外出 2
深夜になった。
と言っても時計も無いのでなんとなくである。
『ユアン誰か歩く足音が聞こえる?』
念の為ユアンにも確認してもらう。
「きこえない」
よし。今がチャンスね。
『ユアン、隣の倉庫に行きましょう』
ユアンは頷くと、私を抱えて隣の倉庫に移動した。
『ユアン、この窓開けてくれる?』
ユアンの部屋の窓ははめ殺し窓だけど、こちらは普通の開けられる窓である。
ユアンが窓を開けると、私はベランダに出た。
うーん。暗いからよく見えないけれど、やはり高い気もする。
行くべきか行かざるべきか……。
ここに来てやはり迷う。
私は大丈夫だけど、ユアンに何かあったら取り返しがつかないし。
「ミケいく?」
ユアンもベランダに立ち私を抱えた。
『うーん……』
どうしようか……。
次の瞬間、身体がふわっと浮いて、地面へと……ダイブしていた。
『ユアン!?』
うーんとうんは違うの!!
みるみる間に地面が迫る。
ひゃーやっぱり怖い!!
ドン。
かなりのGがかかったけれど、無事にユアンは地面に着地した。
「ミケついた!!」
ユアンは嬉しそうに私を抱きしめた。
ま、何とかなったから良かったのかしら……。
気持ちを切り替えて、さっそく夜の外出である。
『ユアンあっちに果樹園や野菜畑があるらしいから行ってみましょう』
私の指示に従いユアンが歩き出す。
いろいろ見たいと思っていたけれど、思っていた以上に真っ暗で何も見えない。
暗闇の中、足元も見えないのに転ばないユアン。
『ユアン暗闇でも周りが見えるの?』
「みえる」
軽やかな足取りで果樹園や野菜畑があるだろう方向に向かって歩く。
やっぱり獣人の身体能力は人とは違う。
夜目もきくなんて、潜入捜査とかも余裕そう。
そうやって考えると、獣人の国の方が圧倒的に人の国より強そうだけど、ユアンを見ていると立場が逆である。何か事情があるのかもしれない。
10分くらいあるくと急に視界が開けた。
おそらく野菜畑である。
「ついた?」
でも今日私が行きたいのはすぐに食べられる果樹園の方。
『果樹園に行きたい』
ユアンはこくりと頷くと、また歩き始めた。
『ユアン、果樹園がどこか分かるの?』
また、ユアンはこくりと頷く。
『なんで?』
ユアンは外出もしたことがないはずなのに……。いや、夜目がきくから見えているのか。
「においがする」
よほど鼻がよいらしい。
夜目がきいてにおいで分かる……しかも身体能力が高い……となると、もしやユアンは私の同類?
猫科の生き物かもしれない。
ユアンに猫耳と尻尾……有りね。
今以上に可愛くなること間違い無しである。
そんなこんな考えているうちにユアンが足を止めた。
目の前の木を見上げると、ブドウがなっている。
前世でよく見た紫の大粒のブドウである。
『ユアン別々の木から4房くらい採って帰りましょう』
同じ木で一気に無くなると怪しまれるかもしれない。
ユアンは頷くと、私を地面に下ろしジャンプしてブドウをもぎ取る。
本当に軽々ジャンプしている。最高どのくらいの高さまで跳べるのかしら。
軽々と4房抱えて戻ってきた。
「4つとれた」
最近100までの数については教えたばかりである。
頭もいいから足し算引き算も既にマスター済み。
『食べてみて』
その声を合図にユアンは抱えているブドウを黙々と食べはじめた。
『おいしい?』
ユアンはこくりと頷く。ただ、食べる手は止めない。
一房二房……まずい全部食べるつもり!?
『ユアンストップ!!』
ユアンは食べるのをピタリとやめた。
『残りは明日食べましょう。バッグに入れて』
本当は毎日来たいけれど、見つかるリスクもあるからたまにの方が良いものね。
ユアンは素直に頷くと、残ったブドウをカバンに入れた。
『帰りましょう』
長居は無用である。
今日の任務は達成した。後は無事に部屋に帰るのみ。
ユアンはもと来た道を戻って行く。
やはり真っ暗で私の目には何も見えないけれど、ユアンは楽しそうに歩いているのでよしとしよう。
『ユアンまた……』
来ようねと言いかけて口をつぐむ。
ユアンが真剣な表情で急に立ち止まった。
「……くる?」
『人?』
「ちがう」
人の足音じゃなければ野生動物。
もしくは異世界にありがちのモンスターかもしれない。
どうやら帰り道の方向、正面から何かやってくるようだ。
逃げる!?
でもどちらにしろ、この道を通らなければ宿舎にたどりつけない。周り道していたら、帰りが遅くなり夜が明けてしまう。
ガサガサ
確かに何かが近づいて来ている。
ユアンは私を抱きしめたまま、じっと正面を見据えた。
「くる!!」
ユアンの声とともに目の前に何かが現れた。形は人に見えるけれど……。
『……人?』
「ちがう」
月明かりに照らされて、一瞬はっきりと姿が見えた。
人であって人でない存在。
『アンデッド!!』
墓場に出るんじゃなかったの?
なんで農道の方に!!




