レベル3
そう言えばレベルも上がったはず。
『ステータス』
「美亜 30歳
呪い パペット化
善行レベル 3
スキル 1日30分だけ動ける
持ち物 善行カバン レベル3 容量 見た目の倍
毎日カバンからリンゴとパンと牛乳、ベーコンがで
てきます」
よし!動ける時間が30分に伸びた!ご飯も肉類のベーコンが追加されたし。これで少しはユアンに栄養をつけてあげられそうである。
「ステータス?」
そうか、ユアンはもう3回もこの言葉を聞いてるのね。何て説明しよう。
『私が良いことをするとできることが増えるの。百個良いことをしたら私も人間になれるの』
「ミケ、にんげんになれるの!?」
『えぇ、ユアンにも手伝ってほしい』
「いいよ!!」
ユアンは満面の笑みで答えた。
こんなに素直で大丈夫かしら。すぐに誰かに騙されそう。
『あと、このことや私がしゃべったり動いたりできることは私とユアンだけの秘密にしたいの。誰にもしゃべっちゃだめ。できる?』
「できる!!」
ユアンは大きくこくりと頷いた。
それにしても1日で3レベルもアップ。100まで本当にあっという間かもしれない。
あと、何か忘れているような……。
「ひとくる。よういする」
そうだ!水浴び!!
おそらくお風呂代わりだと思うけど、これだけ汚れているなら久しぶりに違いない。
ユアンはテキパキとチェストから下着と服を準備している。
「もうすぐ」
そして服に隠すように私を抱きしめた。このままだと服で周りの景色が見えない。
『ユアン私の顔周りだけ隙間を開けてくれる?』
言葉通りユアンは私の顔をサンドイッチするように服を抱えなおした。
「こう?」
『いい感じ!外の情報もいろいろ見てみるわね』
ユアンはこくりと頷いた。
ドアが開き、また、見知らぬ侍女が入ってくる。
「行くわよ」
ユアンは無反応で侍女について行く。
よし!私は外の確認ね!!
見える範囲でキョロキョロ見渡す。
廊下も部屋と大して変わらずあまり豪華な雰囲気はない。ライトもポツポツとぼんやり灯っている程度である。
部屋の数はありそうだけど、今のところは誰とも出会っていない。
離宮か……いや、部屋と雰囲気からして侍女などの宿舎なのかもしれない。
それなら今の時間皆が働きにでていてひっそりしているのも頷ける。
3分ほど歩くと、階段がありそのまま下りていく。
1階も2階と同じようなつくりをしている。そのまま1箇所だけ明るい場所へと侍女は足を進める。ユアンに配慮する様子もなく足早な足取りだが、ユアンもそれに普通について行っている。
ユアンは身体能力も高いのかもしれない。
明るい部屋に入ると、何人かが忙しなく働いていた。食べ物のよい匂いが漂う。どうやらここは調理場らしい。食堂も隣接しており、晩御飯を食べる使用人の姿が見える。
やはり、この建物は使用人の寮らしい。
「連れてきたから後はよろしく」
料理長らしき人にそう言い残すと、侍女は食堂へと去っていく。
「このくそ忙しい時に……ほれ、犬っころ、これでも食っとけ」
料理長は炒め物をしている手は緩めず、近くにあった出がらしの骨付き肉(かろうじて肉がついてる)を床に落とした。
ユアンは床にうずくまりそれをかじる。
……この料理長、どっちかしら。
判断に迷う行動である。
「犬っころ食べたな……おい、新人、水洗い場までそこのカバンを持って連れて行け」
「はい」
まだ若い青年がカバンを持ってやってくる。
「……行こう」
小さな声でユアンに呼びかけると、裏口から外に出た。
外に出ると月が出ていた。しかも2つ。
ま、異世界あるあるだと思おう。
私は寒さを感じないが、若い青年は少し肌寒むそうに手ををこすっている。
といっても吐く息も白くはなく雪も見当たらないから、前世の初春の頃くらいの気候だろう。
ちなみにユアンは部屋と外とで全く様子が変わらない。
3分ほど歩いたところに、水洗い場があった。
夜のためか人気はなく明かりも月明かりのみである。
青年は立ち止まると辺りをキョロキョロ見渡した。誰もいないことを確認するとおもむろにバックからパンを取り出す。
「これ……料理長から。見つからないうちに早く食べろ」
ユアンは青年からパンを受け取ると飲み込むように食べた。
ユアンを見つめていた青年は辛そうに顔をしかめた。
「……これくらいしかなくてすまない。本当はもっとちゃんとしたものを食べさせてやりたいけど、周りの目もあって料理長がこっそりいれるくらいしかできないんだ」
ユアンはゆっくり首を振る。
『ユアン、誰かに何かしてもらって嬉しいときはあリがとうと言うのよ』
「……ありがとう?」
ユアンの声を聞きなぜか青年がビックリしている。
「お前、しゃべれたのか!?」
どうやらユアンは青年の前でしゃべったことが無かったらしい。
ユアンはこくりと頷いた。
「そうか……おれもお前と同じ半分獣人なんだ。いじめられてたのを料理長が拾ってくれて今では調理人見習いとして働けてる。いじめられてた頃は良いことなんて起こりっこないと思ってきたけど……人生悪いことばかりじゃない。だからお前も諦めるなよ」
どうやら料理長とこの青年はユアンに同情的らしい。これだけで完全に信用することはできないけど、何かあったら助けてもらえるかもしれない。
ユアンは服に挟まれた私をぎゅっと握るとこくりと頷いた。




