第六十二話 実習 〜猪狩〜
出発してから数日、一行はひたすら進み続けていた。
真っ白な山脈を。
何度でもいう真っ白な山脈を。
確かに美しい。
絶景だろう。
だが数日の間、ずっと同じである。
そう、一行は飽き飽きしていた。
「「「………………。」」」
訓練兵たちをチラリと見れば相当飽きているのが分かる様子だ。
そしてチラリと視線を変えてみる。
「綺麗……!」
目をキラキラさせてワクワクとした様子でニコニコしているのはカーネだ。
地味な行軍に慣れているカルドですら気分が沈んでいるのに彼女は常に目を輝かせている。
あれもまた、彼女の才能の1つなのだろう。
戦争において、何かしらの楽しみを持つというのは重要なことだ。
ちなみに、カルドとシンは話すことと料理が楽しみである。
にしても、景色だけであそこまで楽しめるのなら人生楽しいだろう。
何せ視線をあちこちに向けるだけですむ。
何て簡単なのか。
お金だってかからない。
賭博などをしている人間には見習ってほしいものである。
まあ、中々真似できるものでは無いのだが。
それはそれとして地図を確認するとそろそろ例の魔物の目撃地が近くなってきていた。
ちなみに目撃したのはたまに山脈を探索している灰鼠騎士団と、それと同行している研究者たちだ。
「そろそろ群れが目撃された場所だ。奇襲には気をつけろよ。」
全員に聞こえるように少し声を張り上げながら言う。
ケルグ山脈は森などがほとんど無い。
だがそれでも奇襲の危険がある原因があるのだ。
「「「はい!」」」
訓練兵たちの頼もしい返事を聞きながらさらに歩を進めていく。
予定ではそろそろ魔物と遭遇しておきたいところだ。
食料などの物資だとかの問題ではない。
それは予備もあるし、最悪目標の魔物と中々遭遇できないなんてことは普通だ。
なので遭遇しておきたいというのは普通の魔物のことだ。
今のところ、運の良いことに魔物と遭遇していないので若干、遠足のような雰囲気が流れているのでそれを何とか払拭したいのだ。
そんなことを昨日からずっと思っていたのだが、そこからしばらく歩いた後、ようやく魔物が現れた。
隊列から離れた場所でこちらの様子を伺っている魔物がいる。
雪に紛れるための真っ白な毛皮のせいで詳しい情報は分からないが数匹の群れのようだ。
「魔物だ!」
遅れて訓練兵たちも魔物の存在に気づいて声を上げた。
一瞬遅れたとはいえこの距離で隠れ潜む魔物に気づけたのはちゃんと警戒している証拠だろう。
慌てずに隊列を組んでいく。
その間、周囲の警戒も忘れていないようだ。
だがさすがに隊列を組むのは少し遅く、魔物がこちらに気づかれたことを察してか隠密行動をやめて走り出した。
イノシシのような見た目の魔物だ。
イノシシにしては隠密行動もしていたし慎重だったとは思うが所詮はイノシシ。
攻撃は単調で、何も考えずに突っ込んでくるだけの攻撃だ。
「槍隊、構えーーー!」
そして騎馬隊、もとい高速で迫る敵には長槍で迎え討つと相場は決まっている。
隊列を組む際に長槍や大盾に持ち替えておいた者から槍と盾の壁を作っていく。
それでもイノシシたちに止まるという選択肢はない。
そのまま、あっさりとイノシシたちは盾に阻まれ、槍で突かれ、剣で袋叩きにされて全滅したのだった。




