表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/30

レベル1


『私の声が聞こえるならニャ―と鳴きなさい』

 

 確かめるために目の前の子どもに聞いてみる。


「にゃ―?」


 間違いない!!

 意思疎通できてる!!


 ……でも何で?

 さっきと違うことは……

 あの音。もしかしてお約束の……。


『ステータス!!』


「美亜  30歳

 呪い パペット化

 善行レベル 1

 スキル 最初に見た一人と意思疎通ができる

 持ち物 善行カバン レベル1 容量 見た目通り

 毎日 カバンからリンゴとパンがでてきます」


 やっぱり!!レベルが1に上がってる。

 でも何でだろう……善行なんてしてないのに。

 レベルが上がる前にあったことと言えば、子どもがリンゴを食べたくらい……。


 もしや、それ?

 お腹が空いてる子どもに間接的だけどリンゴをあげたからレベルが上がったとか?


 分からないけど、きっとそれっぽい。


 ま、なんにしろリンゴ1個で、レベルが上がるなんて楽勝!!この調子でガンガンレベルをあげて猫生(?)ともおさらばね。


「……すてーたす?」


 しまった。

 自分のことに夢中で目の前の子どものことを忘れていた。


 確か最初に見た一人と意思疎通ができるだったから、この子どもとしか話ができないのよね。つまり、私にとってこの子どもは命綱!!


 汚らしいし、あまり賢くなさそうだけど、とにかく私のために動いてもらわないと。


『あなた名前は?』


「ユアン」


『そう、私は美……』


 ちょっと待って。

 こういうのって本名名乗ったら相手に縛られて命令を聞かないといけないとかありそうじゃない?魔法がある世界によくあるパターンよね。しかも今私ぬいぐるみだし。念の為別の名前にしないと……。


『み……ミケ』


 とっさに口から猫のまんまの名前が出てしまった。


「ミミケ?」


『ミケ!!』


「ミケ」


 ユアンはニコッと微笑んだ。

 

 あら?

 笑顔が可愛らしい。

 痩せてるし汚らしいけど、よくよく見ればかなり整った顔立ちをしている。

 

 これは化けるやつね。

 

 前世で暇つぶしにイケメンの原石を探してスパダリに育てあげてきた私の目利きをなめてもらっては困る。もちろん育て上げたあとは興味を無くしてポイしちゃったけど。 


 なかなか良い素材じゃない。

 これなら磨けばかなり光りそう。


『ユアン、とりあえずあなたのことについていろいろ教えて』


 まずはユアンについて知らないと。


 ユアンは首をかしげる。

 

 具体的に聞くほうが良いのかしら。


『何歳?』


 ユアンはまたも首をかしげた。


『ここはどこ?』


『今は何時?』


『誰か他にここに来る人はいないの?』


 いろいろ聞いてみるが、首をかしげるばかりである。


 もー埒が明かないわね。


 本当は自分でいろいろと調べたいけれど、身体は全く動かないし、ユアンは役に立ちそうにないしどうしょうか。


 イライラしてくるが、ユアンは変わらずニコニコと笑顔のままである。その顔を眺めているとなんだが毒気が抜かれてくる。


 ガチャ


 いきなり扉のドアが開いた。

 

 つかつかとトレーを持った女が入ってくる。


 ユアンの顔がさっと真顔に戻り、私はユアンにギュッと抱きしめられた。


「今日の食事よ。さっさと食べなさい」


 ドンとテーブルにトレーが置かれる。

 中には水っぽいスープが一つだけ置かれていた。見るからに栄養が無さそうな食事である。


 ユアンは私を横に置くと女に言われるがまま皿のスープを犬飲みした。


「……本当に汚らしい子供ね。王も何を考えているのかしら。隣国に病気で療養などと嘘をつかずさっさと処分したらよいのに……」


 なるほど。ユアンは何か訳ありで虐げられた子供って訳ね。ま、見た目からそうだけど。


「あら、その人形。そんな物あったかしら……ま、私以外の誰かが差し入れたのかもしれないわね。ブサイクな顔であんたにお似合いだわ」


 ユアンは女から隠すように私を抱きしめた。


 ブサイク!!

 今この女、よりにも寄って私に向かってブサイクって言った?


 絶世の美女と言われたこの私に?

 

 生まれてこのかた、そんな言葉を聞いたことがない。

 いや、猫になってはそんなに経ってないけど……。

 

 この女……絶対に許さない。


「ま、せいぜい可愛がりなさい。どうせ長くは生きられないんだから」


 そう捨て台詞を吐くと女はトレーを持ち上げ来た時と同じドアから去っていった。


 覚えてなさい!!

 私の執念深さは折り紙付きよ!!


 女が去っていったドアを睨みつける。


『ユアン!!』


「はい」

 

 ユアンは私の声を聞くと、また笑顔に戻った。


 このままユアンに死なれたら私は意思疎通ができず、一生ぬいぐるみのままである。それだけは何としても回避しなければならない。それに何よりやられっぱなしは性に合わない。


『私があんたの味方になってあげる』


 ユアンはまたも首をかしげる。


 あーもーまどろっこしい。


『ずっと側にいて助けてあげる!!だから私の言うことを聞きなさい!!』


「ずっといっしょ?」


『ええ』


 ユアンは満面の笑みを浮かべてギュッと私を抱きしめた。私の形が変わるくらい力強く。


「きく!ミケとずっといっしょにいる!」


 ピロン


 またもレベルの上がる音がした。

 



 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ