表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

第17話 地下二階層

 しばらく道なりに進む。

 中域を抜けて深域へと入る。こちらも狩られたのか、魔物の影は無い。

 

 やがて深域の奥。魔物と出くわすことなく、地下二階層へと進む階段を見つけた。

 その階段を僕は降りていく。狭くは無い、むしろ十分な空間のある階段。洞窟の壁と同じ、魔光石により青みがかった階段を踏みしめていく。石畳みのような硬度を持つその階段は、僕の靴の音を反響させる。


 階段を降りきると、地下二階層が眼前に映し出された。


「広いなぁ……」


 思わず声が漏れた。一階層と変わらない青みがかった壁の通路だが、二階層の方が広い。何組かの冒険者パーティがすれ違っても余裕のある幅広さだ。


 初めて来る二階層に警戒を怠らず進む。


 一応、新人ルーキーダンジョンの情報は、冒険者ギルドの二階にある、ギルド専用の書館で勉強済みだ。初めて知りあった頃、エルドさんに「死にたくないのなら情報は仕入れておけ」と忠告され、二階の書館を紹介されたのだ。


 膨大な書籍が並ぶ書館で、僕は新人ダンジョンについて書かれた本を学んだ。

 生息する魔物やある程度の地図、ダンジョン内で採取できる素材などが大まかに記載されている。経験の浅い新人冒険者などにとって、この情報を持っていると持っていないとでは、その生死に大きく関わるのだ。


 だが日々ゆっくりと、変化を遂げるダンジョン。

 本もその変化に情報を更新されるが、数多のダンジョンが存在するが故、情報が間に合わないことも多い。全てを鵜呑みにし、古い情報で思わぬ処で足元を救われぬよう、エルドさんには散々注意された。 



 記憶にある二階層の地図を引っ張り出し、とりあえず幅広い通路を進んでいく。魔物を狩って稼ぐことが今の僕の第一目標だが、レベルの上がった今の自分が、どこまでの魔物に通用するのかも把握したい。


 魔物はその階層が深くなればなるほど、その強さが増すという。これは地下型ダンジョンにおける共通点でもある。逆にあの最強最悪のダンジョン『神魔の塔』などの地表型ダンジョンは、その階層が高くなればなるほど魔物の強さは増すそうだ。ただ一般的にはそうらしいが、例外も存在すると本に書いてあった。

 

 地下型ダンジョンである新人ルーキーダンジョンのみしか潜ったことのない僕だが、予備知識は冒険者ギルドの書館で多く身につけた。

 元々本を読むことが好きだったし、書物を読む速度だけは人一倍速かった。魔物狩りとお嬢様方のお世話優先の生活の合間にしか読めないが、それでもダンジョンに関する、ある程度の事については学べた。



 僕の足音しかしない幅広い通路を進んでいると、やがて広めの部屋へと出た。見渡してみると、部屋の中心に何やら蠢くものが確認できる。ここからだと暗くてよく見えないが、確かに動いているその大きな塊。


 正体の分からないその塊に、にじり寄ろうとしたその時、それらはこちらに向かってきた。もぞもぞと蠢きながら、塊は分裂するかのように分かれていく。


 暗い影から光りに照らされ、次第に判別していくその正体。


「……スライムだ」  


 僕は顔をしかめ、思わず呟いた。それと同時に一つの懸念が僕の頭によぎる。

 重なり合う大きな塊だったスライムは八体に分かれた。目も口もない、半透明なゼリー状の体をうねらせ、近寄ってくる。

 

 ―数も多い。


 直ぐにロングソードを抜き、構えた。蠢くスライムはその体を変化させ、触腕のようなものをその体に作り出す。そして次の瞬間、その触腕を鞭のようにしならせ、僕目掛け放ってきた。


「……クッ!」


 まだ十分に距離があるのに、伸びるその触腕を僕は剣で受け止める。速度の乗ったその一撃は、決してゼリーのように柔らかいものではなく、硬質した棒のような物で叩きつけられる衝撃だ。威力がある。


 僕はそれを受け止めると、スライム目掛けて走りだした。以前より『ステイタス』が強化された僕の脚力は直様、スライムまで迫る。そして横薙ぎに斬りつけた。


 が、その手応えは薄い。流体のような体を持つスライムは斬られた箇所を何事も無く、修復させる。


「やっぱり効かない……」


 懸念は間違っていなかった。やはり書館の魔物図鑑に書いてあった通り、スライムには物理的な攻撃の効果が薄い。有効な手段は魔法による攻撃だが、魔法の使えない僕には分が悪い。


 スライムの群れは僕を半ば包囲しようと、円を描くように囲んできた。

 瞬時に繰り出される触腕の鞭。八体のスライムから繰り出されるその鞭の雨を必死で避けた。


 『ステイタス』の恩恵なのか、攻撃はよく見える。同時に僕の体は、避けれないと思った鞭の攻撃でも、直前のぎりぎりで躱す。


 バックステップ、スウェー、片手での側転で危機から脱する。レベルアップ以前の僕なら、そんな動きはできなかっただろう。せいぜい惨めに転がって、無様な醜態を晒すのが関の山だ。


 繰り出される鞭の雨を必死で躱しながらも、僕はスライムの弱点を思い起こす。図鑑に書いてあった魔法も弱点ではあるが、もう一つの弱点があった。それは―


 一番近く。半透明のスライムの胴体部分を凝視すると、微かに赤く光る箇所を目掛けて切り込んでいく。触腕の攻撃を今度は剣で弾きながら、一直線に。

 

「そこだ!」


 赤く光る所を狙い、下から切り上げる。半透明の体は以前として手応えが薄い。が、赤い部分、核と呼ばれている箇所に当たると、がつんと確かな手応えを感じた。石のように固いそれを僕は、力を込め切り上げ抜いた。


 核を切られたスライムは、溶けるようにその場に崩れ落ちた。絶命したのか、動くことはない。


「……これなら他のスライムだって倒せる!」


 

 僕は残りのスライムの攻撃を躱し、避けながら同じ要領で戦った。それだけでみるみると数は減っていく。数は多いが、彼らの攻撃は今の僕にとって、そんなに速くない。攻撃も鞭のようにしならせる触腕一辺倒だ。


 そして最後の一匹にとどめを刺し終えた。


「ふう。数が多かったから、少し疲れちゃったな」


 額の汗を拭い、肩で息をする呼吸を整える。

 それからスライムから魔石と素材を確保するために、触れていく。


【スライムから肉体を簒奪。敏捷+3】   

   

 勝手に始まる簒奪の表示。スライムからは+3の上がり幅だ。

 今まで戦った魔物で一番強かったのは間違いない。レベルアップ前の僕なら、あの鞭を躱すことが出来たかわからないし、あの硬質した触腕の一撃は脅威だ。何より八体も相手にすれば、確実にやられていただろう。レベルアップの恩恵で勝てたのは間違いない。


 スライムの肉体は霧のように消失し、後には魔石とドロップアイテムであるスライムの核が残った。

 しかしその核は僕が切り裂いたため、半分に断たれている。


「……これ買い取ってもらえるのかな?」


 半分に割れた赤い核を眺めながら、僕はそんな疑問を呟く。スライムを狩るときにはやっぱり魔法で倒すのが一番みたいだ。スライムの核も傷つかないだろうし。


 すべての簒奪を終え、割れた核を鞄へとしまうと、僕はダンジョンを更に進んでいく。割れたスライムの核はいくらになるかわからないけど、ここまで良いペースで狩りができている。そこまでスライムにも手間取らなかったし、もっと上位の魔物とだってやれるはずだ。


 僕は魔物を求め、歩き出す。


   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ