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侍女たちの会話


「ふぁ——眠い……」


 侍女の1人が身支度しながら呟く。


「どうしたの?」


 もう1人の侍女が問いかける。


「昨日、寝ぼけてお化けを見たのよ……」


「何、怖いこと言わないでよ」


 3人目の侍女は身体を震わせた。


「ドアが開く音がして、寝ぼけ眼でドアの方を見たら誰もいないの」


「……それ、本当?」


「……たぶん。ただ、寝ぼけてただけかもしれないけれど」


「何だびっくりさせないでよ」


「いや、でも確かに開いた気がしたんだけど……」


「もしかして隣のあの人だったりして」


「怖いこと言うの止めてよ」


「あの人、もう処刑されたって聞いたわ」


「……でも、この部屋に来る理由が無いわよ?」


「部屋を間違えたとか?」


「幽霊が部屋を間違えるなんて聞いたことがないわよ。気のせいよ!気のせい!」


「……幽霊よりも、私は王族の方が怖いわ」


「滅多なこと言わないでよ。……私も同感だけど」


 相打ちを打つようにもう1人の侍女が小声で呟いた。


「それにしてもこれで何人目?」


 残りの1人も小声でささやく。


「私が知っているのは3人かしら……」


「第3王女様もそろそろおやめになってくれたら良いのに……」


「本当よね。新入りの侍女に宝石を与えて、その侍女が可愛がられていると勝手に勘違いした頃に宝石をわざと目につく所に放置、無くなったことを確認してから侍女狩りを行う……もう勘弁してほしいわ」


「普段お止めしてくださる第2王女様が隣国に外遊されているのが痛いわね……」


「早く戻ってきてくださると良いのだけど」


「侍女長は王女と名のつく方の行いは絶対に否定なさらないし……は——またこれだから平民はと言う目で見られながら仕事するのは億劫で仕方ないわ」


「そう言わないの。第2王女様が事態を把握なさったら前回同様に、慰労を兼ねて金貨1枚もらえるかもしれないじゃない」


「そうよね。金貨1枚くらいもらわないとやってられないわ。……美味しい物を食べて、おしゃれな服でも買わないと」


「良いわね。次の休みにみんなで出かけましょうよ」


「「賛成」」


「さ、それじゃあ気持ちを切り替えて仕事に行きますか。お金のために」


「「お金のために」」


 最後は皆で笑いながら3人の侍女は部屋を後にした。


 私はベッドの下で3人の会話を聞きながら考える。


 幽霊……


 多分私!ドアノブから下りて地面にいたところくらいのタイミングで見られたのかしら……。ま、バレなくて良かった。


 王族……


 第3王女がヤバい。

 できればあまり関わりたくないわね。愉快犯ぽいし……。


 第2王女はまだまともそう。ま、実際に会ったわけじゃないから分からないけれど。


 お金……


 金貨1枚でそこそこ買い物ができそう。イメージは前世の一万円くらいかしら。ってことは銀貨が千円、銅貨は百円くらいとすると、今の所持金は22000円ってことね。


 物価が分からないから、何とも言えないけどしばらくは持つ金額だと良いけれど。


 って、やっぱり女子はこうよね。


 セリンの部屋が異常。


 帰って来てからの会話も期待しておこう。とりあえず、体力は万が一に備えて温存するとして……は——やっぱり暇。


 それでも我慢するしかない。


 とにかく寝よう。


 私はまた瞳を閉じた。


 ガチャ


 ドアが開く音がして何人かの足音が響く。


 ……まだ目を閉じてそんなに経っていない気がするけれど。時間の感覚が狂ったのかも。


「……それにしても、第3王女様の悪癖にも困ったもんだ」


 うん?男性の声……。

 つまり、不法侵入者?


「第2王女様が帰って来るのが決まったから、それまでに派手に遊びたいんだろう」


「遊び……って、その遊びのせいで1人の平民が死ぬのにか?」


「平民の命なんて、そんなもんだろう?」


「まあな、さ、どこに隠すか……もうチェストの中でいいか……」


 ガタガタッと引き出しを開けて閉める音が響く。

 

「よし。早く部屋を出よう。誰かに見られたら厄介だ」


「大丈夫だろ?いざとなれば第3王女に頼まれて抜き打ちの持ち物チェックをしていたと言えば良い」


「それもそうか……ま、誰か分からんが運がなかったと思ってあきらめてくれ」


「そもそも平民に生まれてきた自体、運がなかったんだよ。さ、行くぞ」


「ああ」


 ガチャ


 またドアが開いて閉まる音がした。


 うわ——。


 ……思っていた以上に第3王女がヤバい。


 とりあえず、チェストの確認と……


 私はベッドの下から這い出ると、音がした奥のチェストに飛び乗った。そして棚を引っ張り確認する。


 一番下の棚は特に変わった物は入っていない。


 二段目……これもハズレ。


 三段目……あった。


 開けてすぐの所に美しいエメラルドの指輪がこれ見よがしに置いてある。


 ……いや、悪趣味にも程がある。


 隣室の嫌な女は自分で盗んだから自業自得だけど、今回のは全く話が違う。


 このままいけば、そう遠くないうちにさっき話をしていた誰かが犯人として捕まり処刑されるだろう。おそらくろくな取り調べもないまま即刑が決まるに違いない。


 関係無いとはいえ、このまま見過ごすのも後味が悪い。無意識だけどいろいろ有益な情報を教えてくれたし……。


 ただ、どこに隠すか……そもそも隠すだけじゃ直ぐに見つかるし……。


 木を隠すなら森の中、宝石を隠すなら……?

  

 


 


 

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