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哀しいどこにでもある物語  作者: サン
第六章 転換時代

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第七十三話 雪渓


そして出発から1週間後。

途中からは戦闘を多少避けながら進み始めたのだがそれでも1週間かかってついに目標の場所へと辿り着いていた。


だが問題が発生していた。


リチーチ草があるという場所はどうやら谷だったらしいのだがとても降りられそうになかったのだ。


「どうするかな……。」


ロープはあるのだがそれを結びつけて固定できるような木や石が近くに無い。

さらには凍っているのか掴めそうな場所はなく、しかも異常なまでに頑丈だ。

溶かそうにもそんな大量の燃料を持ってきているわけがない。

それに、なによりもそもそもの話とんでもなく高い。

底が暗くてよく見えないほどだ。


どこか降りられそうな場所を探すしかないだろう。


それからしばらく歩くと崖が低くなっている場所を見つけた。

岩肌のおかげで比較的簡単に下りられそうだ。

何せ雪が1年中振っているようなケルグ山脈なので当然アイスピッケルは持ってきている。


それを岩肌に突き立てて体を支えながら下りていく。

ここは他よりも比較的軟らかく、アイスピッケルも何とか刺すことができるがそれでもかなり苦労しつつ下りていった。


少しすれば下りることができたがこの場所を探す際に移動してきているため元の場所へ戻っていった。

下り道で、しかももう少しで目的が達成できるということもあって足取りは軽かった。


とは言っても最近、休憩も最小限にずっと歩き続けたことが祟ったか咳込むことが多くなった。

体調管理を怠ったつもりは全然ないのだが。


一応、軽い病気の症状を軽減する便利な薬があるので戦闘に支障が出ることはない。

咳き込む以外に症状が出てるわけではないというのもある。


しばらくして、崖に続きまたもや障害が立ちはだかった。

それも圧倒的な。


「あれは……地龍か……?」


地龍とはこの世界の魔物の中でも最上位格の存在だ。

そもそも、龍というだけでとてつもない強さの魔物でもある。

勘違いしてはいけないことは竜と龍ではまったくの別物だということだ。

竜は稀とはいえ人に懐くし討伐も比較的楽だ。

共和国には知っての通り竜に跨って戦う部隊もある。


だが龍は違う。

人間とは格からして違う圧倒的強者だ。

それこそ龍の中でも弱い部類の種ですら簡単に街を滅ぼす。

上位の龍ともなれば国すら滅ぼしかねない存在である。

随分前の話だが、一度だけ見たことのある星白銀龍はその一つだ。


そして目の前にいるずんぐりとした体型で真っ黒な龍は黒瑪瑙龍という地龍の一種だ。

強さは龍の中で言えば中の下。

ブレスも吐けなければ翼が無いため飛ぶことすらできない。

だがそれを補って余りあるほどの特性がある。


異様に頑丈なのだ。

滅多に見つからない龍なので詳しい調査ができておらず、ステータスもよく分かっていないが間違いなく防御力や生命力が尋常じゃないほど高いと思われる。


そして奇襲や罠も効かない。

なぜならば察知系スキルを大量に持っているからだ。

これもあくまでも予想だが討伐隊の情報によると察知系スキルを全て持っているのではと言われている。


罠、殺気、気配、視線、匂い、音、光、毒、これら全てに敏感に反応していたのだそうだ。

これは龍種の中でも最強クラスの探知能力である。


当初は鈍感な龍だと思われおり、そんなものは持っていないと言われていたのだが、存在に気づいてはいたが圧倒的な防御力の前には一切脅威でないから無視していただけという説が今では有力だ。


そのように圧倒的な能力の数々を持っている黒瑪瑙龍だが幸いなことにこの龍は足が遅い。

さらには龍にしては狭い縄張りしか持っておらずそこから出ることは基本的にない。


過去にこの龍を討伐した事例が無いわけではない。

だが二度だけあった討伐はその両方で膨大な資金、時間、そして犠牲の上で成功した。

しかもその前に幾度も作戦は失敗している。


片方は偶然、縄張りから出てきた黒瑪瑙龍を砦で迎撃しようとしてその砦と近くの村が消滅した。


もう片方は誰かが巣で平和に暮らしていた龍に何かをしてしまったらしく、突如として暴走。

国によって結成された討伐隊数百名が討伐を試み、半数以上が死亡した。

その全てが精鋭で、国中でも上位に入る実力者だった。


ひとまず言えることは一人で普通に戦うような相手ではないということだ。


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