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アンデッド 1

 

 今日は4日ぶりに外出にチャレンジする。


 前回と同じような時間を選び、隣の部屋のベランダから外に降りるようユアンに指示を出す。


『いい、ユアン。物事には心構えが必要なこともあるのよ私が1、2、3と数えたら下に降りてね』


 私は学習した。

 ユアンにはきちんと伝えれば大丈夫だということを。


 ユアンもこくりと頷く。


『じゃあ……』


 私がカウントダウンしかけたその時、ユアンが一気に下まで飛び降りた。


 ひー——!!


 みるみる間に地面が迫る。


 まだカウントダウンしてない!!


 ユアン——!!!


 ドン。


 かなりのGがかかったけれど、前回と同様に無事にユアンは地面に着地した。


『ユアン!!』


 ユアンはキョトンとした表情をしている。


「ミケ、どうしたの?」


『まだカウントダウンしてない!!』


 も——心の準備無しは勘弁して欲しい。


「ミケ、1、2、3いった」


 ユアンは首をかしげている。


『それは説明で……』


 ユアンには説明というのが伝わらなかったのね。

 ……子育てって難しい。


 ま、とにかく無事に下に降りられたから気持ちを切り替えて、前回行った果樹園に再チャレンジである。


『まぁいいわ。果樹園に行きましょう』


 ユアンは頷くと私を抱えて歩き出した。


「ミケ、きれい」


 ユアンは空を指さす。


 今日は丸い月が綺麗に見えている。

 月……なのよね?異世界だから名前は違うかもしれない。


『きれいね』


 夜の散歩も二回目になると少し余裕が出てくる。

 前回よりも心持ち明るくて、周りの景色も見える気がする。


 私とユアンが歩く農道の横は鬱蒼とした森が広がっている。だからこそ、アンデッドが出てこられたんだけど。


 今のところは足音も聞こえず、順調である。


「ついた」


 無事に果樹園に到着。


『今日はもう少し奥まで行ってみましょう』


 他にも果物の木があるかもしれない。


 ユアンは頷くとブドウ畑をどんどん歩いて行く。


 少しして背の低い木が見えてきた。

 ……あれは。

 見慣れたオレンジ色の果物がなっている。


 オレンジ!!


 よし。今日はオレンジ狩りにしよう!!


 そ言えば月にしろ、食べ物にしろ前世と共通点は多い。魔法やスキルは全然違うけれど。科学のかわりに魔法が発達した並行世界みたいなものなのかしら。


 原理は全く分からないけれど、見慣れた物があるのはありがたい。


『ユアン、あのオレンジ色の果物を10個くらい採って、1個だけ食べて後は持って帰りましょう』


 私は学習した。

 ユアンにはきちんと伝えれば大丈夫だということを。


 今回は本当に本当。食べ尽くさずに、持って帰れるだろう。


 ユアンは私を地面に下ろし、せっせとオレンジを木からもぎもぎするとカバンの中にいれていく。


 約束通り最後の1個にそのままかぶりついた。


 皮が食べられないの言い忘れてた。

 ……子育てって難しい。

  

 もぐもぐとあっという間に食べ終わる。


「おいしい!」


 皮付きでも有りらしい。

 ま、おいしかったのなら良かった。

 皮まで食べられる種類のオレンジなのかもしれない。見た目固そうだけど。


『帰ろっか』


 ユアンは頷くと私を腕に抱きしめた。


 毎日8時間は動けるようになったけれど、ユアンの腕の中が定位置になっておりあまり動く必要がないのよね。ま、楽だから良いけれど。


 さ、今回は鬼が出るか蛇が出るかアンデッドが出るか……。


 来た道をユアンが歩いて戻る。

 

「……くる」


 唐突にユアンが足を止めた。


 やはり来るのね……。


『アンデッド?』


 ユアンはこくりと頷く。


 よし!!今回は迎え撃つ。

 いや、戦闘力ゼロだけど。


 ガサガサガサ


 右斜め前の茂みから音が聞こえて来たと思ったら、ぬっと前回と同じ姿のアンデッドが現れた。


「……あ、あ……ああ……」


 私たちの前に立つと何かを呟く。

 一定の距離をとってくれており、私たちを襲う意思はやはり感じられない。


 何か伝えたいことがあるのかしら。


「あ……あ…………あ……」


 でもやはり不気味。

 特に目がくぼんでいて、闇が深い。いやま、骸骨だから仕方が無いのだけど。


 ……って、今日は試すことがあるのよね。


 じっと見つめ合う前にやってしまおう。


『鑑定!!』


 私は目の前のアンデッドを鑑定した。


「✕✕✕✕✕(呪いアンデッド化)」


 うん?

 名前は文字化けしていて見えない。

 それよりも後の()の中の方が気になる。


『呪いアンデッド化?』


 アンデッドは私の言葉に反応するように、ゆっくりと頷いた。


 あれ?

 今、私の声読み取った?


『私の声聞こえるの?』


 またもアンデッドがこくりと頷く。


 なんで私とアンデッドが意思疎通できるのよ!!



 


 


 

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