日常
さて、ユアンとの日常が戻ってきた。
朝ご飯を食べて運動。
そしてお昼寝。
お昼寝が終わったら隣の倉庫から本を一冊持って来て読み聞かせ。
また昼寝。
夜ご飯 ←NEW
そう。夜ご飯!!
私のレベルが上がり、バッグから2個食べ物が出るようになったので1日2食に増えた。
ま、内容は毎日一緒だけど。
ユアンは文句も言わずに美味しそうに食べる。
いつかもっと美味しい物を食べさせてあげる。
それから、たまにくる侍女にリリが加わった。
理由は不明。
おそらく嫌な女が殺されたから補充されたんだろうけど、最初は大変だった。
トントントン
「失礼します。新しく侍女になったリリです。よろしくお願いしま……ひっ!!」
リリは持っていたトレーを下に落とした。
デジャブ!!
もちろん私と目が合ったからである。
「なぜ、なぜそのぬいぐるみがここに……しかも大きい」
リリは青ざめ、身体を震わせている。
「ミケ?」
ユアンは私を見て震えるリリを不思議そうに見つめている。
震えるリリ
動かない私
不思議そうなユアン
カオスな空間である。
いや、ちょっと待って。もしかしてこれは使えるかも……。
『ユアン、リリに私を近づけて』
ユアンが私を持ったままリリに一歩近づく。
リリは一歩後退する。
また一歩近づく。
一歩後退する。
また一歩近づく。
リリは……壁にあたりこれ以上は下がれない。
「助けて……助けてください」
ついにリリは泣き出した。
ユアンは困ったように私を見る。
『ミケ様は言っている。ユアンを大切にしろと。そうすればまたそなたの災いを取り払うと……って言って』
ユアンは言われた通りに復唱する。
「ミケさまはいっている。ユアンをたいせつにしろと。そうすればまたそなたのわざわいをとりはらうと」
「ミケ様?災いを取り払う?……でもまって……確かにこの間の件も、私がトレーを落さなかったら私が犯人にされてたって……そうなれば殺されていたかも」
リリは泣きやむと、今度は私を見て拝みだした。
「ミケ様の言う通りにします!」
よし!!上手くいったわ。
1人下僕をゲットね。
『とりあえず、食事はもっとマシな物を持ってくるように言って』
「とりあえずしょくじはもっとマシなものをもってくるように」
「分かりました!すぐに持ってきます!!」
リリは落ちたトレーを拾うと、部屋の外に出て行った。そして数分の後に部屋に戻ってきた。
「どうぞ」
トレーの上には先ほどとは異なり具のたくさん入ったスープがのっていた。
『なぜスープしかないのじゃ』
「なぜスープしかないの」
「ユアン様の食事メニューは決まっているのであまり勝手はできません……ですがこれを見てください!」
リリは胸からパンを二つ取りだす。
「このパンは私のおやつに取っていたやつですが、良かったらこれをお食べください」
リリは笑顔で告げる。
分かってたけど……リリ、どことなく残念な子ね。
憎めないけど。
ユアンは私を見る。
『ユアン、遠慮なく食べてしまって』
ユアンは私の言葉に頷くと、パンとスープを完食した。
『また、何かあれば言う。下がってよし』
「またなにかあればいう。さがってよし」
「はい!また来ますね」
リリはトレーを持つと笑顔で部屋を出て行った。
セリンに続き、リリもこちらの味方になりそうで何よりである。
というようなやり取りが初日にあった。
回想終わり。
ここ数週間過ごしてみてユアンの部屋にはセリン、無口な侍女、リリ、あと1人ちょっとだけ嫌味な侍女の4人がローテーションで1日おきにやってくることが分かった。
後はユアンの読み聞かせだが……
一言で言うとユアンは天才だった。
私は転生チートでおそらく文字が読めるから、読み聞かせは楽勝だけど、ユアンも私が一度読めば完璧に暗唱できることが分かった。
しかも文字も一度教えた文字はスラスラ読めるようになっている。
いや、本当に顔つきといい、運動神経といい、頭脳といい、天はユアンに二物も三物も与えている。
ま、その分環境が過酷だけど。
よくあるヒーローにありがちの天涯孤独なヒーローが逆境の中逞しく成長するを地でいっている。
ま、あたしという存在がいるのは大きな違いだけど。
とにかくユアンは宝石の原石。
磨けば磨くほど輝きを増す。
恩を売って私を助けてもらえるように、早くスパダリに成長させないと。
そのためにはここから早く出たいんだけど……
ユアンの成長とは逆に、私のレベルが全く上がらない。善行を積もうにも、ユアンの部屋には侍女が一瞬やって来るだけで、他の人物の出入りは皆無だから仕方がないと言えば仕方が無いのだけど……。
できれば私も他のスキルを身につけたい。
ユアンに対する善行はもうカウントされそうにないし…。
もう一度どこかの部屋に1週間くらい潜入したいのだけど、ユアンが強固に反対するし……。
さて、どうしよう。
ユアンを説得するか……あるいは一緒に行く?




