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悲劇の英雄が死ぬまでのありふれた物語  作者: サン
第二章 新兵時代

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第十一話 魔法

カルドが叩きのめされたその日の夜、2人は寝床で話し合っていた。


「イテテテ…………。」

「大丈夫か?」

「大丈夫……カルドこそ大丈夫なのか?」


シンが肩あたりを抑えながら言う。

彼もあの後、カルドと同じように騎士に倒されていたのだ。


カルドは手を軽く振って無事だということを示す。


「大丈夫大丈夫。……それよりもどう思う?」

「お前と騎士の戦いのこと? まあそもそものレベル差があるからというのはあるけど勝ち方からして……。」

「単純な技術の差と手札の量の差だよな。なんせ力の押し合いとかいうわけでも無かったし。」

「こっちは木刀という手札のみだけどあちらは格闘術という手札もあったわけだ。そして読み合いなどの技術でも負けていた。」

「今回は魔法禁止の模擬戦だったからまだしも魔法有りなら敵の手札に魔法が増える可能性もあると考えたほうがいいか。……魔法、か…………。」


その時、カルドの脳裏には自分の魔法のことを思い浮かべていた。

闇魔法。

彼に適正のある魔法だ。

そしてそれは彼にとって忌々しい魔法とも言えた。


族や魔物のほうが闇魔法の適正があることが多く人間では比較的希少だが使い手が全くいないというわけでは無い。

悪魔召喚などの魔法のような禁止されている魔法などと違って闇魔法は禁止されているわけでも無い。

つまり別に他の魔法と変わらないのだ。

ただ縁起が悪いというだけだ。


そしてそもそもこの魔法は使えない。

魔法というものは感覚が重要な面がある。

なのでその魔法を使える人間に教わらないと魔法を使いこなすことはできない。

そして闇魔法使いは少ないため教わるのは難しい。

結果的に使いたくもなければ使いたくても使えないのだ。


「ん? どうした?」


どうやら顔に出ていたらしい。

シンが心配げに話しかけてきた。


「いや、何でもない。」

「そうか……にしても魔法か……俺は適正なんにも無かったからなぁ。」

「えっ! 何も?」

「そう。しかも弱いとかじゃなくて一切使えない。」


大抵の人間には何かしらの魔法に適正がある。

程度の差こそあれど一つくらいはあるはずだ。


「へぇ〜〜。」

「ちなみにカルドは?」

「……いや俺も大して使えない。」


嘘をつくことの後ろめたさを感じながら話を続ける。

カルドは闇魔法に多大な適正があったという真実を隠して。


「あとはスキルとかか?」

「騎士は色んな相手と戦ってきただろうからスキルもその分多彩だろうな。」


スキルは条件を満たすことで得られるスキルが大半なため色々な戦術、言い換えれば様々な敵との戦いを経験すればその分条件も満たせやすくスキルも多くなる。


ちなみに基礎練習も重要だ。

スキルレベルは条件達成でのレベルアップよりも使い続けることでのレベルアップすることのほうが断然多い。

条件がいまひとつ解明されていないものもあるので努力するしかないのだ。


「モンスターとかが相手だと特にね……。」

「種族によって戦術が違うもんなぁ。それも人間にはできないようなこともできるし。…………スキルばっかりは経験だからな…………。」

「新兵だから戦場なんて見たことも無いし実戦も無いから実戦でミスしてそのまま……という可能性もあるからね。実用的なレベルのスキルを得る前に死ぬ新兵は多いらしいよ。」

「そうはなりたくないな。」

「そういえば魔物退治の名目でいるから魔物との戦闘は嫌でも多少は経験するだろうっていうのは安心だね。人と違って魔物は日常的に戦う身近な相手だから対策も立てられている。人が相手よりはマシでしょ。」

「いつあるのかなぁ。」


―約十時間後―


「今から行われる魔物討伐作戦の説明をする!」


まだ肌寒い朝に隊長の声が響き渡る。

魔物討伐作戦など初耳だ。


「…………。」

「昨日ちょうどあんな話したばっかなんだけどなぁ……。」


カルドは凍ったように動かなくなり、シンは唖然としながら呟いていたのだった。

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