レベル8…?
文字……やはり苦戦している。
主に私が。
やはりユアンは賢いらしく、一度教えてもらった文字はすぐに覚えて使えるようになっている。
唯一の救いは、日本語のように3種類も使い分けなくて良いことだけだ。
とにかくひたすら書いて覚えている。
アンデッドもといアーサーも賢いらしく、知識は豊富である。
「……ミケ、そこ違うよ。今日はこう書くの」
遂にユアンも私の教師役に回るようになった。
「ユアン、もう覚えたの?」
新しい言葉はさっき書いてもらったばかりなのに。
ユアンはこくりと頷いた。
うーん、難しい。
でも、ここで生きて行くには必要な知識よね!
頑張るか!!
私は黒板に何度も文字を書いて消してをくり返した。
活動限界まで文字の練習をすると、その日は終了となった。
動かなくなった私をユアンが抱き上げてくれる。
「アーサーまたあした!」
『はい、ミケさん、ユアンさんまた明日』
アーサーが穴の前まで見送ってくれ、元の部屋へと戻って来た。
『ユアン、晩御飯にしましょう』
ユアンはこくりと頷くと、善行カバンからいつもの食事を取り出す。リンゴとパンと牛乳とベーコン卵……。
卵?
何で卵が出てくるの?
「ミケ、なにこれ?」
ユアンが不思議そうに卵を見る。
と、誤って下に落としてしまった。
「……ごめんなさい」
慌てて落ちた卵を見るけど、ヒビが入っただけである。
これはゆで卵かも。
……でも、何で?
まさか……。
『ステータス!』
「美亜 30歳
呪い パペット化
善行レベル 8
スキル 1日10時間だけ動ける
ミニマム
鑑定
博識
持ち物 善行カバン レベル8 容量 見た目の30倍
毎日カバンからリンゴ2個とパン2個と牛乳2本、ベー
コン2枚卵1個がでてきます」
やっぱり謎にレベルが8に上がっている。
ピロンって音しなかったわよね。
……聞き漏らした?
ま、どちらにせよ上がったのなら文句は無いけど。
後は博識!!
何だか名前は賢そうだけど。
とりあえずどんな能力かな……と。
博識と書かれた場所を押してみる。
博識
10分だけ聞いたこと、見たこと、書いたことが全て覚えられる。
何このスキル?
今の私にピッタリのスキルじゃない?
しかも、もっと早く分かっていたら今日も使えたのに!!
この感じ、誰かの作為を感じるわね。
痒いところに手が届くから別に良いのだけど。
『ミケ、ごめんなさい』
ユアンが泣きそうな目で私を見つめている。
しまった。ユアンのことをすっかり忘れていた。
『ユアンごめんごめん。大丈夫。その白いのはゆで卵と言って殻をむいて食べるの。割るのが正解よ』
「ミケおこってない?」
『怒ってないわ。食べてみて』
ミケは殻をむくと、出てきた卵をパクリと一口で食べた。
「おいしい!!」
ユアンは笑みを浮かべる。
「良かった。毎日1個出るから、朝か晩かに食べてね」
卵は栄養満点だからありがたい。
殻はどうしようか……。
とりあえず外に捨てるまでカバンに入れておこう。
ユアンは他のものも食べ終わるとベットに直行した。
「おやすみミケ」
『おやすみなさい、ユアン』
今日も一日が終わった。また明日。
私もそのまま瞳を閉じた。
次の日になる。
今日はセリンの日である。
トントントン
「失礼しますユアン様、朝食をお持ちしました」
セリンが持ってきたトレーには、スープがのっていたが、具がたくさん入っておりかなり美味しそうだ。
「あと、こちらのパンもお召し上がり下さい」
いつもの様に服からパンを取り出してトレーにのせる。
ユアンはお皿を持ち上げて食べるようになった。ただ、カラトラリー類は怪しまれるといけないので今のところ使っていない。
「おいしかった」
ユアンを微笑ましい表情でセリンは見つめていたが、私を見ると少し表情を引き締めた。
そして、世間話を言うかのように淡々と言葉を発する。
「……最近、王のお加減があまり良くありません。今のところ毒にも薬にもならぬという理由でユアン様は生かされておりますが、王位争いが始まると疑わしきは罰せられるかもしれません。お早めに……」
いつも思うけれど、リリは別にしてなぜセリンはもともとユアンによくしてくれるのだろう。
『なぜユアンに優しいのか聞いてみて』
「なんでぼくにやさしいの?」
「……かつてユアン様のお母様に命を助けていただきました」
「いのち?」
「はい。とても……とてもお優しい方でした」
「やさしい」
「はい。ユアン様はお母様にそっくりです」
セリンはユアンを見ると微笑んだ。ユアンもなんだか嬉しそうに見える。
そうか……そんな過去があったのね。
「ですので……お早めに……」
私はこくりと頷いた。
どうやら、私たちがここを出なければならないリミットが近づいているらしい。
ここ以外知らない私とユアンが果たしてやっていけるのか……。いや、とにかくやるしかない。
私は頭の中でどうするかシミュレーションを重ねた。




