『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』243
あの後、色々話し合ってから全員で拠点へ移動。拠点の掃除をしてから、それぞれでグループを作って行動開始。僕は廃墟時代へ移動した。
エルフの街へ戻る予定だった茶子も、廃墟時代にやってきた。拠点のダンジョン入り口裏の、妖精の国への入り口を使って、廃墟時代の妖精の国がどうなったか確かめるためだった。
結果、妖精の国に入ることはできたが、中は廃墟状態だったらしい。
「少し妖精の国を探索してから、エルフの街に戻るよ~」
と言った茶子を心配して、紫帆先輩と萌黄先輩が一緒に廃墟時代の妖精の国を探索することになった。未黒先輩、黄金音先輩、ギンガは、ミスリルからオリハルコンに変化させるのを試すため、初期時代と戦争時代を周るらしい。エルフの街へ戻るのは後回しにするそうだ。
残りの4人は、廃墟時代の中央の街へ移動する。ヴィナス王国の王都ヴィリスが中央に最も近い位置なので、帰還石でヴィリスへ移動した。
「壁は残ってるけど、ぼろぼろだね」
猫の姿に戻った茜は、廃墟時代のヴィリスの街並みを眺めている。この時代は僕ら以外の人がいないので、普通に会話することにしたらしい。
「検問に待たされることも無いから楽だよね」
黄里先輩の言葉にうなずく。今までヴィリスに移動したら、街の中に入るまで身元調査で時間を取られたけれど、それもないため壁を乗り越えられる。
戦争時代の面影がある建物を眺めながら街中を歩く。この国もマーキュラスと同様に、地面が所々抉られているのは魔法による攻撃だろう。
「正直なところ、この地面を抉った[メテオストライク]らしき穴の数を見ると、プルト単独で行うには無理があるように見えるな。攻撃の範囲が広すぎる」
王都は非常に広い。何度も通ってるマーキュラスですら、入ったことが無い通りが多い。複雑に入り組んでいる細い道だから入ったことが無いのではなく、馬車が余裕ですれ違って通れるような幅広い道でも通ったことが無い道がある。それだけ王都は広い。
そのため、今回のように王都の広範囲に[メテオストライク]を使うのであれば、術者本人が色々な場所に出向いて、あちらこちらで発動して周る必要がある。この規模で行うのなら、何度繰り返せばいいかわからないほど重労働に違いない。
荒廃したヴィリスを眺めつつ、ここに来た目的は街の探索ではないため、街の外へ出る道を進む。
街の門を抜けたところで正面を見上げれば、大陸の中央を囲むようにそびえる、木々も枯れて岩肌がむき出しの山々がすぐ近くに見えた。あの山を越えたその先が中央の街。他にも初期村や始まりの街などと言われている場所につながっている。
山を越えることが最初の目標なので、山頂を目指さずに出来るだけ高さが低い場所を進む。方向を見失わないように方位磁針で位置を必ず確認する。それでも、ルートによって多少は山を登る必要がでてくるので、魔法主体の僕は体力がどんどん奪われる。
「コウモリに変身したら運べない?」
「ずっと変身できるわけじゃないからね。短時間なら良いけど、長時間なら魔法で体力補助したほうがMP消費は少なくなるよ」
【眷属変身】だとMPが継続消費されるため、さすがに厳しい。筋力や体力が不足して登れない崖を越えるために変身するのは良いアイデアだが、それも[レビテーション]を使えば済むため、今のところコウモリの出番はない。あれは移動用というより身を隠すための手段だろう。
どちらにせよ進み続けなければならないので、長さのある杖を片手にもくもくと山を登る。
途中で何度か休憩を入れて、山の登りが途切れるところまで進んだ。見晴らしが良いので、長く休憩をとることにした。
「こういう時、萌黄先輩みたいに空を飛べると方向を定めやすいよね」
休憩中も立ったままの黄里先輩は、周囲を警戒している。体力がほとんど減ってないから、疲れも無いそうだ。素のステータスの影響はかなり大きい。
「それはそうだが、見通しも良いし、方位磁針が狂わない限りは飛ばなくても進めるからな。問題なく近づいてるぞ」
蜜柑先輩は地図と方位磁針を手にして石の上に座っている。
僕は茜と一緒に地面に座りこんでいる。ただし、茜は体力がなくなったわけじゃなくて、単純に猫的な行動だろう。
「この時代、龍の関係がやばいとは言っても帰還石を使っても影響はないんだな」
僕らの拠点から、ヴィリスまで帰還石で飛んでいる。この石は龍由来なので、何らかの反応を覚悟していたが変化はなかった。
「連絡を取る行為が問題だったんじゃないかな? 魔玉という魂に語りかける行為だからね」
「帰還石は、あくまで魔力を引き寄せてるだけってことか」
帰還石を利用したとしても、龍にアクセスできるわけじゃない。龍の存在が少しでも伝わることがアウトだと予想される。念のために、龍のアクセサリを持っている全員がストレージに収納してこちらの時代に来ているので、龍との通信によって●●●に僕らの存在が伝わることはない。
「もう大丈夫です」
消費した体力が回復するまで休憩が取れたので、立ち上がり出発できると宣言する。ここからは登山ではなく平坦な道だから、進む速度も上がるはず。
僕の様子を確認した黄里先輩は、出発を宣言する。道らしい道が無いから歩きにくいとはいえ、山を登っていた時と比べてかなり進めるようになった。枯れ葉などが堆積していれば平地でも歩くのが大変だったはずだけど、この時代にはその枯れ葉すら消えている。おかげで歩くのに苦労しない。
緩やかな坂もなくなって平地が続く。生き物の気配がない砂の地面が大半だ。今この時代に生きている生物や魔物は、全て地下に居るのだろう。そこが●●●に見つからない唯一の場所だから。
……地下が見つからない場所。
「ミカン先輩、ちょっといいですか?」
「ん、なんだ?」
「予測として、太陽が魔玉で、地下が魔石で、地上が肉体的なイメージありましたよね?」
「そうだな。仕組みとしてはそれに見える」
「地下の生物は、なぜ消してないんでしょうか?」
地下の生物と話しても、蜜柑先輩はピンと来てなさそうだ。そういえば、直接対峙したのは僕だけだから、忘れられてるのかもしれないので、最初に地下で出会った魔物について話す。
「マーキュラスの城で蒼奈ちゃんと会う直前に戦った魔物も、地下から出てきたんだろうね」
「だと思います」
黄里先輩と合流したときは、魔物との戦闘中だった。あの魔物はきっと地下から現れたのだろう。
「地上の生物を――植物でさえ執拗に消す存在が、地下の生物を許すのでしょうか?」
「外から見えなかったからじゃ? いや、違うな。それだと地上が肉体というイメージからずれる」
「体って、外から中は見えないけれど、何か異変があれば痛みなどで感じ取れますからね。体内にある魔物を感知できないはずはないでしょう」
僕の話を聞いた蜜柑先輩は、少し考え込む。
「可能性はあるが、龍のこともあるからな。龍は肉体に関しては無頓着だぞ。魔玉と切り離されたら肉体の異常を知るのは不可能かもしれん」
なるほど。そう言われてしまえばそれまでかもしれない。確かに龍は自分たちの肉体について無頓着だ。●●●が同じような存在なら、自身の肉体の感知能力も下がって無頓着になりうるか。
「でも、初期時代までは肉体が封印されて変化も無いんだから、気づきようがないでしょ? 戦争時代に意識が飛んでたのは、肉体の異常も理由かもしれないよ?」
地面を歩く茜が見上げながら話すが、その内容も納得できる。封印地に王笏を戻して会話ができるようになったとはいえ、戦争時代の龍が発した言語にならない叫びは、魔力が排出されないだけで引き起こされた現象ではないかもしれない。肉体の異常を感知した叫びも入ってるかもしれない。
「あー、そうとも言えるな。それなら、アオナの予想もあり得るのか」
「アオナの予想?」
「いや、そこまで突っ込んで分かってなかったのか。要するに、●●●ってのはこの世界以外の相手。世界全体を俯瞰する第三者って予想だな」
種族としてヴァンパイアは体力がある方ですが、体力にほぼステータスを振っていないため多少の種族補正ではなんともしがたい状態の蒼奈です。




