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救世主


「……レアル様」


 部屋に入ってきたのは一目で身分が高いと分かる騎士だ。見た目からして格が違う。金髪碧眼、整った容姿と、明らかに高価そうな服装。騎士の中でも位が高い人物だろう。


 部屋にいた騎士たちは、マズイとばかりに侍女の腕を離し、直立姿勢をとる。


「レアル様お助けください」

「私たちは盗んでおりません」

「お助けください」


 侍女たちは新たな救世主の登場に、救いを求める声を上げた。


「騒ぎになっていると聞いて来てみたのだが、どういう状況か誰か説明してくれ」


「それは……この部屋に盗まれた指輪があるとの話を聞き、調査をしておりました」


「それであったのか?」


「いえ……見つかっておりません」


「ふむ。ならばその話自体が嘘か勘違いの可能性が高いのでは?」


「ですが……かなり信憑性の高い話だと伺いました」


「誰にだ?」


「……それは……」


 騎士たちは口ごもる。


「ふむ……話せぬ相手か……だが、だからと言って証拠もないのに捕まえるのはいささか乱暴が過ぎる」


「しかし……このまま誰も連れて行かなければ我々が罰せられます!!」


 騎士たちの方も必死である。

 

 そりゃあ、罪をでっち上げて殺そうとするような人物なら、侍女が駄目なら無能な騎士で代用するくらいのことはしそうである。


 ま、騎士たちは罪をでっち上げた犯人だから処刑されても自業自得としか思わないが。


「ならばこの場は私が預かろう。戻って主人に伝えろ。この場は近衛騎士隊長のレアル=フリードが預かったと。何か不満があるなら直接私に言いに来いとな」


「……ですが、レアル様!!」


 騎士たちは必死にレアルという人物に訴える。


「このまま戻ったら我々が殺されます!!」

「主人は決して我々を許さないでしょう」

「お願いします。レアル様!!」


 3人とも必死である。


「お前たちが死なないために、無実の侍女が殺されても良いと?」


「……それは……ですが、彼女たちは平民です!!」


 は——。選民思想も甚だしい。

 本当にろくでもない国っぽいな。


「……騎士は正しいことを行わなければならない。その正しさの基準は時には道理と違うこともある。道理を曲げねばならぬこともある。だが、道理を地の底に落とせば、もはや再び騎士にはなれぬ。悪いようにはせぬ。一度主人の元に戻れ」


 レアルは静かに告げる。


 だが騎士たちは青ざめ、ブルブル震えて一歩もその場から動かない。


 膠着状態が続く中、また新たな人物が部屋に入ってきた。


「レアル様」


 少し年配の女性だが、着ている服はかなり上等なものである。


「侍女長」


「第2王女様がお戻りです。第3王女様の輿入れ先がかの国で決まり、直ぐにでも出立するようにと。それに付き添う騎士の手配を頼むとのことです」


「了解した。お前たち今の話を聞いていたな。どうやら、お前たちの主人はお前たちを罰する時間は無さそうだぞ。おそらく今頃輿入れの準備に追われているだろう。早く主人の元に戻れ」


 その言葉を聞き、騎士たちは互いの顔を見合わせると覚悟を決めたのかゆっくりと部屋から出て行った。


「さて、私も行かねば。後は侍女長頼む」


 そう言うと、レアルも部屋から出て行った。残されたのは侍女長と侍女3人である。


「……指輪の話はかの方の勘違いであったようです。見舞い金を置いておきます。今回のことは他言無用でお願いします」


「……分かりました。決して他言はいたしません」


 侍女たちはまだ顔色が悪い。だが、これ以上この件に首を突っ込めば自分たちの命も危ないと分かっているのか、皆震えながら首を縦に振った。


「よろしい。今日はこのままこの部屋で休みなさい」


「……ありがとうございます。侍女長様」


「礼ならセリンに言いなさい。この部屋から騎士たちが出てくるのを見て、何かあると私に伝えて来たのですから……さすがに今回はやりすぎです」


 セリン。やはりかなり正義感が高そう。


 でも、まだ真っ当なことを通す人間もいると分かった。……それが獣人にも適用されるかは不明だが。


 侍女長にレアルか……


 味方になればかなり頼もしい存在である。


 問題のある第3王女はどうやら他国に飛ばされたようだし、ひとまず侍女たちの危機は去ったみたいね。


「それでは私は仕事に戻ります」


 見舞い金の入った袋を置くと、侍女長は静かに部屋を退室した。


 ビロン


 やったー!!この音はレベルアップ!!

 よし!!よし!!この調子ね!!


 侍女たちはしばらく放心したように座り込んでいたが徐々に現実へと戻ってきたようである。

 

「……死ぬかと思った」


 1人の言葉に残りの2人も頷く。


「見舞い金……使わずにしまっておかない?誰かに聞かれて変に答えたら……私たちきっと……」


 後の言葉が続かない。

 きっと最悪の想像をしているのだろう。


「……今日は私たちは体調不良で早退しただけ。そうよね?」


 皆がこくりと頷く。


「何も……何もなかったことにしましょう」


 見舞い金を3等分すると、それぞれがチェストの一番奥に閉まった。



 

 




 


 

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