒に、茶子と軽く挨拶をしてから先輩たちを見る。


「蜜柑ちゃんたちのルートは予定通りだろうし、私たちの状況を話した方がいいね」


 萌黄先輩が話を引き継いで、これまでの経緯を説明してくれた。内容は単純だけど、また妖精の国の不思議が増えた。


「あの足跡は先輩たちだったのですね」


「上手くすれば、この街へのショートカットに使えるってことか」


「私が見たときは石の板が無かったから、戦争時代に使えるかはわからないですよ」


「あぁ、確かに。あれが起動する条件が王笏全て差し込むってことなら、他の時代は移動できないのか」


 この時代に来て、石の板が7つ立ち上がってる姿を初めて見た。あれが妖精の国への出入口なら、戦争時代はまだそれが出来るとは思えない。


「じゃ~、戦争時代に王笏を全部はめれば、妖精の国からここに来れるの~?」


「そうなるはず。けど、やめた方がいい気がする」


「そうだな、やめた方がいいのにはうちも賛成だ」


 蒼奈と蜜柑先輩が、王笏での開通には乗り気じゃなさそう。私の足の裏の汚れをふき取りながら、蒼奈がそのまま話を続ける。


「妖精の国の役割は、封印地から王都の地下にある龍本体への魔力輸送と、その途中にあるダンジョンの魔力の供給と推測しています。魔力の流れがドーナツ状に循環しているから安定しているのでしょう。王笏の欠片がそのドーナツ状の循環に穴をあける役割の場合、バランスが崩れてしまうかもしれません」


「むしろ、この場所が魔力をむしり取って妖精の国が崩壊した可能性もあるな。シホたちがゲートをくぐった回数と封印地の配置は一致している。うちらの拠点は土龍に属するから、木、火、金、水ときて5回目のゲートで中央に到達だ。これは、各妖精の国を貫通するように通路が作られたと言って良いんじゃないか?」


 何が貫通しているかって言ったら、王笏しかないよね。魔力を通す役割を持ったアイテムの王笏が正しく魔力を通すのであれば、妖精の国から魔力を吸収してこの場所に集めていてもおかしくない。


「ここに魔力を集めて、何をする予定だったのかな?」


「それに関しては、若干ややこしいっすね。アカネが持ってきた本が正しいとするなら、この世界の王笏や龍は、前時代の模倣に近いっす。となると、この魔力を集める装置は、前時代にここへ魔力を集めていた名残じゃないすかね。今の時代にどれほど役目があるかはわからないっす」


「けど、結果として魔力を集め終わった状態がこの廃墟時代よね? 役目というより、この時代のこの状況が、王笏をはめた遺跡の影響じゃないのかしら?」


「魔力を集めると、廃墟になるの~?」


「廃墟にしているのは●●●ですよね。魔力を集めるのとはまた別でしょうか?」


 うーん。魔力を集める結果が、廃墟――いや、そうか。魔力を集めたから廃墟なんだ。


「魔力って、生物に限らずどの物質にもありますよね? それが根こそぎ集められたら、廃墟になりませんか?」


 魔力で作られたこの世界、魔力が不足したらまともに存在することも怪しくなってくる。物質のようなものは消滅させるのが大変だけれど、生物みたいに魔力が無くなると魔力病になって命を落とし、肉体が消えて魔石に変わるような相手であれば、魔力を集めやすいんじゃないだろうか。あと、ねこそぎって言葉良いよね。


「廃墟にする手段が、破壊じゃなくて吸収ってことかな?」


「地下にある遺跡が魔力を集めるのなら、世界を廃墟にした●●●とは、似たような性質を持つということかしら?」


「似たような、というか。同じ気がします。むしろ、王笏を設置したことで●●●が誕生したのではないでしょうか」


 自然に●●●が生まれたんじゃなければ、きっかけは当然あるよね。世界が変わるような魔力の流れが地下の遺跡で行われていたとしたら、発生地点の候補に入るんじゃないかな?


「そういえば、黄里ちゃんと蒼奈ちゃんと一緒にここに転送されたときは、この街を中心に黒い影が迫ってたよね」


「街の中央広場、つまりあの遺跡の真上に収束する感じで空が円形に閉じていましたね。あの現象に遺跡や妖精の国が関係あるのかもしれません」


 ふむふむと頷く萌黄先輩と黄里先輩を見てから、私を抱えてる蒼奈を見上げる。蒼奈の意見はどうだろうと思ったけど、思ったよりも考え込んでいるみたいだ。


「アオナは、ちょっと違うと思う?」


「いや、納得はできる。ただ、地上だけではなく妖精の国からも魔力を吸収した割には、僕らは地面に潜っただけで回避できたのが少しね。地下生活をしていたミールトさんたちも、それで回避していたから、何を対象にしてたんだろうって」


 あらゆるところから魔力を吸収するのであれば、地上だけではなく地下に潜っていたとしても吸収することが可能のはずだよね。

 前に、●●●が太陽なんじゃないかって考えたけど、完全な正解じゃなかった。太陽であれば地下に潜れば助かるのは納得できるけど、地下のの遺跡に設置した王笏を通して妖精の国の魔力が吸収されているのに、地下の人を発見できないことはあるのかな?


「妖精の国って、地下にあるの~?」


「この世界では恐らく異空間に存在するんじゃないか? 規模や距離感からすると、地下を掘っても妖精の国が出てくることはないだろう。とはいえ、前の時代の記述だと地下を通過させたような表現だから、妖精の国が別空間だとしても配置的には地下に該当すると思うぞ」


 そうなんだよね。前の時代に書かれた内容からイメージできる妖精の国は、魔力を届けるパイプライン、あるいは貯水池のような場所で、別空間と言うよりは地下で接続しているようなイメージがある。


「妖精の国が地下かどうかは別として、●●●が地上の魔力を吸い上げる行動の対象に、妖精の国は含まれてないと思いますわ。見てきたらわかりますけど、今の妖精の国には何もないもの。魔力があれば地上のように少しでも生物が再生されそうですけど、そんな様子はありませんでしたわ」


「全て魔力を吐き出した後は、何もないってことか?」


「ええ。ゲートを使うのもチャコさんが魔力を供給しないと起動しないほど何もない状態ですわね。言い方は悪いですけど、魔力を引き出した後、妖精の国は廃棄されたのではないかしら? ゲートも開くことが出来ないから、魔力を通過させることも無理だと思うのよね」


「妖精の国の各ゲートは、ひとつも起動していないのですよね?」


 蒼奈が妖精の国ルートで来た3人に確認をしたら、全員から「起動していない」と返事が返ってきた。


「それだと、ダンジョンについてひとつ推測できることがあります。僕らの拠点は稼働していますし、萌黄先輩や黄里先輩と一緒にこの時代のダンジョンへ入ったときも、ダンジョンは稼働していました。妖精の国から魔力を供給が絶たれたのなら、本来は稼働を止めているはずです。おそらくですが、別の時代から供給を受けていると推測できます」


「別の時代?」


「はい。ダンジョンは時代移動ができる特殊な空間ですから、魔力供給もひとつの時代だけには頼っていないのでしょう」


 各時代をダンジョンが橋渡ししているから、魔力が共有されていても変じゃないのか。


「どこから魔力が供給されているのであれ、稼働している事実は変わりません。●●●がどのような状況でも魔力を吸収する仕組みがあるのなら、地上に露出しているダンジョンは最優先で吸収される対象でしょう。しかし、ダンジョンは依然として存在しています。王笏でつなげられた妖精の国と違って、ゲートのように他の空間と断絶した場合は対象には含められないのでしょう」


「だとすると、●●●は直接繋がりを持たない対象からは魔力を引き込むことができないってことか。妖精の国は王笏の欠片という橋渡しとなる存在があったので消滅し、その後ゲートの魔力が閉じたから対象外。別空間のダンジョンも対象外。地面に潜った人たちも外と隔離されているから吸収を逃れたと」


「能力に穴があるというか、対処方法がわかりやすいのが良いね」


「全ての生物を問答無用に倒すような万能さがなくて助かるわね」


「万能じゃなくても、相手に出来ないレベルだよね~?」


「うん。だから、この街へ調べに来たんだ」


 蒼奈は、ストレージから1冊の本を取り出した。

 祭壇前で集まって話し合ってるだけになってしまいました。普通の猫なら飽きるでしょうが、茜は真面目に聞いています。

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