王城へGO
3人の侍女たちは部屋を出ると足早に食堂へと入った。
食堂はちょうどピークの時間なのかたくさんの人で賑わっている。
朝食はセルフ式になっており、トレーに置かれているパンやスープ、サラダをのせていく。ユアンのスープとは似ても似つかない具沢山のスープである。
平民の侍女でもこれだけの物が食べられるのに……
ユアンの扱いの酷さがよくわかる。
3人は空いている席に座ると黙々と朝食を食べ始めた。
「ねぇ、昨日早退したでしょう?何かあったの?」
目の前に座った侍女から話しかけられる。目の前の侍女は好奇心が隠せないタイプなのか、目が爛々と輝いている。
「体調を崩してたから許可をもらって休んでいただけよ」
私の持ち主面倒だから侍女Aは3人だけの時とは全く別人のように素っ気なく答えた。
「えぇ—。3人同時に?」
「同室だから、風邪がうつったのかも」
「ふーん。……そうそう知ってる?第3王女ついに結婚が決まり、隣国に行くことが決まったって」
「そうなの?」
「ええ。今までいろいろあったのに何もなかったのが、急に結婚って……何かあったのかしら?」
探るような目つきでこちらを見る。
「さぁ。私は第3王女の部屋は担当してないから分からないけど、あまり大きな声で聞かない方が良いんじゃない?」
「えぇ——。だって気になるじゃない。例えば……昨日あなたたちの部屋から第3王女付の騎士が出てくるのを見たって……」
「さぁ、知らないわ」
侍女Aは素早く食べ終わると、声を遮るように話を終わらせた。
「もう行くわね」
「も——。何なのよいつもならもっといろいろ話してくれるのに……」
目の前の侍女は不服そうな表情を浮かべた。
それに答えるように侍女Aは小声でそっと呟いた。
「……私も学習したのよ。あまり探らない方が良いわよ……自分が大切ならね」
そしてトレーを返すと、侍女Aはそのまま1人で食堂を出ていく。
残りの2人とはここから別行動のようである。
あの侍女、そう遠くない未来でやらかしそう。
前世で言うところの『好奇心は猫をも殺す』かしら。
ま、私には関係ないけどね。
さて、次はどこに行くのかしら。
キョロキョロと目だけ動かして外の景色を確認する。
どうやら宿舎からでたようである。昨日通った道をたどっている。皆同じ方向へ行くのか、目の前にも後ろにもたくさんの人が足早に歩いている。
水場も通り過ぎ、しばらく道なりに歩くと、急に視界が開けた。
目の前に大きな門があり、上を見上げると立派な城がそびえ立っている。
門の前には門兵が立っており、簡易的な人物チェックを行っていた。
「タグを」
言われて侍女Aは首にかけているタグを門兵の持っている水晶にかざす。
「よし、次!」
前世のセキリュティーチェックのようだ。どうやら魔法技術はかなり進んでいるらしい。全然その恩恵は受けてないけど。
そのまま裏口から登場へと入る。
さすが王城。
宿舎とは違って広々した廊下は磨き上げられており、装飾も美しい。ちなみに前世の西洋の城につくりは似ていた。
そのまま一階の大部屋に入る。
朝会があるのか、大勢の使用人が集まっていた。
しばらく待つと侍女長が入ってきた。
その場の空気が引き締まる。
「昨日第2王女が戻られました。急遽のことでしたので、お部屋の掃除ができておらず、昨日は客間にお泊りいただきました。本日は何名か第2王女様のお部屋をそうじしてもらいます。名前をあげたものは第2王女様のお部屋に参りなさい。セリン、ファン、キリア、メディ、ルル、クリア、リリ以上。その他は通常業務でお願いします」
侍女長の言葉が終わると皆が頭を下げ、それぞれの持ち場へと移動していく。
侍女Aはリリと言うらしい。リリと言う名前が呼ばれた時にビクッと反応していたからおそらく間違いはない。
セリンも一緒か……信用できそうな人物を割り当てたのかしら。
トントン
「失礼します」
皆それぞれが掃除道具を持ち、掃除にあたる。
昨日見たクリーンを部屋にかけたら楽そうだけど、そんな魔法は使わずに皆無言で掃除している。
ただ、掃除道具によっては魔道具もあるようで、前世の掃除機のようにゴミを吸い取る物も使っている。
なんかアンバランスなイメージなのよね……
それがあるなら拭き掃除も魔道具とかでできそうなのに、リリはバケツに水をいれて雑巾で水拭きしている。
魔道具にも制限があるのかもしれないわね。
第2王女の部屋は家具は豪華なものだろうけれど、不必要なものは一切ないスッキリした部屋だった。おそらく本人の性格が反映されているのだろう。
唯一今いけられた花が部屋を彩るのみの、ある意味掃除しやすい殺風景な部屋だった。
実務優先を地でいきそう。
こういうタイプは自分の利に叶えば味方にもなる可能性がある。ただ、第2王女のように自分にも実害があればきるのもはやそうだけど。
とりあえず、会ってみないと分からないわね。
できれば部屋にやってくると良いのだけど。




