↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哀しいどこにでもある物語  作者: サン
第六章 転換時代

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/117

第七十一話 救命


騎士団長の執務室にて、二人の人間が話していた。


「これは?」


当然、片方は騎士団長のエコムだ。


「見ての通り、休暇届けです。」


そしてもう片方はカルドだった。


「ふぅ〜む。それはいいのだよ? 君は真面目に仕事をしているし、最近休暇をとったばかりというわけでもない。それどころか少しくらい休むべきだとこちらが思うくらいだ。……が、それなら何故探索用の装備を?」

「…………。」

「何故か物資管理所から防寒服や長期の探索に耐えられるだけの食料などを持ち出しているというのは聞いている。……君の友のためかな?」


どうやって知ったのかは分からないがそんなことまで知っているらしい。


それから、相変わらず無言を貫くカルドとの視線での牽制があったがまったく折れる気配の無いカルドにやるのは時間の無駄だと判断したらしい。


「休暇は許可する。却下する理由もない。」


エコムが言いたいのは休暇をわざわざ取ったのに危険地帯に行くのはどうなのかということなのだろう。

休暇は本来、危険な戦場で傷ついたり削られた心を癒すためにあるのだ。

なのに休暇中にいつもより危険な場所に行かれたのでは困る。


「…………。」

「まあ、止めても勝手に行きそうだ。だが……友のために死ぬ気なら止めなければならない。」

「まさか。俺はシンを助けなければなりません。」

「自分の命と引き換えにか?」


カルドがまた黙り込んだのを見てエコムはため息をついた。


「はあ……私はね、将来有望な優秀な部下をなくしたくはないのだ。」

「それでも。」


言葉を遮るようにして話し始める。

目上の人の言葉を遮るのは無礼なのだがエコムは咎めなかった。


「俺は親友を助けたい。……ではこれで。」


そう言うとカルドはさっさと部屋を出ていった。

その時、エコムの目の奥に秘められた感情は焦っていたカルドには気づきようがなかった。

もし冷静で、尚且つ気をつけて観察していても元は大商人だったエコムの心の中を読むことなどできなかっただろう。




2日後、準備をすぐさま済ませてカルドはケルグ山脈へと単独で出発していた。

本当なら2日前に出発したかったのだがさすがに自分がいない間の仕事を部下に引き継がせる作業がある。

病床に伏せっているシンの仕事も引き継がせているので部下はしばらくの間、かなり忙しいだろう。


リチーチ草が発見された場所までの地図はある。

なのでそこまで行くだけだ。

だがその道程は過酷だ。

言ってしまえば今までやっていたのは人間の領域付近で雑魚魔物を倒していただけだ。

今から行くのは人類の手が入っていない、ではなく人類では手を付けることすらできない場所なのだ。

気候はより過酷に、魔物はより強力に。


リチーチ草を発見したという人間は大人数でケルグ山脈の調査をしている時に大勢の犠牲を出しながら進んで偶然見つけただけなのだという。

しかもその情報も数十年前の話だというのでそれ以降は一度もリチーチ草を発見した者はいない。


だがそれでもカルドは親友を助けるために過酷なケルグ山脈を進み続けるのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。