第八話 行軍
カルドたち、新兵が派遣されることが決まりしばらく経ちついに帝都から彼らは出発していた。
「…………。」
「シンどうかしたか?」
帝都の方角を見ながら遠い目をしているシンに話しかける。
すぐにシンが慌てて前に向き直りながら答えた。
「あ、いや、まあ帝都も当分はこれで見れないと思うと何かな……。」
「ああそういう…………まあ確かになんだかんだ1年以上いたわけだしな……。」
そう思うと遠くに見える華やかな帝都が懐かしく感じる。
「まあまた無事に帰ってこよう。」
「そうだな。にしても当分は不味い携帯食料か…………。」
「我慢しとけ。それよりも俺は距離歩くのが面倒だ。さすがに遠すぎるだろ……。」
「少なくとも新兵に徒歩で行かせる距離じゃないよね! 新兵に行かせるって上層部は焦っているのかなぁ。」
「まあ俺たちみたいな雑兵には関係の無い話さ。」
騎士を目指しているとはいえまだ騎士になろうとしているだけの雑兵だ。
上層部から情報を伝えられることは無い。
勝利のためなら鉄砲玉にされるような立場なのだ。
早くそんなもの抜け出したいが戦争でも起きて活躍しないとそうそうなれるものでもない。
「そこの新兵! 話す元気があるなら黙って歩け!」
2人が話していることに気づいた隊長の怒声が飛んできて2人は首を縮めた。
隊長に聞こえないように小声で話す。
「まあ仕方ない。しばらく黙ろう。」
「仕方ない、仕方ない。」
「聞こえてるぞ! 殴られんと分からんか!?」
耳の良くなるスキルでも持っているのか隊長がまた怒鳴る。
「「いえ、遠慮させていただきます!!」」
「じゃあ黙っとけ!!」
ケルグ要塞までの道のりは長かった。
辿り着くまでに徒歩で一ヶ月。
そこまでの間、1年前に配布された装備を着た新兵たちは好奇心や興味を胸に進むのだった――となるわけもなかった。
ずっと畑か森か平原で飽きてきている。
慣れない遠出で疲れてもいた。
なのでどちらかといえばさっさとついてぐっすり休みたいというのが新兵たちの本音だった。
それは2人も例外では無かった。
「……今日も疲れた……。」
夜なのでテントや焚き火を設立して野営しながら休憩をとる新兵たち。
そして2人も同じ焚き火で温まっていた。
「そうだな……にしても寒いなぁ!」
「そろそろ冬が近いからね。」
「そんな中行軍させるなよ……。」
「行軍というか部隊を国内で移動させてるだけなんだけどな。」
「それを言うな……まあだからこそ食料には困らないわけだし。戦時中はきっと食料不足になるだろうしそれは安心だな。」
「確かに無いよりは不味い方がマシか…………。」
ふとカルドが夜空を見上げる。
「この星空で満足するか。」
「綺麗だなぁ……。」
「これで気力を高めよう。明日もあるんだし。」
「そうだな。」
―次の日―
「「…………。」」
2人は、というよりも周りの人間もげんなりしている。
なぜなら雨が降っているからだ。
「冷たい…………。」
「……風邪引くなよ?」
「お前こそな。…………馬鹿は風邪を引かないらしいぞ。」
「は? 喧嘩売ってる?」
「ハハハハハハ。俺は誰のことかは言ってないぞ?」
「あっ! 騙したな!?」
「ハハハハハハ。」
笑っているシンとそれに食いかかるカルドの2人はその後、隊長からのうるさいというありがたいお言葉と拳骨を食らったそうな。




