『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』244
肉体の一部である地下を感知できない。それはつまり、●●●が大地ではなく第三者として俯瞰した位置から世界を眺めているのかもしれない。
「それだと、相手するのって難しくない? 相手が大きすぎるよ」
「太陽だとしても、十分大きな相手だけどね。ただ、少なくとも私たちに●●●をどうにかしなければならない明確な理由はないよ。気になるってだけだからね」
「未来に龍たちがいなくなる。うちらが対処したいのはこれだからな。龍と●●●が共存できるのならそれでいい」
僕らは龍が消えて欲しくないから行動しているのであって、●●●については二の次。ただ、龍と敵対しているから障害になりそうなので、どうにかできないかと考えることにしているだけだ。
そのため、この時代で●●●が発生した理由を探りたい。それが分かれば、過去に遡って未然に防げるのではないか。そんな期待から、この時代に移動している。
何もない荒野を進み、かなり疲れてきたところで崩れた壁の残骸が見えた。街から離れた場所に立てられた、街を囲むように広がる一番外側の壁だ。これを超えた先に街がある。
壁に到達し、崩れた隙間から先を見ると街と思われる家が見えた。念のため茜だけが街の気配を探りに先行して向かった。
アカネ:わかる範囲では気配はないよ。猫一匹いない。
少しだけしょんぼりした声の茜の合図で街へ向かう。崩れた建物が立ち並ぶ街の姿は前と変わっていない。街の建物を囲む内側の壁を越えたところで、茜が横にそれて近くの建物の入り口に向かう。
「ここ、病院があった場所だよ」
崩れた建物に入る茜。同じように建物内に入り奥へ進むと、細長いテーブルが幾つか並ぶ部屋にたどり着いた。ここに患者が寝ていたのだとか。
その部屋の奥にある部屋へ茜が入り、すぐに出てきた。
「リバ石があると思ったけど、なかった」
実際に茜は、この建物内のリバ石を見たことはないらしい。ただ、死亡した人が奥の部屋から出てきたから、リバ石がここに有るものだと思ったそうだ。
「他の場所を探そうか」
黄里先輩に促されて、茜が先頭で街の中を歩く。道の途中で、前回調べた教会の前を通る。前回調べた場所なので、ここを探すのは後に……教会の扉って開けっ放しにしていたか?
一緒にここへ来ていた黄里先輩に聞こうと考えてたら、既に3人が先に進んでしまっていたので、慌てて追いかけることにした。
そのまま道を進み、中央広場に移動。前と同じように大きな丸い石の板が中央に敷かれている。
「ここ、真ん中にリバ石があったんだよ」
その石の中心付近に茜が立ち、中央を手で示す。その場所に何かあるようには見えない。前回来た時も、リバ石が無かったのは確認済みだ。何なら、ベータの頃も存在しなかったので、茜がリバ石を見たことが逆に違和感がある。
「僕らが来たときは何もなかったよ」
「そうだね。最初●●●に集められたときも、ここにリバ石はなかったはず」
明確な変化。システム上に存在するだけの、プレイヤーにしか見えないと思われたリバ石。セーブポイントが消失するのは、シナリオの進行上どのゲームにでもあり得る話だ。けれど、そのセーブポイントをNPCが利用しているのは聞いたことが無い。いや、帰還石のような感覚で使っているのなら、見えなくても利用できるのだろうか? どちらにせよ、今では僕たちにも見えないのは間違いがない。
「冒険者ギルドに行くぞ」
今回の目的である、この街の地下にある遺跡。王笏が引き込まれたということは、何か理由があるはずだ。
茜の案内で冒険者ギルドに移動をする。実際は僕らもベータ時代に過ごしていたので場所は知っているのだけれど、ベータの記憶よりも茜の体験を優先した。
たどり着いた場所は、古い木造の建物。茜が過ごした戦争時代では真新しい建物だったらしいけれど、今は入り口、壁、床など様々なところが朽ちている。それでも、建物の外観は保っているので、整備すれば使えるようにはなりそうだ。
ためらわず中に入る茜を追いかけて、ギルドの奥にあるカウンターに入る。壊れた扉の隙間に茜が入ったので、扉を開けて中に入ると階段が左手に見えた。茜が階段を手でカリカリ触る。話せばいいのに、猫の真似がしたかったんだろう。
蜜柑先輩が屈んで階段を調べる。簡単に外れないようで、かなり力を入れてようやく踏板が外れた。その後は力を入れることなく板を何枚も外すことで下への入り口が見えた。
「これだけ朽ちて周囲と一体化してたら、この時代ではさすがにわからんな」
茜が居た当時の冒険者ギルドが新しかったからこそ、違和感に気が付いたんだろう。今は建物が古くなりすぎて、どの踏板を踏んでもギイギイと音が鳴りそうだ。
最初に降りるのは蜜柑先輩。警戒しながら備え付けの梯子を使い降りていった。次に僕が茜にしがみつかれながら降りて、最後に黄里先輩が降りる。
長い梯子を降りきったら、ドーム状の広い空間に出た。所々に木の箱や棚が置いてあるのを見かけるが、茜は知らないらしい。念のため箱を調べてみたが、ほとんどが中身がなく、見かけても汚れた無地の布切れが入っているだけで、重要なものがあるようには思えなかった。
「アカネちゃん、方向はわかる?」
「大丈夫です!」
僕の肩からするりと降りた茜は、ドームの部屋から出る通路に進み、いくつかの分岐ルートを迷うことなく選んで進んでいった。
ホリっぽい地面に足跡をつけながら進む茜に導かれて、ある部屋へたどり着く。石の板が何枚か立てられているこの部屋は、今まで通ってきた部屋と比べるとかなり大きさが大きい。
「遺跡がかなり変化してるよ」
「アカネ、まて」
つぶやきながら部屋の中へ先に進んだ茜を、蜜柑先輩が止める。振り返った茜に向けて手招きをするので、向きを変えて茜が戻ってきた。
「確認だ。遺跡の状態に見覚えが無いのか?」
「石の板は無かったです。板の隙間から見える石の部分は、王笏を入れたところですね」
「あの立ち上がった石の板が、追加されたと考えていいのか?」
「多分。近寄ってみないと奥側も同じかわからないけど、ここから見える感じだと石の板が増えただけかと」
部屋の入り口で石の遺跡を真剣に眺める蜜柑先輩。何か気になるのだろうか?
「ミカン、何か気になることでも?」
「あれだ」
蜜柑先輩が指をさす方向を見る。遺跡ではなく、少しずれた箇所の地面……あ、足跡が見える。
「ここは長年の間、人が居なかったはずだろ? それなのに、人の足跡が付いている。周辺に人の気配はないが、あれだけくっきり見えている足形からすると、かなり新しい足跡なのは間違いない」
足跡の数からすると、恐らくふたりだ。足跡の流れを追って眺めていると、気が付くことがある。この足跡、この場所にいきなり現れている。
「ミカン先輩、出現場所が変ですね」
「ああ。足跡の向きから考えるに、石の板から出現したように見えるな。あれは、ダンジョンか?」
ダンジョン。可能性としてはあり得る。もしこのダンジョンに、別の時代からやってきた人が居たとしたら、戦争時代の、それもこの街の住人の可能性が高い。茜が設置したことによって、この時代との繋がりができてしまったのだろうか? 巡回のような人も居たと聞くし、この場所は街の住人の一部には知られているだろうから、ダンジョン化していたのなら調べられていてもおかしくない。
「遺跡だけでなく足跡の調査もするから、踏みつぶさないように注意して進めよ」
不用意に歩けば足跡を踏み消してしまいそうだったけれど、注意すれば簡単に避けられる。残された足跡は遺跡周辺を歩いて回った後、別の出口から出ていったようだ。はっきりした足跡なので追跡することは簡単だけど、戦闘になる前に遺跡を調査しておいた方が良いだろう。
足跡からやや遠回りに歩いて遺跡までたどり着く。蜜柑先輩は先に足跡を見るようなので、僕は遺跡に集中しよう。
花粉症で集中することができないため、かなり書く速度が遅くなってます。書きだめがあるのでまだ投稿ペースは保てますが、1分も経たない間にティッシュのお世話になるので大変です。
※7王242話のステータス、茶子の持ち物の王笏が(水)だけだったので修正しました。




