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悲劇の英雄が死ぬまでのありふれた物語  作者: サン
第二章 新兵時代

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第九話 到着

カルドたちが帝都から出発して一ヶ月、ついにケルグ山脈へと辿り着いていた。


「おお〜〜ここがケルグ山脈。」


皆、感嘆の声を上げる。

絶景を見たことで回復した気力でまた足を動かしていく。


「ここまで来れば要塞はもうすぐだ。付いたら暖かい寝床と美味しい食べ物があるぞ!」


隊長の話を聞き、さらに元気が出てきたのかペースが少し速まる。

真っ白な雪を踏みしめていくと遠くに煙が見えた。

炊事の煙のようだ。

城壁などの石製の建造物は見えないので要塞ではないらしい。


段々と近づいていくと小さな村が見えてきた。

村というよりも集落といったほうがいい程度の大きさだ。


それでも魔物対策に木製だがしっかりとした作りの防護柵や見張り台があるし所属を示すために帝国の国旗ともう一つ見覚えのある旗が掲げられている。


黒色の旗、つまり黒曜騎士団の旗だ。

それは黒曜騎士団の守護する領域ということを意味する。


目を凝らすと集落の中に漆黒の鎧を着た騎士たちが見えた。

立ち姿だけでもかなりのやり手のように見える。


後に知るがこの集落は実はかなり重要な拠点らしい。

この山脈の兵站を担う拠点なのだ。

だからこそわざわざここで新兵は鍛えられたり集められたのだ。

とはいえそんなことを今は知らない。


「なあ、不思議に思わないか?」


カルドがシンへ話しかけた。


「何が?」

「普通、小さな……言い方は悪いけどこんなド田舎の集落に騎士団が少しとはいえ駐屯するものなかな?」

「それのことか……実はここらへんの集落は移民が作ったんじゃなくて騎士団が作ったんだ。そこに移民が来て集落になっている。」

「順番が違うのか。」

「その通り。この集落は人が住む場所である前に前哨基地でもあるのさ。ケルグ山脈は広いから要塞一つだけじゃ全てカバーできないのさ。……俺は物知りだろう! さあ崇めるがいい!」

「ワースゴイスゴイ。シンサマバンザ〜イ。テンサイダ〜。ヒャクネンニイチドノイツザイダ〜。」

「もういい! …………何も言わないほうがまだ印象が良かったよ。」


そして集落に辿り着いた。

久しぶりの集落なので全員ホッとした様子だ。

今日の所は遠征したばかりなので休日だ。


疲れたままだが馬車から物資を降ろしたりその物資を集積所や倉庫へ運び込んだりしていく。

黒色の騎士たちは新しくやってきた新兵たちを遠目に興味深げに見ている。

品定めも理由に入るだろう。


「どう――?」

「今―は微妙――。」

「―しくらいは――の―は?」


小声で話しているため断片的にしか聞こえないがやはり品定めだったらしい。

どうやら弱いだろうと判断したらしい。


カルドとシンが小声で話す。


「あれ……。」

「間違いなく舐められているだろうね。」

「フフフフフフ。一泡吹かせてやろうぜ。」

「そうだね。自分たちだって騎士になるために血の滲むような努力をしてきたのだから。」

「近々、訓練も兼ねて新兵とここの騎士で模擬戦するらしいぜ。戦闘経験豊富な騎士がさすがに負けるほど甘くはないだろうがそれでも良い勝負、くらいにはしてやろう!」

「おおーーー!!」


そしてカルドやシンのような新兵は期待を、ほとんどの新兵は明日からの生活への不安を胸にして眠りにつくのだった。

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