2日目
異世界転生2日目。
いや、30歳ってことは転移か憑依?
ま、どっちでもいいわ。とにかくやることはたくさんある。
昨日は疲れ果ててもとい抜け出せなくて寝ることしかできなかったから気持ち的には元気いっぱいである。
窓からは明るい日差しが差し込んでいる。
ユアンは疲れているのかまだ夢の中である。そろそろ起きないと侍女がやって来そう……
『ユアン!起きて』
「うー……ミケ……」
ユアンはまだ眠そうに私を握りゴロゴロしている。
『朝よ起きなさい』
「ミケ……いた」
私を見たユアンは笑みを浮かべる。そしてむくっと身体を起こした。
『おはよう、ユアン』
「おはよう?ミケ」
『朝はおはようで始めるの』
ユアンは笑顔でこくりと頷く。
『侍女はいつ来るの?』
「きょうはこない」
『来ないの?』
「くるのいちにちおき」
はー。本当に腐ってるわね。
いくら獣人の血をひく子どもでも、毎日ご飯をあげないなんていつまで身体がもつか分からない。……そもそも死んでも良いと思ってる?その割には定期的に侍女が来てるみたいだし……。死なない程度を見極めて、やってるとか?何にしろ胸糞悪い話である。
『まずは朝ごはんにしましょう』
「ごはんない……」
ユアンの顔がしょんぼりする。
『昨日言ったでしょう?私のカバンからリンゴとパンと牛乳が出てくるって。あとベーコンも』
そう言うと私は自分のカバンからリンゴ、パン、牛乳、ベーコンを取り出して机に置いた。
『いただきますで食べて良いわよ』
「いただきます。……ミケもたべる?」
『私は食べられないからいいわ』
多分だけど。お腹は全く空いていないし大丈夫だろう。
それを聞くとユアンは一目散に食べ物にかじりついた。
『喉に詰まるからゆっくり食べなさい』
何て言う言葉も聞かずに(そりゃあそうよね)あっという間に食べ終わる。残るは牛乳だけである。
ユアンはもちろん牛乳にかじりついている。
「……たべられない」
心なしかしょんぼりしている。
『それは飲み物よ。ちょっと貸して』
ユアンから三角牛乳(古い)を受け取り、ついているストローをさしてもう一度ユアンに渡す。
『長くて白いやつを吸ってみて』
ユアンは私の言葉通りストローに口をつけると、ごくごくとあっという間に飲み干した。
『おいしかった?』
「おいしかった?」
ユアンは首をかしげる。
そうか、ユアンは美味しいも知らないのね。
『お腹がいっぱいになったことを言うのよ』
「おいしかった!!」
ユアンは大きく頷いた。
よし。これで少しはユアンも動けるでしょう。
さて、牛乳の包だけどどうしようか……とりあえずはバックに入れておけば良いかな。
そんなことを考えながら牛乳を取ろうとすると、いつの間にかふっと目の前から消えていた。
イリュージョン!!!
ユアンも目を丸くして驚いている。
いや、神様の送り物だから多分そういう仕様なのね。
とにかく片付いて良かったことにして、さて、何からやるべきか……まずはユアンの身体能力の確認をしたいわね。
『ユアン動ける?』
ユアンは大きく頷いた。
「たくさんうごける」
食べた分動けるようである。足りなくなったら、夜中に調理場に侵入すればいいか。とりあえず体力テストね。
まずは瞬発力!
『ユアン端から端まで本気で走ってくれる?』
ユアンは頷くとビュンと風のように目の前を走り去った。
そしていつの間にか反対側にいる。
早すぎて全く見えないし、あのスピードで壁にぶつからずに止まれるのもすごい。
とにかく速いということが分かった。
『次は跳躍力を見たいわ。ユアン、できるだけ上にジャンプしてくれる。大きく跳ねるって言えば分かるかしら』
ユアンはまたも頷くと、その場で大きく飛び上がった。
ゴン!!
……天井で頭を打つくらいに高く。
『ユアン大丈夫?痛くない?』
「いたくない」
ユアンはニコニコしているので大丈夫だろう。
跳躍力もすごい……と。
『次は持久力を見るわ。ゆっくりでいいからしんどくなるまでこの部屋をくるくる回ってくれる?』
ユアンは頷くと部屋を歩き出した。
『ユアンもう少しだけ速く歩ける』
小走り程度が良いけど、きっと言葉では伝わらないだろう。
ユアンは私の言葉に従い少し早めに歩き出す。
『もうちょっと速く』
ユアンは少しスピードを上げた。よし、小走りくらいになったわね。
くるくる、くるくる、見ているこちらが酔うくらい、息も切らさずにユアンは周り続ける。
私は100まで数えて、ユアンにストップをかけた。
『まだまだ体力はある?疲れてない?』
「だいじょうぶ」
ユアンは全く変わらない表情で呟く。これは持久力も余裕そうである。
あとは……体力テスト何かあったっけ……。
ま、これだけ分かれば良いか。
とにかくユアンは体力面では問題なしどころかかなり優れていることが分かった。
獣人だからなのか、ユアンの能力が優れているからかは分からないけど、大して食べてもいないのにこれだけ動けたら緊急事でも何とかなりそうである。




