『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』248
同じ手順を繰り返したけど移動先の光景に変化はなく、手順もかわらないまま中央のゲートにまた到着した~。これで5回目。7回まであと少し~……あれ、7回くぐったら妖精の国が8つになるのかな? 最初の場所に戻るループだとわかりやすいよね~。
「ひらきまーす」
今までと同じように【妖精の隠れ家】発動して中に入ると、今度は全く別の場所にたどり着いた。暗いのはそうなんだけど、ドーム状の部屋に到着したよ~。
「どこだろうね、ここ」
今までは中央の7つのゲートをくぐると、1つだけゲートが現れる真っ暗な空間に出ていたんだけど、今回は入った時と同じように、7つのゲートが円のように並んでいる場所に出てきたよ~。あと、ゲートの円の中に、何か石の板があるのが他と違う。
「一度戻って入りなおしてみるね~」
あたしだけ出てきたゲートに戻って、隣のゲートに入る。出てきた場所はドームの部屋で、ゲートは隣のゲートから出てきた。7つのゲートがそれぞれここに繋がってるんだと思う。
「ここは妖精の国でしょうか?」
中央の7つのゲートの外周を回って調べる紫帆先輩。萌黄先輩は中央の石に手を触れたけれど、何も変化は起きなかった~。
「どうだろう。他に続く通路はあるみたいだけど」
ドームの部屋には、それぞれ通路の入り口が何か所かある。案内のような看板もないので、正解の道はわからないな~。
「妖精の国に洞窟って見当たらなかったよね~」
知ってる妖精の国が2か所だけなので他の5か所がどうなのかはわからないけれど、さっきまでの暗い空間が妖精の国だとしたら、妖精の国はどこも広い空間なんじゃないかな~?
「探索しようか。妖精の国に戻ってもゲートしか目標となる物がないからね」
妖精の国で出来ることはゲートを探して、その中に入るくらいしかやることがないからね~。それなら、変化のある今の状態から探索したほうが何か見つかるかもしれないよ~。
隊列は探索できるあたしが誘導しつつ、紫帆先輩が前で、萌黄先輩が後ろ。一応【妖精眼】を使いながら注意して進むよ~。
適当な通路を選択して進む。通路は人が作ったのかわからないけど人工的っぽいな~。壁や床も汚れているけれど、丁寧に整えられているんだよね~。
いくつかの通路や小部屋を通過するうちに、木箱が捨ててある部屋にたどり着いた~。
「物はないですけど、人が扱うサイズよね」
「チャコちゃんから聞く妖精は小さそうだから、この箱を使うことはなさそうだね」
木箱の大きさから、ここが妖精の国じゃなさそうに思えるよ~。高確率で外に出たんだろうね~。
他にも何か置いてある部屋があるんじゃないかと考えて移動し続けたら、梯子のある部屋にたどり着いた。金属でできた梯子は丈夫そうだから、多分まだ使えるんじゃないかな~?
「ちょっとこのまま上まで飛んでみるね~」
梯子を使わずに移動できるので、[コンティニュアルライト]をかけられた棒をもって上へと移動した。
梯子は途中で壊れていることも無く一番上まで移動できた。上は横に逸れる足場があり、その上に木でできた蓋がある。蓋をグッと押してみるけれど、重いのか妖精の腕力では開けられなかった~。
チャコ:梯子は上まで続いてて、上に出口っぽい蓋があるよ~。重くて開けられないけど~。
シホ:今から向かいますね。明かりをよろしく。
梯子の上から光を灯して明るくしつつ、ふたりを待つ。先に紫帆先輩が到着したので、木の蓋を押し開けてもらった~。その時に、ゴロゴロと大きな音が鳴ったので、何か物が上に乗っていたんじゃないかな~?
蓋が開いて、外の光が少し入ってきたところで萌黄先輩が梯子を上り切った。紫帆先輩は先に上がって外の様子を見てもらっているよ~。
「どこかの店かしら? 同じような農具が並んでいるのよね」
開いた蓋から顔を出すと、周囲に並んでいる樽があり、目の前には転がっている樽が見えた。樽がひとつ上に乗っかっていたのか~。
周囲にある樽の上まで飛び上がると、壁際に並べられた農具が並んでいるのが見えた。武器屋っぽくはないな~。
「外に出てみる? お店なら看板があるんじゃないかな」
下から出てきた萌黄先輩は、服についた汚れを払いながら提案する。人の気配もなさそうだし、その方がいいかもね~。
出口を探して、鍵のかかっていない扉を開ける。そこは、普通の街中だった。この時代の街だから、当然廃墟なんだけどね~。
「農林ギルドだって」
出てきた建物に張り付けられた看板を見て萌黄先輩が読み上げる。ギルドの地下の秘密の入り口か~。聞いたことあるかも~。
「散策しましょうか」
そう宣言して先に進む紫帆先輩。目的地がない散策なら、紫帆先輩に先導してもらっても大丈夫だから安心~。
――なぜか建物の中の庭をぐるぐる回ったり、建物内から外に出られなかったりしたけれど、うろついているうちに萌黄先輩がこの場所がどこかわかったみたい。
「ベータの最初にいた街だ! この世界の中央の街だよ」
見覚えのある建物があるんだって。あたしはそこまでベータを真剣にやってなかったからあんまり覚えがないんだよね~。主要な建物とか有名な場所を見ただけだから、街全体は知らないんだ~。
「それでは、あの開かずの扉も入れるのね?」
「うん。中央付近まで移動したら道がわかるよ。ちょっとまってて」
それから萌黄先輩は上に飛んで、地形を確認してから戻ってきた。中央広場の方向を確かめたそうだから、そこに向かって進んでいく。
中央広場に近づくにつれて、見覚えのある建物が増えてきた。このあたりなら、あたしでも案内が出来そう~。
途中から中央広場に寄らず、開かずの扉まで直接向かった。中は教会って聞いてるから、どんなのか楽しみだったんだよね~。
萌黄先輩の案内で、見たことのある開かずの扉の建物前まで移動した。萌黄先輩が扉に手をかけて開くと、目の前には椅子が並び、その先に教会らしさがある祭壇がみえた~。立派な礼拝堂って感じだよ~。
「おお~、この世界で教会って始めて見たよ~」
「そうね、宗教関係って聞かないものね。せいぜい龍の民間信仰くらいかしら?」
椅子を飛び越えて、祭壇まで一直線に飛ぶ。周辺に誰の気配もないから、気にせず移動。綺麗な金色の祭壇は、金箔でも張り付けられてるのかな? 見た目がすごくきれいで良いね~。
「既に本は持ち出した後なのよね?」
「本棚とかはそうだね。地下のも必要なのは集めたはずだよ」
祭壇の上に降りたけど、思ってた以上に埃っぽい。この金色のお皿は洗えば汚れが落ちるのかな~?
「おふたりは、この教会って何のためにあると思いますか?」
祭壇に立てかけてある棒のような道具を手に取りながら、紫帆先輩が質問をしてきた。教会のある理由か~。
「宗教なんだから、神様へのお祈りじゃないの~?」
「ええ。一般的にはそうなのですけど、この世界って他に教会はないのよね? 主に龍への祈りは見受けられるのですけど、教会を作るほど熱心ではないというか、空とか山に向かってお祈りはしても、偶像崇拝のようなことはしてませんよね。それが古くから伝わる信仰だとしたら、この教会は新興宗教的な立ち位置だと思うのよね」
視線を上向きにした紫帆先輩の目線の先には、男性や女性の彫り物がいくつもある。信仰の対象なのかはわからないけど、昔の偉人や聖人として彫られているような気がするよ~。
「歴史の授業とか聞くと、宗教って個性が強いほど外に広がる力が強いんじゃないかしら? そうであれば、龍の信仰はここの信仰に取り込まれてもおかしくはないはずです。もちろん、新興宗教だから伝道する時間が足りなくて、この街の中だけに留まって信仰されてたと考えてもいいのですけど、それにしては古くからあるようなたたずまいをしてるのよね。他の地域へ伝える時間は十分あったと思うのよ」
「ここの地下って、魔石の無い人をつくる施設でしょ? 信仰する条件が、魔石が無い人が条件じゃないのかな? それなら、条件が厳しいから広がらなかったとか」
「それだと、この宗教の始まりはどうなっていたのでしょう? 魔石の無い人が自然に発生したのかしら?」
う~ん、よくわからないな~。けど、教会がこの街にしか存在しないのは不思議だよね~。
「前に来たときに読んだ本には、聖女を中心とした逸話がまとめられてたかな。たぶんだけど、宗教の始まりは聖女の活躍を基にしているんだと思う。魔石が条件かはわからないけど、アカネちゃんの報告では街の人に魔石はないみたいだね」
「アカネさんが中央の街に移動したのが、戦争時代の星暦1000年。聖女が活躍したのが950年ごろ。聖女の行動を称えるための教会を整えて街の人に礼拝を浸透させるのは10年あれば出来そうですけど、さらに魔石の無い人であふれる街を作るのに50年は、ちょっと短い気がするのよね」
「魔石のない人を生み出すのが条件厳しいよね。あの魔法って失敗するんだよね」
「ええ。信仰のために魔法を掛けられて、それで親族が亡くなることがあったら、誰もその宗教を信仰することはないと思うわ。魔石と宗教が関係ないのならわかりますけど、それならなぜ外に広まらなかったのかしら。当時の聖女への信頼は厚かったようですし、もっと広まってもおかしくないのよね」
祭壇にある物を動かしながら話を続ける。今のところは隠されたお宝っぽいものはなさそうだね~。
3人で祭壇をいろいろ漁りまわっていると、棚に隠しスペースが作れそうな空間を見つけたので、中を何とかして開けてみた~。そこには、1冊の本が見つかったよ~。
「なんだろ。厳重に隠されてたよね」
「かなり古いので、ここで開くのは難しそうですね」
表紙を少しめくるだけでも、ミシッという音が鳴ったので、ちょっと開くのは怖いよね~。 置かれている状態のまま、妖精用のストレージに収納しておいたよ~。
「おーい、なんでここに居るんだ?」
教会の入り口側から、聞き覚えのある声が聞こえた~。振り返ると、蜜柑先輩が立っていたよ~。
「あら、遅かったわね」
紫帆先輩は、最初からここで待っていたという風な余裕のありそうな口調で答えた~。
ベリクの街におけるアクアへの信仰も、どちらかといえば自然神に対する感謝の気持ちのようなものです。「龍が降りてきたかも」という憶測にテンションがあがって浸透したんでしょうね。




