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最強の力を知らない神獣少年の冒険譚  作者: RJ


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2/5

初めての街

セリナ達はまだ驚いていた。

こんな危険な森の奥。

しかも魔物が出る洞窟。

そこに。

小さな男の子が一人で暮らしていたのだから。

セリナはしゃがみ込んだ。

「君、名前は?」


「レイ」


「私はセリナ・フィアだ」


「レミナ・サリです」


「アリサ・リリーだぞ!」


「……アイリス・ノエル」


レイは順番に顔を見る。


「へぇ」

知らない名前ばかりだった。

「レイ」

セリナが聞く。

「お前、ここで一人なのか?」

「うん」

「家族は?」

レイは首を傾げた。

「かぞく?」

四人は固まる。

「お父さんとかお母さんだ」

セリナが説明する。

レイは少し考えた。

「わかんない」

「え?」

「会ったことない」

静かになる洞窟。

レミナが優しく聞く。

「一人だったんですか?」

「うん」

「寂しくなかった?」

レイは困った顔になる。

「寂しいって分からない」

その言葉に。

四人の胸が締め付けられた。

しばらく話した後。

セリナは決心したように言う。

「レイ」

「なに?」

「街へ来ないか

「まち?」

初めて聞く言葉だった。

「人がたくさんいる場所だ」

「ご飯もいっぱいありますよ」

レミナが微笑む。

「お菓子もあるぞ!」

アリサが付け加える。

「安全」

アイリスが小さく言った。

レイの耳がぴくりと動く。

「行く!」

即答だった。

洞窟を出る。

レイは振り返った。

八年間暮らした場所。

少しだけ寂しい気持ちになった。

でも。

セリナ達が待っている。

「レイー!」

「早く行くぞー!」

「はーい!」

レイは笑顔で走り出した。

数時間後。

森を抜けた。

その瞬間。

レイは固まった。

「……」

目の前に広がる大きな街。

高い壁。

たくさんの家。

行き交う人々。

馬車。

お店。

全部初めて見る。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

大声を上げた。

「すごい!」

「人いっぱい!」

「家いっぱい!」

「なんかいい匂いする!」


走り出そうとする。


セリナが首根っこを掴んだ。

「待て」

「むぅー!」

「絶対迷子になる」

「ならない!」

全員。

(絶対になる)

街へ入る。

レイは興味津々だった。

「あれ何!?」

「パン屋だ」

「あれは!?」

「武器屋」

「あれは!?」

「果物屋」

「へぇぇぇ!」

耳も尻尾も元気に動いている。

しばらく歩くと。

セリナがパン屋で買い物をした。

そして。


レイに焼きたてのパンを渡す。

「はい」


「いいの?」

「もちろんです」

レイは恐る恐る受け取った。

温かい。

ふわふわだ。

「いただきます」


ぱくっ。

もぐ。

もぐもぐ。

レイの動きが止まった。


「レイ?」

アリサが心配そうに聞く。

もぐ。

もぐもぐ。

ぽろっ。

涙が落ちた。

「え?」

レイ自身も驚く。

「どうした!?」

「まずかったか!?」

「ち、違う……」

レイは慌てて首を振る。

「おいしい……」

また涙がこぼれる。

「魚よりおいしい……」

四人は黙って聞いていた。

「こんなの初めて……」

レイはパンを抱きしめる。

「みんなと食べると……もっとおいしい」

その言葉に。

レミナは少し目を潤ませた。

セリナも優しく笑う。

アリサは泣きそうになっている。

アイリスは顔をそらしていた。

その夜。

宿屋。

レイは人生で初めてベッドを見た。

「ふわふわ!」

飛び込む。

ぼふっ!

「すごい!」

何度も飛び跳ねる。

四人は笑っていた。

夜遅く。

それぞれの部屋に戻る。

しかし。

レイは眠れなかった。

静かな部屋。

知らない天井。

知らない場所。

なんだか落ち着かない。

しばらくして。

とことこ。

セリナの部屋へ向かった。

コンコン。

扉が開く。

「どうした?」

そこには少し不安そうなれい。

「……」

「一人で寝るの?」

セリナはすぐに察した。

「怖いか?」

レイは小さく頷く。

「うん」

セリナは笑った。

「今日はここで寝るか」

「ほんと!?」

ぱっと笑顔になる。

その夜。


レイはベッドに入った。

隣にはセリナがいる。

不思議だった。

誰かが近くにいる。

それだけで安心できる。

今日の出来事を思い出す。

初めての街。

初めてのパン。

初めての仲間。

全部初めてだった。

「セリナ」

「ん?」

「みんないなくならない?」

セリナは少し驚いた。

「いなくならない」

「ほんと?」

「ああ」

「約束だ」

レイは黙る。

そして。

ぽろっ。

涙が落ちた。

「レイ?」

「変だな……」

レイは笑おうとする。

でも涙が止まらない。

「今日ずっと楽しかった。」

ぽろぽろと涙が流れる。

「僕……」

小さな手で目をこする。

「一人じゃないんだね」

セリナの胸が締め付けられる。

「ああ」

「もう一人じゃない」

レイは泣きながら笑った。

「えへへ……」

耳がぴくりと動く。

「よかった……」

そのまま安心したように眠りについた。

セリナは小さな寝顔を見ながら呟く。

「これからは私達がいる」

その夜。


レイは生まれて初めて。

本当に安心して眠ることができた。

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