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哀しいどこにでもある物語  作者: サン
第七章 動乱時代

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第九十七話 結末


内戦は終わった。


反乱の主謀者と幹部たちはほぼ全員が討ち取られ、生き残りは行方不明となっている。

もし生き残りが結集しても大した戦力ではない。


完全に、終わったのだ。


そして、空席となった騎士団長の座には一番活躍した者がついた。

元の階級がそこまでだったので多少の反発はあったが実力も賢さもあったため、最終的には承認された。




この日は、皇帝から直々にその宣言のようなものが言われる日だ。


初めて見る皇帝は見るからに皇帝といった風情の威厳を感じる姿だった。

ヘクタ帝国は貴族や皇帝の権力がそこまで大きくないというが、そんなことを一切感じさせないものだった。

カルドは、何の興味も示さなかったが。

皇帝の前なので膝をついて視線を下に向ける。


「カルドよ。貴殿を黒曜騎士団、騎士団長に任ずる。」

「かしこまりました。皇帝陛下。」


普通なら歓喜するほどの地位だがカルドの心には、感情には、何一つ影響を与えなかった。

あくまでも儀礼通りの用意されたセリフを言う。


「それにあたって、貴殿には爵位と剣を与えるものとする。一代限り、伯爵の爵位を授ける。」


これもまた、騎士団長になった場合の当然の措置である。

ただし、あくまで貰えるものは名誉であって土地はない。

ほとんど形式だけのものだ。


「剣は宝物庫から後に選ぶがよい。」


帝城の宝物庫には膨大な財宝と強力な武器があるという。

中には自分にあった剣もあるだろうしありがたいことではある。

それを聞いて感情が動くことはなかったが。


「爵位を授けるにあたり、家名もつけることとなるが希望はあるか。無ければこちらが決めることとなる。」


この家名もほとんどただの形式にしかならないものなので、無くても何の問題もなかったりする。

事実、エコムなども家名がなかったし、それ以外にも前例は割とよくある。。


即座に無いと言おうとして、とある言葉を思いついた。

はるか昔に使い、ある日突然使うことを許されなくなった名。


「では、ノイバラ家と、してくださいませんか。」


敬語は大丈夫だったかとふと気になったが騎士にそんなことを求めないだろう。

それに、はるか昔、子供の頃に教わった教育が生きていたのか礼儀作法の確認のためにと式典の前に送られてきた者にも大丈夫だとお墨付きをもらった。


「その名を名乗ることを許そう。以後、カルド・ノイバラと名乗るがよい。……ところで。」


皇帝が話し始めたので思考を切り替えて聞き、急に何の話に変わるかと思えば予想外の言葉が飛んできた。


「先代は最後に何と言い残した。」


先代とはエコム騎士団長のことで間違いないないだろう。

なぜそのようなことを聞くのかが本気で分からなかった。

帝国に、つまりは皇帝自身に反乱を起こした人間の最後の言葉などなぜ聞こうと思ったのだろう。

普通に考えて恨みや無念を最後に言っただろうと思うはずではないのか。


まさか、知っていたのだろうか。

エコムの計画を。

あの騎士団長が計画を漏らすようなヘマをそうそうするわけはない。

もし漏れそうならシンのようになるだけだ。

まさか、自分で調べたのだろうか。

とはいえ皇帝の声色からは何も読み取れない。


カルドは視線を床に向けたまま言った。


「帝国万歳、とだけ。」


貴族の間でざわめきが生じた。


反逆者が?

そんなわけがない。


そんな言葉が聞こえる。


「しかと耳にした。……下がるがよい。」


カルドは言われた通りその場から立ち上がると玉座の間から立ち去った。

扉が閉まる直前に一礼して。


その時、カルドは最後まで一度も視線を床から上げなかった。


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