レベル7
いろいろ思案してみるけれど、良い案が浮かばない。
ま、次にあの女が来るのは1週間以上後だからそれまでに何か考えましょう。
『ユアン朝ごはんにしましょう』
「うん」
ということでいつもの日常のルーティ—ンをこなしていく。
朝ごはん。
運動。
読書。
昼寝。
代わり映えのしない日常だけどユアンの成長を促すには大切なことである。
そこにたまに私の算数の授業が加わる。
『ににんがし、にさんがろく、にしがはち……』
「ににんがし、にさんがろく、にしがはち……」
最近は九九を覚えさせている。
こちらの世界の算数の概念は分からないけれど、多分使えるはず。
ユアンは一度教えると何でも覚えてしまう。前世の私が欲しかった能力である。
そんなこんな過ごしているといつものあの音が鳴り響いた。
ピロン
えっ?
気のせい?
今ユアンに九九教えてるけど、昨日も教えたし鳴るなら昨日じゃない?いや、もしかして身についてから鳴るとか?いや、ユアンだから昨日の段階で理解してそうだしもしやバグ?
「ミケ?」
ユアンがいきなり固まった私を心配そうに見つめる。
『ユアン、ごめん。昨日と今日教えたことを復習していてくれる?』
ユアンは素直に頷き、九九を復唱し始めた。
とりあえずステータスを確認してみる。
『ステータス』
「美亜 30歳
呪い パペット化
善行レベル 7
スキル 1日8時間だけ動ける
ミニマム
鑑定
持ち物 善行カバン レベル7 容量 見た目の20倍
毎日カバンからリンゴ2個とパン2個と牛乳2本、ベー
コン2枚がでてきます」
やっぱり謎にレベルが7に上がっている。
後は鑑定!!
異世界チートあるあるね!
とりあえずどんな能力かな……と。
鑑定と書かれた場所を押してみる。
鑑定
鑑定と言うといろいろな物について分かる。ただし、
最初は簡易なことしか分からない。
簡易なことしか分からないか……どういうことが分かるのかしら。
ま、こういうのは試してなんぼよね。
私は自分の持っているカバンを鑑定してみる。
『鑑定』
カバン
いや、カバンて、見たら分かる。
じゃあ、ユアンは?
『鑑定』
ユアン=ラルフレシア
おっ、本名が分かった。ユアンはラルフレシアって言うのね。
とにかく目につくもの片っ端から鑑定していく。
そこで分かったのはとにかく名前しか分からないということだ。
ま、分からない物があったら鑑定したら名前が分かるから便利かも。
しかも最初はという言葉から、鑑定を使うか、レベルが上がるかすれば分かることが増える可能性が高い。
とにかく分からない物を鑑定しまくろう。
今のところスキルに魔力を使うとかのしんどさもないから、鑑定はそういう物を利用しなくとも使える能力なのかもしれない。忘れてたけどミニマムも使った後何ともなかった。ま、いつでも使えるならそれに越したことはないから良いけど。
部屋中の物について鑑定しまくったけど、特に何か変化は見られなかった。
これはレベルが上がらないと鑑定スキルも伸びないやつかも。
「ににんがし、にさんがろく、にしがはち……」
ユアン!!
忘れてた。
エンドレスで九九を唱えている。
『ユアン!勉強終わりにしましょう』
ユアンは頷くと、私を抱えてベッドに直行した。
「ミケ、おやすみ」
『ユアン、おやすみ』
昼寝の時間ね。
私も部屋の中鑑定し尽くしたし、ユアンとのんびりしましょう。
そう思ったら一気に眠気がやって来る。
瞼が自然に閉じてユアンとそのまま眠りについた。
夕方になり目が覚める。
そろそろ晩御飯の時間である。
と言っても私のカバンから出てくる代わり映えの無いメニューだけど。
ユアンを見ると、バッチリ目が合った。
「ミケおきた。ばんごはん?」
私は頷くと、ユアンは私を抱えてテーブルに移動した。
「……くる」
ユアンが呟く。
珍しい。誰かくるらしい。水浴びも一昨日合ったところだから、何の用かしら。
「リリ」
リリと聞いて、緊張をとく。
リリなら嫌な用事の可能性は低い。
トントントン
「リリです。失礼します」
いつもより少し小さくノックして小声で部屋に入ってくる。
「リリどうしたの?」
珍しくユアンが自分から声をかけた。
ユアンもいつもと違うリリの訪問に戸惑っているようね。
「これをミケ様に」
そう言って目の前に差し出されたのは、クッキー?
お皿の上に数十個のっている。
これってもしかして……。
今日レベルアップしたことと関係してる?
『ユアン、なんでか聞いて』
「なんで?」
「実は先日ご相談させていただいた侍女仲間が、ミケ様の御指示に従い銀のスプーンを使ってお茶を入れていたところ、今日実際にスプーンが黒ずんだようなんです。ですので、念の為第2王女様にお伝えしてところすぐにお調べになられて、毒が入っていたことが確認できたと」
やっぱり!!侍女の人にとったら毒入り紅茶飲ませなくてすんだし、私にとったらレベルがアップしたしウィン・ウィンね。
「それでその子から感謝の思いとして渡して欲しいと頼まれたんです」
それならばもらうのもやぶさかではない。
ユアンはお菓子なんか食べたことないだろうし。
いろいろ謎が解けてスッキリした。
『ユアンもらっておこう』
ユアンは頷くと皿を受け取った。
「それでは私はこれで。勝手に入ってはいけないことになってるので……」
そう言うとリリはそそくさと部屋を出て行った。
ユアンに人を関わらせないことをある意味徹底してる。
そこまでしてユアンを追いやっているのは誰なのか……ま、これもおいおい調べましょう。
『ユアン食べて良いわよ』
今はユアンの嬉しそうな顔を見るのが優先ね。
ユアンはクッキーを口に入れた瞬間、輝くようなえみを浮かべた。




