第九十二話 攻略
カルドが上層部に上申した結果作られたもの、それは破城槌だ。
正確には屋根付きのいわゆる亀甲車とも呼ばれる兵器である。
破城槌自体は普通にあるものだし、屋根付きというのも一般的なものだ。
カルドが提案したものはそれを工夫したものである。
具体的に言うと屋根の上に土嚢を括り付けたのだ。
矢が土嚢を貫通することはあり得ないため、かなり安全性が増す。
さらには土に水を含ませて泥っぽくすれば火にも有効だ。
そして現在実際に使っているわけだが、期待通りの働きをしているようだ。
長弓の矢の貫通力がどれだけ高くてもさすがに土嚢は貫通できない。
当然、頑丈なもので防がれるようならば普通火矢を使うのだが頑丈な板などではなくあくまでも土なのだ。
ほとんど燃えることはない。
水を含ませている状態なら下級の炎魔法すらかなり防ぐ。
中級や上級の炎魔法だと燃やす、というよりも爆破する、なので土嚢付きでも防げないが上級は連射しにくいし、そもそも使える人間が限られる。
下級はある程度の練習量と魔力で誰でも使える魔法なのだが中級や上級はちゃんとした才能がないと一発放つことすら不可能であり、何発も撃つならそれこそ本職の魔法使いが得意な系統の魔法を撃つ場合などでないと厳しいのだ。
ちゃんとした城や要塞ならばバリスタやカタパルトが取り付けられているので土嚢など、容易に貫通、もしくは質量で叩き潰されたりするわけだが帝都を覆う城壁にそんなものはないし、そう簡単に取り付けられるものでもない。
そこで出てくるこの兵器のもう一つのメリットは量産性だ。
木と布と土さえあれば簡単に作れる。
なので大量に作れば少ししかいない敵の魔法使いなど数で押し切ることができるくらい数が多くなる。
ちなみに、破城槌と言っても矢を防ぐのが最優先なので槌を外してただの屋根付きの動く小屋みたいになっているものが混ざっていたりする。
そんなこんなで先頭集団が門まで辿り着いたようだ。
さっそく破城槌を門に叩きつけ始めたようだ。
帝都の城壁に破城槌をどうにか破壊できるような設備は無いため、魔法使いが必死に壊そうとしているが他にも大量に来ており、しかもそちらに梯子を持った人間が一緒に来ているため壁から登られるのを防ぐために手を割かなければならなくなる。
あっという間に帝都の城壁は大量の人に纏われつかれていた。
「……大隊長、よく思いつきますね。あんなもの。」
「だがシンプルな作戦だろ? あの程度、頭を柔らかくすれば誰でも思いつける。」
「それはそうですが……。」
ちなみに現在、カルドは先頭よりもまあまあ後方にいる。
大隊長となるとそこそこ上の階級なので攻城戦の一番槍というほぼほぼ死ぬ配置につくことはできないのだ。
とはいえ一番槍でないなら、一番槍のすぐ後ろくらいなら大丈夫であろう。
少なくとも言い訳にはなる。
「……俺も前に出るぞ。あいつらにこちらの後続へ矢を放つ余裕は無いからな。」
「了解です。」
「とはいえ重装の俺には梯子登るのは手間だなぁ……。」
そう言っていると城門が破られたらしい。
バキッという音と歓声が上がった。
「……登る手間が省けたな。さあて……やりに行くか。」
そしてカルドが城門をくぐった時には既に反乱軍は城壁上から撤退したらしく、帝都内での熾烈な乱戦となっているようだった。




