第六十三話 実習 〜鳥狩〜
倒したイノシシの魔物の死体を処理して、一行はさらに捜索を続けた。
目標の鹿の魔物の痕跡自体は見つかっているので近隣に出ることは判明しているのだが中々見つけられていない。
「空にいるぞ!」
「魔物だ!」
そして他の魔物にはたびたび遭遇している。
現在もまた、鳥の魔物に襲われていた。
ワイバーンのように大きな魔物ならともかく、鷹くらいの大きさしかない鳥の魔物では矢も当たりっこない。
かなりの低空飛行をしているので当たりそうではあるのだがスイスイと避け続けている。
幸いな事にこの鳥の魔物は魔法などの遠距離攻撃ができないらしいので攻撃するために降りてきたところを訓練兵たちは倒そうとしているらしい。
こういっては何だが完全に翻弄されていて遊ばれているみたいだ。
鳥の魔物の鳴き声がケラケラと笑っているみたいな声なので余計訓練兵たちは苛立っている。
冷静さを欠き始めているので実習の後から訓練の内容を変えることに決めた。
「うっとおしい!」
「さっさと降りてこ〜い!」
「降りてきたら袋叩きにしてやらぁ!!」
「ロープ持ってこい!」
一向に拉致があかないため訓練兵たちも段々と工夫をし始めた。
ロープと石を使ってボーラという小型の生き物を捕獲するための道具を使うことで遠距離攻撃ができなかった者も撃ち落とそうとし始めた。
とはいえやはり中々当たるものでもない。
遠距離攻撃ができない訓練兵は長槍や剣で針山のごとく待ち構えているので鳥も攻撃できないようだが執念だけはあるらしくいつまでたっても逃げない。
そして放置しておくと攻撃してきたり嫌がらせしてきたり、悪戯してきたりするのだ。
厄介なことこの上ない。
カルドなら点の攻撃しかできない矢と違って面で制圧できる魔法を撃てばすむ話なのだが教官は基本的に何もせず、緊急事態以外は口を出さないという話なので傍らで彼らを見守っていた。
少し見渡すとカーネを見つけた。
黒髪はやはり目立つなと考えながら見るとさすがのカーネでも飛んでいる相手には得意の剣も届かず、どうにもならないようだ。
「う〜ん…………。」
すると突然、ハッとしたと思うとすぐ横にいた訓練兵の一人に何かを話始めた。
その訓練兵が物凄い怪訝な表情を浮かべていることからまともなことではないらしい。
するとその訓練兵が盾を持ってきた。
するとそれを真上に構えた。
恐らくカルドも怪訝そうな表情になってるだろう。
何をするつまりだろうか。
するとカーネが思いっきり助走をつけ、ジャンプした。
ここまでで何度も魔物を倒したためにレベルがそこそこ上がりそれに伴って身体能力、ひいてはジャンプ力も上がっているとはいえさすがに届かない、と思ったら盾を踏み台にしてさらに高く跳んだ。
鳥も慌てた様子を一瞬だけ見せたがすぐに落ち着いた。
なぜならばカーネがギリギリで届かなかったからだ。
あとほんの少しなのだが届いていない。
槍や両手剣ならば届きそうだがカーネは片手剣使いだ。
リーチが足りない。
そこでとあることに気がづいた。
カーネが片手剣を持っていない。
だが何か小さなものを握っている。
すると物を握っている手を振りかぶって投擲した。
すると何故か鳥が墜落していった。
対照的にカーネは華麗に着地した。
鳥は下で待っていた訓練兵たちに袋叩きにされたようで歓声が上がった。
そしてすぐに疲れが出てきたのかバタバタと倒れていった。
カーネも仰向けになって地面に転がっている。
「……何を投げたんだ?」
カルドはカーネに近づくと話しかけた。
何を投げたのかがサッパリ分からないのだ。
「え〜と……これです。」
そう言うと握っていた物を見せてきた。
「投げナイフ……いや違うな。普通の雑用に使うナイフか。」
「はい。教官の友達だっていう人に教わりました。」
「シンか…………。」
脳裏にニヤニヤと笑っている表情が思い浮かんだ。
ついでに、後で何かを言われるだろうということも想像できた。
「……チッ。」
カーネには聞こえないくらいの音量で舌打ちをしたが教えてやったと言うなら感謝するべきだろう。
非常に癪だったが仕方ない。
「というかいつ教わったんだ?」
「教官が書類とかの仕事をしているときです。今回は投げナイフが無いので普通のナイフで代用してみました。」
「跳んだのは投げナイフは射程が短いからか。なるほどな……。」
自分が知らない間にもかなり鍛えていたのだということに気付かされた日なのだった。




