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哀しいどこにでもある物語  作者: サン
第七章 動乱時代

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第七十八話 遺品


次の日、カルドはシンの部屋に訪れていた。


部屋はカルド以外に誰もおらず、静寂に包まれている。

その静寂がシンがいた頃の楽しさと比較されて嫌な気分になる。


ここに訪れた理由はこの部屋の整理のためだ。


いつまでも部屋を死者のために放置しておくわけにはいかない。

これからこの部屋を使う人間のために物をどけて部屋を空けなければならない。


本当は断固として拒否しようとするくらいには嫌だったが部下たちに強引に送り出されてしまった。


心の底からの溢れる様々な感情を押さえつけながら無感動に片付けを始めた。

たまにシンが身につけていた物か、見覚えがあったりもしたが懐旧はもちろん、哀愁も悲嘆も哀痛も感じなかった。

ただただ虚無だった。


そのことを意識すると余計に嫌な気分になった。

自分はそんな冷酷な人間なのだと言われているかのようで。

だがそれでも泣けはしなかった。




しばらく片付けているとふととある箱を見つけた。

とても小さな箱だ。

筆すら入るか怪しいほど小さい。


開けようとしたが開かなかった。

鍵がかかっているのかと思ったが鍵穴などどこにも無かった。

代わりに小さな透明な宝石のようなものがついていた。


そしてその宝石から魔力がほのかに流れている。

魔法をかけられているらしく、その触媒としてこの宝石を使っているのだろうか。

だがどんな魔法がかかっているのかはサッパリだ。


なのでその時は後で調べることにして片付けを進めた。


だが他には投げナイフくらいしか目に留まるものはなかった。




そうなるとやはりあの箱が気になった。


とはいえ魔道具にかかっている魔法を調べるのには多少の技術が必要でそんな技術をカルドは持っていない。

そして伝手もない。


だがふととあることを考えついた。

こういった魔道具は効果によっては戦争で使われる。


それなら当然、判別のできる人間が騎士団にもいるのではないだろうか。

普通に考えれば武器職人だ。

この要塞は人里から離れているし騎士団の大規模な駐屯地だ。

な整備ならともかく万が一武器が壊れたり無くした時は職人が必須なので少しはここにもいるはずだ。


休日がちょうどあったので少々探し回るとすぐに職人たちがいる工房を見つけることができた。


「すまない。ここに魔法について分かるものはいるだろうか。」


当然、怪訝そうな顔をされた。


「な〜に言ってんだ。ここは工房だぞ。魔法なんて分かるわけねぇだろうが! 馬鹿にしてんのか!?」


ずんぐりとした体型で、立派な髭のはえた職人に怒鳴られた。

冷やかしだとでも思われたのだろうか。


「言い方が悪かった。実は魔法のかけられた道具があってそのかけられている魔法を調べているんだ。」

「ん? なんだ魔道具か。それを早く言え。残念ながら俺は剣の専門家でな。魔道具はさっぱり分からんが……あっちにいるあの細っこい奴なら詳しいぞ。」


無愛想にそう言われ、その鍛冶師にはとても見えない、というか事実魔道具に関する仕事ならどちらかというと細工師であるはずの職人のもとに向かった。


「魔道具について詳しいと聞いたのだが時間をもらってもいいだろうか。」

「別に構いませんが……。」

「実はこれにかかっている魔法が何かを調べてほしいんだ。……ああ、別に仕事じゃなくて個人的なことだから空いた時間でいいしお金も払おう。」


そう言いながら箱を渡した。


「これですか? ……そんなに複雑な魔法ではないようですからただでいいですよ。というか見るだけでこれくらいの魔法なら大体分かります。」

「本当か?」


まさかすぐに判明するとは思っていなかったので嬉しい誤算だ。


「もちろん。これは……特定の魔力を込めると鍵が開くようになっていますね。」

「特定の魔力?」


まさか誰かの魔力にしか反応しないとかだろうか。

もしそうなら当然持ち主であるシンの魔力に設定しているはずなので開けられないが。

だがふと考えるとシンは魔法がまったく使えないはずだ。


「普通なら誰かの魔力とかなんですが……魔法ですね。」

「……つまり?」

「炎魔法とか水魔法とか……そういった魔法のどれかですね。」

「その魔法っていうのは……さすがに分からないか。」

「それが分かるならこの魔法は使われてませんよ。」

「それもそうだな……これは礼だ。ただはさすがにな。」

「えっあっ、はい。……ええっ!! こんなにたくさん!?」


そう言うと袋を渡し、すぐに自室に戻っていった。

後ろから悲鳴が上がったが気のせいだろう。


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