第九十一話 攻城
数日後、黒曜騎士団第四師団と少し遅れて集結した第二から第五師団と緊急事態なので仕方なく国境線から引き抜いた第六師団、そして蜂起発生時に帝都の外で行動していた白薔薇騎士団の中でも近くにいた第二師団、の計6個師団が帝都周辺には待機していた。
ちなみに白薔薇騎士団は帝都内での活動だけしかしてないわけではないため、蜂起発生時に帝都内にいたのは第一師団だけだった。
第一と第二以外は離れた場所で行動中のため、合流するにしてももう少し先の話である。
そこまで長引かせるつもりは無いのだが。
「なんとも複雑な景色だな。」
「それはそうですね……。」
何せ味方の軍が味方の都市を包囲しているのだから複雑な心境になるというものだ。
「……そういえば大隊長、数日前から魔法の特訓よくしてますよね。」
「ん? ああ……そうだな。」
「何かあったんですか?」
「……勘の良い奴だな……まあ魔法について教えてもらう機会があってな。」
「なるほど……。」
視線を帝都へ戻すとこちらの指揮官――確か第二師団の団長だった人間――が帝都目掛けて風魔法で音量を上げながら最後通牒を言い渡していた。
そう、これが降伏する最後のタイミングだ。
これで降伏しなかった場合、帝都周辺で待機する部隊は攻撃を開始する。
「今すぐ降伏するならば貴官らに寛大な処置を約束す――」
その時、その指揮官のすぐ足元辺り目掛けて矢が飛んできた。
降伏するつもりはないらしい。
「……交渉は決裂した! これをもって我々は反乱軍鎮圧任務にあたる! 攻撃開始!!」
今回の作戦はシンプルである。
北門は川という防衛側有利の環境なので諦め、東西南へと戦力を集中、それぞれに2万ずつ配置し一斉に攻め込む。
ただそれだけだ。
当然、北門側も監視や封鎖を続ける。
ちなみにカルドたちの部隊は第四師団の本隊の近くにあった東門にそのまま配置されている。
当然、戦闘が無さそうな北門に配置されるようなら断固として拒否するつもりだったので不満など無い。
仇を取れるチャンスを見逃すつもりなどあるわけがない。
「うちの部隊は一番槍の援護だ! 行くぞおおぉぉーーー!」
「おおおぉぉぉーーー!!!」
全員、今回ばかりは簡易的でもなんでもいいので盾を持ってきている。
攻城戦なので矢が雨のように降ってくるだろうからという判断だ。
想像通り、一斉に矢が降ってきた。
魔法も混ざっているようだがそこまで多くはない。
魔法は物理よりも射程距離が短いのが常なので練度の高い魔法使いか狙撃用に自ら改造した魔法などでないと届かないのだとか。
「盾構えーーー!!」
ガスガスと盾に刺さる音だけが響き、悲鳴はほとんど聞こえなかった。
距離が離れているので威力が減衰しているらしく、おかげで盾で防げているのだ。
そうこうしているうちにこちら側からも城壁上目掛けて矢を放ち始めた。
普通、射撃戦は高所を取ってるほうが勝つわけだが今回恒常櫓を持ち込んでいるため条件は互角である。
ただし、兵の質で負けているためあまり優勢とは言えない。
やはり歩兵でなんとかやるしかないらしい。
遠距離の今だから矢を防げるが近づいて威力減衰が無くなれば簡易的な盾では簡単に貫通される。
リスクは高いがやるしかない。
「防御魔法使いがいれば楽になるんですがね……。」
「数が少ないから仕方ない。ただの歩兵のためだけに使うほど余ってないんだ。」
「それもそうですね……。」
防御魔法とはその名の通り、攻撃を防ぐことのできる魔法なのだがその強度はとんでもなく高い。
種類にもよるが優秀な防御魔法使いを正面から打ち破ることは人間では不可能であると言われるほどには頑強だ。
魔法も物理も防げるので汎用性も高い。
まあ一部の魔物はそれでも破壊してくるのだが。
「そうだ大隊長。魔法で何とか防げないんですか?」
「そんなこと言われても闇魔法でどうしろってんだか……もうちょっと他に案は無いのか。」
「じゃあそれなら……闇魔法であそこの城壁まで攻撃できたりは……。」
「届くわけないだろ。」
「それもそうですよね……。」
「だが対策はしてきた。」
「……そういえば前から作らせてましたね。あれ。」
「重装の俺はともかく矢は恐ろしいから対策は当然だ。貫通力の高い長弓が相手なら重装でも貫通されかねないし尚更な。」
矢の最も恐ろしいのは運が悪ければ実力者でも一撃で死ぬということだ。
剣がどれだけ上手くても頭に当たれば即死なのはそこらの人間と変わらない。
だからこそ、カルドは上層部に対策方法を上申していた。




