アンデッド 2
先ほど分かった衝撃的事実。
私はアンデッドと意思疎通ができるらしい。
いや?ホントに?
たまたまじゃなくて?
偶然の可能性も捨てきれず、念の為確認してみる。
『私の言葉が分かるなら右手を挙げて』
「……あ……あ……」
アンデッドは右手を小さく持ち上げた。
『一回まわって』
アンデッドはゆっくりその場で一回転する。
『ワン』
「ああ……」
いや、ワンは言えないか……。
って言うか、バッチリ意思疎通できてるし。
これって私がモンスター枠にあたるからなのかしら。謎の呪いパペット化だし。それとも呪いシリーズ仲間だからかしら。
そもそも問題は呪いよね。
私は善行を100積めば人間に戻れるはず。
ということは、このアンデッドも呪いを解けば人間に戻れる?
うーん。分からないわね。
そもそも何でこのアンデッドは私の前に現れたのかしら。
『あなた私に何か用があるの?』
「あ……あ……」
いや、私の言葉が分かるなら普通逆もできるはずでしょう。
アンデッドは小さく頷く。
「あ……あ……あ、あ……」
全く分からない。
とにかく何か用があるらしいけれどどうすれば良いのかしら。
互いに向き合ったまま、無駄に時間だけが過ぎていく。
『ユアン、とりあえず部屋に戻ろうか』
ザ、先送り。
意思疎通はできるけど、相手の言葉が分からないのは致命的である。
まだ、ここにはやって来るつもりだからそれまでに何か対策を練ることにする。
時間は有限。
皆が動き出す時間になる前に帰らないと。
ユアンは珍しく少しためらっている。
「くる?」
アンデッドはゆっくり頷いた。
「あ……あ、ああ……」
『ユアン!?連れて帰るの!!』
まさかの選択。
「ひとりはさみしい……」
いや、ま、気持ちは分かる。
ユアンもそうだったから、きっと自分に重ねてるのかなとも思う。でも、これはダメでしょう。
『ユアン、アンデッドは家では飼えないわよ』
犬や猫のように簡単には拾えない。
第一飼う場所が無い。
「でも……いっしょにいきたいって」
ユアンは訴えるように私を見つめる。
いっしょに行きたいって言ってもダメなものはダメでしょう……あれ?
何でユアンいっしょに行きたいって分かるの?
『ユアン、アンデッドの言葉が分かるの?』
ユアンはこくりと頷く。
「ミケといっしょ」
私といっしょ……?よく分からないけれど、ユアンにはモンスターもしくは呪いの相手と意思疎通できるのかしら。または私みたいな条件がアンデッドにもついていたか……。
意思疎通がうまくできるなら連れて帰りたい気持ちも分からなくは無い。……あまり可愛くはないけれど。
『でも……置くところが無いわよ』
私と違ってかなり大きいし、目立つ見た目をしているから隠しきるのは難しい。
「……でも、ひとりはかわいそう」
ユアンは涙目になり私に訴えかけてくる。
うっ。
そんな目をしても飼えないものは飼えない……。
ユアンは遂にはポロポロ涙をこぼし出した。
それを見ていたアンデッドは慌てて、ユアンの涙を指(骨)でぬぐう。
「……あ……あ……あ、あ……」
「……でも……一緒に行きたい」
ユアンとアンデッドは何か互いに会話をしているらしい。
「あ……あ……あ……」
「でも……でも……」
ユアンの涙は止まらずにポロポロ流れていく。
アンデッドはどこか慌てたようにオロオロしているように見える。
ま——この様子からは、アンデッドも気の悪いやつじゃなさそうだけど……。
めったにわがままを言わないユアンがここまで強固に主張するのは初めてのことである。
うーん。
……私も涙には弱いのよね。特に可愛い子なら余計に。
でも、連れて帰ってどうする?
いや、隠せないでしょう。それにどうやって、連れて帰る?
問題は山積みである。
……でも。
『ユアン、拾ったら責任が伴うわよ。いらないから捨てるなんてできないのよ?』
そう。拾ったら責任を持ってアンデッドと共に過ごさなければならない。
「できる!!ミケおねがい!!」
泣く子には勝てないか……。
『アンデッド!!あんた絶対私たちを裏切らないって約束できる?』
「あ、あ……」
アンデッドは大きく頷く。
『もし見つかったら私は容赦なくあんたを切り捨てるけど、それでも構わない?』
そう。いざとなれば無関係を貫く。
アンデッドは先ほどよりも大きく頷いた。
「ユアンも見つかったら、アンデッドは切り捨てるわ。それでも良いかしら?」
「うん!!あリがとうミケ!!」
ユアンは満面の笑みを浮かべて私をぎゅうぎゅうと抱きしめた。
そして嬉しそうにアンデッドと手を繋ぐ。
「いっしょにかえろう」
ま、なるようになるわね。
私たちはアンデッドと来た道を戻った。




