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悲劇の英雄が死ぬまでのありふれた物語  作者: サン
第二章 新兵時代

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第十話 差

冷たい地面に転がり呆然としながらカルドは呟いた。


「嘘だろ……?」


何故こうなったか説明するには少し時を遡らなければならない。


―昨日―


「明日ついにあれをやるらしいぞ!」

「どうしたんだよカルド。……あれをってまさか騎士との模擬戦?」

「その通り!」

「明日か……どうなるかなぁ。」

「まあ俺たち2人なら騎士とも良い勝負、くらいならできるだろ。」

「まあできればいいね。できれば! ……カルドにできるかなぁ〜?」

「はっ?」


その後、2人はしばらく言い争った。


次の日、新兵たちは広場に集められていた。


「今から模擬戦を開始する。新兵どもは俺に襲いかかって俺に一撃でも当てられたら合格としてやる。」


それを聞いて新兵たちはざわめくと、さっそく新兵の一人が出てきた。


「俺が相手だ!」


威勢よく飛び出した他よりも少し大柄の新兵は少しぎこちない動きで訓練用の木の槍を構えた。


「良いだろう……始め!」


その合図とにお互いが動き出した。

そしてその次の瞬間には新兵は頭に木刀を叩き込まれ気絶していた。

始まった瞬間に一瞬で近づいて倒したらしい。

騎士は重い鎧を着ているのにそうとは感じさせない動きだった。


「次は?」


騎士は周りの新兵たちを流し見ながらそう言い放った。

彼は騎士の中でもベテランではあるが隊長というわけでは無いということはあらかじめ聞いていた。

それでも新兵はもちろんそこらの兵士や街の衛兵では束になっても敵わないと思われた。


「…………。」


だが怯えてはいられないと思い、カルドは騎士の前に立ち塞がった。


「ほう……。」


騎士がこちらを興味深げに見る。

彼は内心、今の自分の動きを見て挑む新兵は実力も測れない愚か者くらいのものだと思っていたが思った以上にやり手そうに見えるため興味を持っていた。


「では……始め!」


審判役の騎士の合図よりも少しフライングぎみのスピードでカルドは飛び出した。

カルドは相手の騎士よりもはるか年下で体も成長途中の段階だ。

なので体格差がある。

だからこそ懐に潜り込み自分の間合いに捉えようとしたのだ。


当然、騎士もそれを予想していた。

予想通りに来たカルドに軽く失望を覚え、カルドが踏み込んだ分だけ後ろへ滑るような足さばきで下がり自分の間合いに完璧に捉えると木刀を突き立てようとした。


だがカルドは予想よりもはるかに深く踏み込んでいた。

距離が予想と違うため騎士からは近すぎて攻撃を当てにくい間合いだった。

それに気づいた時にはカルドは気合の声を上げながら木刀を眉間目掛けて振り下ろしていた。


「おらああぁぁーーー!!」


普通ならこれで勝負は終わっていた。

だが騎士は逆にカルドに近づくように一歩踏み出した。


カルドは混乱した。

わざわざ近づく意味が分からない。

どう考えても後ろに下がり自分の間合いに持ち込もうとする場面だ。

そう予想してカルドも一歩踏み出したため2人はほぼ密着した状態になった。


そしてその次の瞬間、カルドの脇腹に強い衝撃が与えられた。

立っていられないほどの痛みと衝撃。

カルドは膝から崩れ落ちるようにして倒れた。

咳き込みながら立っていた時の自分の脇腹あたりにあったと思われる場所を見るとそこには騎士の拳があった。

短剣よりもさらにリーチの短い素手。

それによってゼロ距離でも攻撃できたのだ。


カルドはその後、騎士に木刀でしたたかに打ち付けられたのだった。

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