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お隣探検2


「……ミケ?」


 この情けない姿は見せたくないけど、背に腹は代えられない。


『ユアン、ベッドの壁、下のところで挟まっているの、助けてくれない?』


「すぐいく!!」


 ユアンはベッドの下に潜り、すぐに私を見つけた。


「ミケいた!」


 そして優しく引っ張ってくれる。


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 あっさりと私は壁から抜け出た。


『ありがとうユアン』


 ユアンはにっこり微笑んだ。


『えらい目にあったわ……この穴もう少し大きくできないかしら』


 何か道具を使って広げるとか……いや、音がしてバレてもダメだし。


「あなひろげる?」


『ええ、引っかからないようにもう少し大きくしたいけれど……』


 ドカッ


 ユアンが壁を殴る。


 なんということでしょう。今ある穴の倍程の大きさになった。


「ひろがった」


 私はそれをポカンと見つめる。


 ユアンがすごいの?それとも獣人ってこんなもん?


 判断に迷うがまぁ結果オーライということで。


『ユアン、足音が近づいたりしない?』


 ユアンは耳をすます。


「……しない」


 良かった。かなり大きな音がしたはずだけど、近くの部屋の住人は皆働きにでているようである。


『ユアン、穴通れる?』


 今開けた穴は以外と大きいからユアンも通れそうである。


「やってみる!」


 ユアンは私を抱いたまま、穴を通る。


 つっかえることなく余裕で壁の向こうの倉庫に出られた。


 これならこの部屋とは自由に行き来できそうである。


 ただしこんなに分かりやすく穴が開いているのを何とか隠さないと……。そう言えば絵画も奥に入ってたはず。それでカバーすればいけるかな。


『ユアン奥の絵画を取って来てくれる?』


「かいが?」


 そうだったユアンには常識が抜けてるから、とにかく片っ端から教えてあげないと。


『指示をだすから一緒に歩いてくれる?』


 ユアンはこくりと頷くと、ゆっくり歩き始めた。


『ユアン止まって。目の前にある棚に置いてあるのが絵画よ。どれか一つ取ってくれる?』


 ユアンは薔薇の絵が描かれた絵画を持ち上げた。


『さっきの穴をこれで防ぐの』


「わかった」


『後は……ユアン、この本も持ってくれる?』


 私が持って行こうとした本をユアンに持ち上げてもらう。


『じゃあ、部屋に戻りましょう』


 ユアンはこくりと頷くと、私と本を持ち、絵画で穴を隠して元の部屋に戻った。


『ユアン、ベットで寝転んでこの本を読みましょう』


「ほんをよむ?」


 も——幼児に読み聞かせしないとか最低。前世の私でも院長先生やシスターがたくさん本を読んでくれたわよ。


『ええ、私が読んであげるからユアンは次って言ったら1枚紙をめくって』


「わかった」


 ユアンは私と本を抱えてベットに仰向けに寝そべった。


『アーサー王の伝説』


 私が選んだのは比較的薄い絵本である。……どんな話かは不明だけど。


『昔々それは昔のことだが、悪い竜が人里を荒らして人々は困っていた。それを見過ごせなかったアーサー王は竜退治に出かけることになった。次』


 ユアンは私の話に聞き入っているようで、すぐにページをめくった。


『アーサー王が歩いていると、1人の魔法使いに呼び止められた。「アーサー王よ、あなたの腰袋に入ったメダルをくださるなら仲間になりましょう」アーサー王は魔法使いにメダルを渡し、魔法使いが仲間になった次』


 なんか話の展開が前世の桃の昔話に似てる……?


『また、アーサー王が魔法使いと歩いていると、1人の戦士に呼び止められた。「アーサー王よ……」』


 やっぱり展開が……。


『……そしてアーサー王と仲間たちはようやく竜の国へとたどり着きます。そしてバッタバッタと竜をやっつけ、ついに悪い竜を一匹残らず退治しました。そして竜が持っていた宝を持ち帰り、皆幸せに暮らしましたとさ おしまい』


 結構時間がかかったけど読み終えたぞ!!

 しかし、人族に都合の良い話ね。

 ユアンの反応は……。

 言うまでもなく目をキラキラさせている。


「ミケ、もういっかい」


『いいわよ』


 よし。この本を中心に言葉と文字を教えよう。そのためにはユアンが覚えるくらい何回も読まないとね!


『昔々それは昔のことだが……おしまい』


 2回目。


「もういっかい」


『昔々それは昔のことだが……おしまい』

 

 3回目。


「もういっかい」


『昔々それは昔のことだが……おしまい』


 4回目。


「もういっかい」


 と、最初は何回も読んであげようと思っていました。


 でも、読み聞かせって、読む方も結構疲れる。4回読んで早くも私の限界がおとずれた。


『ユアン、ギブよギブ。今日の読み聞かせはおしまい』


 私は動けないが、ぐったりした。(気分的に)


 それを聞いたユアンが悲しそうな表情をする。


「おしまい?」

 

『ええ、でも私は声をだして読まないけどユアンは読んでも良いわよ』


 絵本だし、さっきから4回も読んだからユアンもストーリーは頭に入っているだろう。


「ユアン、ミケによみきかせする!!」


 そう言うとユアンが絵本を読み始めた。


「アーサーおうのでんせつ

 むかしむかしそれはむかしのことだが、わるいりゅうがひとざとをあらしてひとびとはこまっていた。それをみすごせなかったアーサーおうはりゅうたいじにでかけることになった」


 ……いや、ユアン完璧に読めてない?

 1文字も間違わずに絵本が読めている。

 

『ユアン、何で読めるの?』


「ミケがよんでくれた」


『覚えてるの?』


 ユアンはこくりと頷く。


 ……いや、これは……。


 天才じゃない?

 

 運動神経も良さそうだけど、頭の方もかなり良さそうである。少し教えたらどんどん吸収して言葉も流暢になりそう。


 それなら一々私が教えなくとも、ユアンなら読みながら文字も覚えるのでは?

 

『ユアン、本に書かれた黒いものを文字って言うの。良かったら読みながらそれも覚えてみてくれる?』


 ユアンはこくりと頷いた。


 その後私がストップと言うまで、ユアンはエンドレスでアーサー王の伝説を私に読み聞かせた。


 私は夢の中にアーサー王と竜が出てくるくらい読み聞かせされて、少しアーサー王が食傷気味である。アーサー王の伝説はもう聞きたくない……。 

 

 



 


 

 

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