第三話:娘と息子
■2026/06/10■ ステッパー 15分
帰宅し、「ただいまー」と家へ入った瞬間だった。
カコ、カコ。
何やら聞き覚えのある音がする。
ん?
私は座敷を覗いた。
すると娘がいた。
私のステッパーに乗っていた。
運動していた。
所有者より先に活用している。
なぜだ。
「娘ちゃん、おかえり。それやってたの?」
「うん。ママおかえり。やってた」
なるほど。
会話は以上である。
娘は満足そうにステッパーを踏み続けていた。可愛い。
夜。
私はテレビを見ながら十五分ほどステッパーを踏んだ。
習慣化が目的なので、とりあえず踏めば勝ちである。
その間、息子はYouTubeでピタゴラスイッチを延々と見ていた。
ピタゴラ装置は見ていて面白い。
ただし親としては「そろそろ寝ようか」という気持ちも発生する。
私は一度トイレへ向かった。
さて。
そろそろ寝るか。
娘はすでに祖父と就寝済みである。
本日は夫が夜勤の日なので、娘はじいちゃんと寝る日だ。
私はトイレから戻りながら言った。
「息子くん。寝るだよー」
その時だった。
コトン。
コトン。
また聞き覚えのある音がする。
座敷を見る。
息子がいた。
私のステッパーに乗っていた。
YouTubeを見ながら。
ステッパーを踏んでいた。
なぜだ。
娘もそうだが、息子も体重が軽い。
そのためステッパーがなかなか沈まない。
ゆっくり。
とてもゆっくり。
全体重を片足に預けるようにして踏んでいる。
見ていると妙に真剣だった。
たぶん本人はピタゴラ装置の一部になったつもりなのだと思う。
「ねえ、それママのなんだけど」
息子は踏む。
コトン。
「いや、使うのは全然いいんだよ」
コトン。
「運動は大事だからね」
コトン。
「でも君たちが使うと、ママの使用時間が減る気がするんですけど」
コトン。
本人は聞いていない。
聞いていないが運動はしている。
複雑な気持ちである。
しかし考えてみると不思議だ。
このステッパーを買うまで、私は何年も悩んでいた。
必要だと思っていた。
運動不足も自覚していた。
なのに買えなかった。
ところが買った途端に、家族が使い始めた。
所有者本人より積極的である。
なんだろう、この現象。
誰かが始めると周囲も始める。
やる気や行動が伝染する。
心理学だったか。
経営学だったか。
確か何か名前があった気がする。
思い出せない。
ただ一つ確かなのは、
我が家のステッパーは現在、
家族共有財産になりつつあるということだ。
……良いことだな!家族の運動習慣増進になる。
■2026/06/11■ ステッパー:朝昼晩に何度か
市の健康診断に行った。
161㎝、59.3㎏、腹囲81.5㎝。
……おかしい、身長が去年より1㎝増えてる。
成長期はとっくに過ぎているはずだ、計測時間が9時台だったからだろうか。
きっとそうだろう。
体重も60㎏ベースと去年と変わらないのだが、腹囲80㎝から81.5㎝になっていた。
BMIは23で25以下なので指導は入らなかったが体重がほぼ変わらないのに腹囲が増えているのは由々しき事態だ。
あ、ピロリ菌の検査もしてきたので記録に置いておこう。
帰りに豚骨醤油ラーメンを食べた、大変美味であった。
社会的伝染(Social Contagion) … 行動や感情が周囲に伝わる
社会心理学、社会学、ネットワーク科学
モデリング(観察学習) … 誰かがやっているのを見て真似する
心理学(学習心理学)
バンドワゴン効果 … みんながやっているから自分もやる
社会心理学、行動経済学、政治学
ナッジ や 環境デザイン … そこにあるから自然とやる
行動科学、政策科学、人間工学、建築学、保健学。




