アンデッド 4
今日は侍女が来ない日なので昨日の疲れもあったのかユアンは昼頃まで夢の国だった。
抱きしめられていた私も抜け出せず一緒に睡眠。そうこうしていると陽がかなり高くなり、ユアンが目を覚まし私と目が合う。
「……アンデッド?」
私はアンデッドじゃないわよ。
よほど気になるのか、起きて最初に出た言葉がアンデッドである。
『ご飯を食べたら会いに行きましょう』
ユアンは頷くと、爆速でご飯を食べ終えた。
「となり行く!」
ユアンは私を抱えると、私の返事も聞かずに隣の部屋へと入った。
前までは必ず私に確認してから行動していたのに、これが自我の芽生えかしら。
今のところ反抗は全くしないけれど。
穴から倉庫に入り、アンデッドを探す。
「……いない」
ぱっと見、目につく所にアンデッドはいなかった。
ただ、この部屋から特に大きな音もしていないからどこかにいるはずだけど。
ユアンに抱えられて奥に進む。
すると黒いローブを頭まで被った後ろ姿が見えた。
まさか人?それとも……
「アンデッド!」
ユアンはそのままローブに抱きつく。
黒いローブ姿の人物はこちらに振り向いた。
光沢のある黒いローブに身を包み、顔は白いフルフェイスのベネチアンマスクの用な物で覆われている。手には白いグローブ。足は黒いブーツを履いている。
「あ……あ……」
昨日までの姿とは別人に見えるが、この声。間違いなくアンデッドだろう。
アンデッドは手に持った黒板にチョークで素早く書き込む。
『こちらの倉庫を探していたらいろいろあったので着てみました。どうでしょう?』
どうもこうも、アンデッドには見えない。黒いローブ姿の怪しい人間には見えるけど。
「いい!!」
ユアンは嬉しそうに頷く。
『良かったです。やはりアンデッドの姿は目立つので』
いやいやいや。
今の姿も十分目立ちますけど。
「アンデッドごはんたべた?」
ユアンの手には昨日盗ってきたオレンジが握られていた。
『どうやら私はお腹がすかないようです。ですが、あリがとうございます』
このアンデッドかなり丁寧な人柄である。雰囲気はやはり貴族。やっぱり第一王子の線が濃厚かしら。
『ユアン、アンデッドに自分のことで何か分かるか聞いて』
「じぶんのことなにかわかる?」
『それが……さっぱり分からないのです。物の名前や行為などは自然と頭に浮かんできたり、できたりするのですが、自分のこととなるとさっぱり分からなくて』
嘘……呪いの影響かしら?
『呪われているのは知ってるのかしら?』
「のろわれているのしってる?」
『私は呪われているのですか?だからこんな姿なんですね。私も元は皆さんと同じ姿だった気がするのですが』
うーん。結局、呪われる前が人っぽいことしか分からなかったわね。自分が呪われてその姿になっていることも分かってなかったし……前途多難だわ。
『いつからその姿なの?』
「いつから?」
『一ヶ月ほど前に気がついたら墓地にいました。それ以後は誰かに話しかけようと試みたのですが、皆が私の姿を見て逃げるばかりで……話にならなかったのです』
確かにその姿で近寄られると、話す前に逃げるわね。
『何で私たちの前に現れたの?』
「なんでユアンたちのまえにきたの?」
『とにかく人を見たら近寄っていました』
それでユアンがヒットしたと。後は……。
『名前がないと不便ね』
毎回アンデッドと呼ぶのは何か嫌である。
「なまえ、ある?」
『思い出せません。良かったら名前をつけていただけますか?』
「アーサー!!」
ユアンが即答で答える。
大好きな本の主人公の名前ね。ま、アーサー王にあやかって強くなってほしいし良いかもしれない。
『良いんじゃない』
アンデッドもこくりと頷く。
『じゃあ、今日からアーサーで!って、言葉が通じないのが不便よね』
何か良い案は……そうか。
『ユアン、アーサーに文字を教えてくれるように頼んでくれる?』
「アーサーもじをおしえてくれる?」
『もちろん良いですよ。その前に皆さんの名前を教えていただけますか』
そう言えば自己紹介を忘れていた。
「ユアン、こっちがミケ」
『ユアンさんとミケさんですね。よろしくお願いします』
とにかくユアンの仲間が1人(?)増えた。
ま、文字も書けるし何かと役に立つかもしれない。
さて、ではさっそく文字を教えてもらいましょう。
三十代の私がいまさら文字を覚えられるのか……。不安だけど、とにかくやってみよう。




