『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』251
転送装置の設置が終わったエルさんは、ギンガたちのインゴットを埋める場所へ案内してくれる。街の中止部から離れて、街と封印地を区切っていたトンネル状の土壁を潜り抜けると、通ってきた土壁が閉じた。
『転送装置を使ったら、私がこちらから開けますね』
街と封印地を区切る土壁の出入口は、エルさんが操作してくれるらしい。ここも魔力で固められているのかと思ったけど、そうじゃないんだって。壁の側面は発掘しやすいように、ほとんどが普通に掘れるような状態にしてあるみたい。
まだ土の中にある街の残骸も間違って削っちゃうことがあるんじゃないかと思ったけれど魔法で位置を調べてから掘り進めるようなので、土とは完全に区別がついているんだって!
『このあたりが良いんじゃないでしょうか』
インゴットを埋める場所をエルさんに指定してもらう。封印地より少しだけ離れた場所だった。
少し硬い地面を何とか掘り抜いて、インゴットを適当な等間隔で埋めていく。
「ギンガちゃんは、装備してる斧や鎧を入れてみたら? ミスリルになるのは確定でしょ?」
インゴットを埋めるってことばっかり気になってたけど、ギンガの金属系の装備もそのまま入れることは出来るよね!
一時的に装備全体が弱くなるけど、戦闘メインで行動しないし大丈夫じゃないかな?
「そうだね! エルさん、ギンガの装備をここに入れていいですか?」
『大丈夫ですよ。木製の持ち手やベルト部分がどうなるかは私にもわかりませんけど』
「金属の部分が変化すればいいから大丈夫です!」
斧の柄は木製だし鎧をつなぎ止める部分はベルトだから、土に埋まったままだと腐ってなくなっちゃうかもしれない。けど、重要なのは金属部分だからね!
装備を全部外し、斧や鎧を地面に並べる。それぞれ接触させずに距離を取った方がいいそうなので、埋める場所を決めるために地面に線を引いて、決定したら掘り続ける。数が多いから掘る範囲が広い!
「ミクも、その刀入れないの? マアズ産なら変化するんじゃない?」
黄金音ちゃんが、未黒先輩のミスリル刀を見る。別の場所でミスリルになった刀だから、オリハルコンになるかも!
「そうなんよな。試す価値はあるんよな。エルさん、わたしも入れていいんよ?」
『はい。ただ、どうなるかはわかりませんよ?』
埋めた素材がミスリルに変化するのは、エルさんたち龍が自分で体験しているからわかりきった変化だけれど、オリハルコンになるかどうかは未知の状態! 龍同士の交流もなかったし、今までに知る方法は無いんだよね!
「許可をもらえるだけで助かるんよ」
ミク先輩も、新たに刀用の穴を掘りだす。ギンガの装備よりは掘る範囲が広くないから、掘りやすそうだ!
ザクザクと地面を掘りながら、ギンガを手伝ってくれる黄金音ちゃんに「コガネちゃんは大丈夫?」と聞いてみたら「ミスリルに変えられる杖は持ってない」んだって。そういわれてみれば、木製部分が沢山使われているような杖だった!
先に掘り始めたミク先輩が刀を埋め終わってから、ギンガを手伝ってくれた。そのかいあってギンガも無事に埋め終わり、エルさんにお礼とお別れの挨拶をした。
梯子を上ってから回収し、外に出て入り口を丁寧にふさいだら、転送装置を外に設置するためエルさんの指示があった方向へ向けて移動を開始!
『コディアリ方面に設置してもらいますが、300年後も大きく地形の変化がなかった場所の情報を受け取ったので、当初の予定よりもより細かな位置になります』
戦争時代のエルさんは、転送装置の設置に最適な場所を観測していたみたいで、設置してほしい位置の詳細データを初期時代のエルさんに伝えたらしい。自分同士で情報を共有するって、どんな気持ちなんだろう?
お話をしながら移動をし続けると、思ってたより早く目的地近辺の場所に到着した。森から抜け出して数分程度の位置で、建物みたいなものは見つからない。目印になりそうなものがないから、場所としてはわかりにくいかも?
『そちらに行きますね』
ギンガのイヤリングを通して、球体のエルさんが登場する。そのまま周辺をふわふわと漂って、地形の状況を見て回っている。
しばらくすると、光って飛ぶエルさんにつられたのか、動物型の魔物が4体やってきたので、予備の斧を取り出して応戦する。耳が小さくて尻尾が大きく平らな、機敏なタヌキっぽい魔物だ。名前はよくわからない。
好戦的かと思ったら、数回斧で攻撃したところで逃げ出すほどに憶病だった。未黒先輩は、刀ではなく棒を持って戦ってる。相手の攻撃を回避することなく胴体で受けているけれど、これは事前に「進化に必要な戦い方」と聞いていたから、苦戦しているわけじゃないんだって!
4体とも全部逃げたけど、追いかけなかった。ギンガが動いたらイヤリングを起点にここに来ているエルさんの行動範囲もつられて変わっちゃうからね! そうなると、ギンガをひとり残して追撃するわけにもいかないから、逃げた魔物はそのまま見送り。また機会があれば最後まで戦おう!
その後は離れた位置からこちらを覗いてくる動物を見たけれど、魔物が現れることはなかった。割と平和な場所なのかも!
『お待たせしました、位置が確定したのでお願いします』
暇だったので3人でお菓子を食べながら過ごしていると、エルさんから声がかかった。移動して場所の確認をしたけど、周囲の地形と何が違うのかはよくわからない。見えない地下とかに影響があるのかもね!
「穴は掘った方が良いんよ?」
『いいえ、自然に沈むので大丈夫です。この場所で、この方向でお願いします』
エルさんの指示で、未黒先輩がストレージから何度も出し入れする。持ち上げて移動させるには重たすぎるけれど、ストレージから出し入れすれば細かい位置調整はできるからね!
『そこです。では、設置しますね。――!』
今回も、音も無く一瞬光っただけで終わった。近くにいた動物が驚いてどこかに走っていったのが違うくらいかな。驚かせてごめんね!
転送装置の雰囲気は全然かわらないから、設置されたかどうかは見た目で判断できないのはさっきと同じだ!
「もう転送可能なのですか?」
『はい。上に乗れる人数であればまとめて転送可能です』
3人ならある程度余裕を持って乗ることができるから、まとめて転送してもらうことにした。くっついて乗るのなら5~6人は行けるかも!
「手をつないだほうが良いの?」
『大丈夫ですよ、上に乗った人を全員転送します』
「この転送装置から腕や荷物が外に出てたらどうなるんよ?」
未黒先輩が、転送装置の外に腕だけを伸ばして飛び出させる。
『問題なく転送できますよ。石板に接触しているもの全てを転送させるのではなく、私が転送させたい対象を転送する仕組みですから。石板の上に立っていても、私が許可しない限り転送はされませんよ』
「あ、転送装置ってそういう仕組みなんですね」
『この転送装置に限ってはですね。設定によっては私が判断しなくても転送できるようになりますよ。人が作る転送装置は、自動で対象を判断するシステムが多いはずです』
長生きの龍だから、自分で管理が出来るんみたい! けど、これだと廃墟時代はエルさんが居なかったら稼働していなさそう。
「転送先の安全が確保されているのは良いよね。飛んだ先が土砂で埋まってたら困るから」
そういわれてみればそうかも! 廃墟時代の地下の街がどうなってるかわからないから、動いてない方がいいのか!
『それじゃあ、転送しますね』
エルさんの言葉と共に少しだけ浮遊感を感じてから、一瞬で目の前の景色が変化した。
目の前の景色は草原から切り替わって、廃墟の街の中に戻ってきてた!
「すごい! リバ石みたいにすぐに移動した!」
「ほんとにね。こういった魔法覚えられないかな」
「他の龍の場所でも欲しくなるんよ」
転送が無事にできるようになったから、エルさんの場所に来るのがすごく楽になった! 今までは、穴を掘らないと来れないから大変だったんだよね!
「それじゃあ、もう一度転送で元に戻るんよ」
「そうだね。さすがに位置は確定しないと」
『わかりました。では、転送させるのでそのままでお願いします』
この封印地から外に出るほうが、近くの街に移動するのは簡単なんだけど、外に設置した転送装置の位置がどこにあるのかよくわかっていない。だから、今から戻って方位磁針とかで調べながら位置を調べて、戦争時代でも間違えずに行けるようにする。目印になる場所が見つかるといいな!
転送に関係する魔法は43話の時点でアクアから[ワープポータル]と聞いていますが、あの場面でも言われていた通り、MP消費量が多く距離により消費量が増えます。蒼奈が使えるかもしれませんが、MP消費量から現状は無理です。




