『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』246
~~~チャコ~~~
拠点から廃墟時代に移動~。今回はふたつのグループに分かれてこの時代を調査するんだよね~。あたしは、あたしにしか出来ないことを調べることにするよ~。
他の街へ帰還石へ飛んでいくメンバーを見送ってから、拠点のダンジョン入り口前に移動~。
「先輩~、準備はいいですか~?」
萌黄先輩と紫帆先輩に了解を取ってから、ダンジョン裏側にある妖精の国への入り口部分に手を添える。
「【妖精の隠れ家】」
……開かない。それに、魔法本来の部屋も開かないよ~。
「無理そう?」
「どうかな~。魔法の挙動が変なんだよね~」
本来の【妖精の隠れ家】は、開く場所が空中でも壁でも、どんな場所でも開くことができるんだけど~、今回はそんな雰囲気が少しもないんだよね~。
「妖精の国に何かあったのかもね。開く気配は無いの?」
「う~ん。前に聞いたんだけど、このゲートって何人もの妖精が魔力を込めることで開くんだって~。ひょっとしたら魔力が不足しすぎて開かないのかも~?」
特殊能力に分類されてる【妖精の隠れ家】に、魔力の量を増やして発動ってやったことないんだけど、できるのかな~?
「ちょっと魔力込められるか試してみるよ~」
他の魔法を使うときと同じように、魔力を練り上げる。普段は自分が入る程度の扉が開くイメージだけど、今回はもっと大きく、この入り口の石全体が扉になって開くイメージをしてみる~。
「――【妖精の隠れ家】」
MPがかなり減った~。3~4割は減ったんじゃないかな? けど、その甲斐あって妖精の国に入る部分が光りだした~。
「先に入るわね」
予定通り、近接戦の出来る紫帆先輩が先に中へ入る。続いて萌黄先輩が入り、最後にあたしが入る。
光の扉を越えた先、妖精の国に入って見えた景色は――正確には、見えなかったかな~? 真っ暗な世界だった。先行して入った紫帆先輩の手に魔法の光が灯った棒が握られていたので、それの反射でなんとか見える状態だった~。
わずかな光から見える光景は地面しか見えないんだけど、岩と砂でできた荒野が広がっている姿だった。あれほどあった植物が少しも見当たらない。廃墟時代の光景とよく似ているかも~。
「ここも、●●●の影響があったのかしら」
「そうかもね。でも、この暗闇は●●●とは別物かな。そうじゃなければ、入った瞬間にリスポーンしてるはずだから」
周りを見ても何も見えない、ただただ真っ暗な妖精の国を眺める。妖精の寿命がどれほどなのかはわからないけれど、この状態だと生き残ってるようには思えない。植物や川だって生きていた妖精の国が、これほど壊れてなくなってしまうとは思わなかったよ~。
【魔力感知】を行う。イオの街の妖精の国だと、何か流れのようなものがあったから、手がかりがあるかもしれないからね~。
……ほとんど流れのようなものを感じない。ふわりふわりと、少量の魔力が規則性も無く漂って移動している様子は感じるけれど、水の流れのように一方に向かって進むような強い流れは感じないな~。
「精霊も感じられないわね。闇の精霊が居ると思ったのですけど、魔力が少なすぎて維持できないようね」
「じゃあ、精霊さんに案内してもらうのも無理なのか~」
「いえ、在来の精霊が居ないだけよ。……[――――――]」
紫帆先輩が何か魔法を唱えた。言葉がさっぱり聞こえないので、精霊魔法じゃないかな~?
「ええ、そう。案内できるかしら? うん、助かるわ。――皆さん、闇の精霊を生み出したので、目標があれば案内が可能と言ってますわ」
「精霊って生み出せるんだ?」
「多少の魔力と、周辺に依存先の現象があれば生み出せますわ。ここは闇が多いので、魔力さえあれば闇の精霊を生み出すのは簡単なのよ」
ホツナルさんが言ってた、精霊の存在を維持する方法だね~。あの時は火を灯してから火の精霊を生み出していたけれど、この場所だと闇だらけだから、闇を作りださなくても闇の精霊を簡単に生み出すことができるらしい~。
そして、精霊の感知範囲は自分の依存する対象が届くところまで。今の場合は、真っ暗闇の妖精の国すべてが感知範囲かもしれないよ~。
「さすがに、そこまでの感知範囲は無いわね。それができるのなら、光の精霊が世界全土を感知できてしまうでしょう? 妖精が知ってる範囲は、あくまで自分の居場所だけ。生み出した精霊は周辺を多少広範囲で探索することは可能だけど、見知らぬ場所をいきなり案内することは無理なのよ」
自分の住んでいる場所だけが詳しいって感じなのか~。それはそうだよね~。そうじゃないと精霊魔法が万能すぎるよ~。
「それでは、他のゲートに紹介してもらおうかしら」
紫帆先輩が手を前に差し伸べる。あたしには見えないけれど、精霊が移動しているんだね~。そのまま精霊について歩く紫帆先輩の後ろをついて進んでいくことに~。
「シホちゃんは、この暗闇の中でも闇の精霊が見えるんだね。どう見えるの?」
「感覚的なものですが、暗闇が別の存在として切り離されている感じでしょうか? 暗闇にうっすらと色の違う輪郭が浮かび上がってると思ってもらえたら近いのでしょうね。実際に輪郭はないのですけれど」
精霊の形状も人の姿をしているわけじゃないみたいで、紫帆先輩の感覚では、全体的に空飛ぶスライムなんだって~。それも、精霊ごとに個性があるようで、見ていて飽きないみたい~。ここに居る闇の精霊は、黒いマシュマロが黒い炎をまとっているように見えるっぽいんだけど、それってスライムかな~?
精霊の案内でたどり着いたのは、特徴的な四角い石板。大きさはあたしたちの拠点と比べたら大きいけれど、ダンジョンの入り口としては小ぶり。これを起動するには、やっぱり魔力をかなり使うんだろうな~。
「見覚えはないわね」
「そうだね~」
初期時代の妖精の国で見たゲートとは違う気がする。これが同じものかどうかはわからないけど、あたしたちの拠点から近い入り口のゲートは、フローベールの近くだったはず。あの時は稼働していたけれど、今は触っても何の変化もない。このゲートが閉じてから、かなりの期間が過ぎているのかもしれないよ~。
「ここ以外の妖精の国は、どうなってるのかな?」
「ここと合わせて7か所あるって言ってたわね。確か、他の妖精の国へ移動する専用の入り口があったと聞いていたけれど、案内されていないのよね」
「移動用のゲートがあるって話だったよね~」
「ええ。問題はそれがどこにあるかよね」
ニャットちゃんが、他の妖精の国に行くためにはゲートに入るって話をしていたんだよね~。あの時は目的と違ってたから案内してもらってなかったけれど、教えてもらえばよかったかな~? イオの学校から入ったゲートの先で見た小さなゲートがそれかもしれないけど、通れなかったんだよね~。
闇の精霊に近くにあるゲートを教えてもらいながら進む。幾つかゲートを教えてもらったけれど、特に変わった様子はなさそう~。
「ねえ。この外につながるゲートって、円を描くように並んでるんだよね?」
「そう聞いてますわ。チャコさんがイオのゲートで調べたときも、そうなのよね?」
「そうだよ~。ゲートの出口も、それぞれの国の場所に対応してる感じ~」
隣り合ったゲートから外に出ると、同じ国か、隣の国が出現場所になっていた。外に出たら気候が違うから、他の時代と見える景色がちがっても区別はつきやすいかな~。
「このゲート全体の中心部とか外周はどうなってるの?」
「聞いたことないな~。行ってみようか~」
「けど、中心に向かうといってもどうすればいいのかしら? 方角も外と違うのではなくて?」
「方角はわからないけど、内側はわかるよ。後ろ見て」
萌黄先輩の言葉に後ろを向くと、遠く離れたところに何か所か光が見えたよ~。
「各ゲートに到着したときに、後で場所がわかるように[コンティニュアルライト]をかけておいたよ。ほら、遠くの光が左に曲がってるから、今のルートは時計周りだね。中心はあっちだよ」
暗闇の中で光っているからか、遠くの光がはっきり見える。手前の光より遠くの光が左側にあった。この光の点が移動してきたルートだから、確かに時計回りだ~。
「これは分かりやすいですね」
「光魔法を覚えたばかりだからね、何かに使いたかったんだよ」
「目印に使うのって、すごく便利だよ~」
中央の方面が大雑把にでもわかったので、闇の精霊の探索範囲を中央方面にお願いして移動を開始だね~。
ダンジョンへのゲートは、未発見の物も含めかなりあるので、大小さまざまな出入口のゲートがあります。外と妖精の国、双方ともに未発見のダンジョンも存在します。




